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建築基準法12条点検(定期報告)とは?対象建築物・報告時期・資格者・費用・消防の点検との違い【2026年版・条文つき】

2026 9/23
建築基準法12条点検
2026年9月23日2026年9月26日
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建築基準法12条点検(定期報告)とは?対象建築物・報告時期・資格者・費用・消防の点検との違い【2026年版・条文つき】

この記事の情報

法令は e-Gov の現行版(建築基準法は2026年5月27日施行、建築基準法施行令は2025年12月1日施行、建築基準法施行規則は2026年4月1日施行の版)で確認し、国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」、東京都都市整備局「定期調査・検査報告制度」の各ページと対象建築物・報告時期の一覧(2025年7月2日作成のPDF)、報告の受付機関が公表している事務手数料とあわせて2026年9月23日に確認した内容です。対象になる建物と報告の時期は特定行政庁ごとに違います。この記事は東京都を例として書いています。最終的な確認は、建物の所在地を所管する特定行政庁にお願いします。

建物を持っていると、ある日「定期報告のご案内」という封筒が届きます。中を見ると調査と報告の義務が書かれていて、心当たりがない。消防の点検なら毎年やっているはずなのに、それとは違うらしい。業者に頼むといくらかかるのか、そもそも自分の建物が対象なのかも分からない。ここでつまずく所有者の方はとても多いです。

この制度は、現場では12条点検と呼ばれています。ただし建築基準法の条文に「12条点検」という言葉は出てきません。条文が定めているのは、建築物の調査と建築設備等の検査を定期に資格者にさせて、その結果を特定行政庁に報告する義務です(建築基準法12条 e-Gov)。行政側の呼び方は定期報告制度です。

この記事では、建築基準法12条と施行令16条・施行規則5条6条、国土交通省の告示、東京都都市整備局のページと一覧の原文を確かめたうえで、①自分の建物は対象か ②何を誰がいつまでにやるのか ③費用はどれくらいか ④消防の点検とどう違うのか、の順に整理しました。消防法の点検の中身は別の記事にまとめてあるので、必要なところで内部リンクを置いています。

建築基準法12条点検の要点。条文に12条点検という語は無く正式には定期報告。報告先は特定行政庁。義務を負うのは所有者または管理者。報告しないと100万円以下の罰金
建築基準法12条点検(定期報告制度)の要点
目次
点検の義務と費用の相場をLINEで受け取る。受け取れる情報を見る

建築基準法12条点検(定期報告制度)とは

条文に「12条点検」という言葉は無い

建築基準法12条1項の原文は、こうなっています。「第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの…及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物…で特定行政庁が指定するもの…の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者…にその状況の調査…をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。」(建築基準法 e-Gov)

長い一文ですが、分解すると要素は4つだけです。対象になる建物があり、義務を負うのは所有者か管理者で、資格を持った人に調べさせて、結果を特定行政庁に報告する。条文が使っているのは「調査」(1項)と「検査」(3項)と「点検」(2項と4項)で、「12条点検」は現場で生まれた呼び名です。検索するときは両方の言い方を知っておくと資料が見つけやすくなります。

12条点検は俗称。建築基準法12条が定めるのは調査と検査と報告で、行政の呼び方は定期報告制度
「12条点検」は俗称。条文の言葉は調査・検査・報告

国土交通省は、この制度ができた背景をこう説明しています。「近年、福山市のホテル火災、長崎市のグループホーム火災、福岡市の診療所火災など、多数の死者が出る火災事故が続いています。これらの事故において被害が拡大した原因の一つとして、建築物が適法な状態で管理されていなかったことが掲げられていますが、こうした事態を踏まえ、建築基準法を改正し…平成28年6月1日から、新たな定期報告制度が施行されております。」(国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」)

建てるときには建築確認と完了検査があります。ところが建物は建てた後のほうが長く使われます。使っているうちに防火扉の前に物が積まれ、避難通路に棚が置かれ、外壁のタイルが浮いてくる。建てた時点の適法な状態が、年月とともに崩れていきます。定期報告は、その崩れを定期的に見つけて直すための制度です。

建てるときは建築確認と完了検査。使い始めた後の適法な状態を確かめるのが定期報告
建てた後の適法な状態を確かめるための制度

報告は4種類ある

東京都は、定期報告を次の4種類に整理しています(東京都都市整備局「1.定期調査・検査報告制度とは?」)。呼び方も対象も報告の周期も違うので、まずここを分けて考えます。

種類何を見るか(東京都の説明)東京都での周期根拠
①特定建築物の定期調査敷地、一般構造、構造強度及び防火・避難関係用途・規模によって毎年または3年ごと法12条1項
②防火設備の定期検査随時閉鎖または作動をできる防火設備(防火ダンパーを除く)毎年法12条3項
③建築設備の定期検査機械換気設備、排煙設備、非常用の照明装置及び給排水設備毎年法12条3項
④昇降機等の定期検査エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等昇降機は毎年、遊戯施設等は半年ごと法12条3項

よくある勘違いが「うちはエレベーターの点検を毎月やっているから12条点検は済んでいる」というものです。保守点検と、法律に基づく定期検査報告は別です。保守点検は契約に基づく維持管理で、定期検査報告は資格者が決められた項目を検査して特定行政庁に報告する手続きです。保守業者が報告まで代行している場合もありますが、義務を負っているのはあくまで所有者・管理者です。

定期報告の4種類。特定建築物の定期調査、防火設備の定期検査、建築設備の定期検査、昇降機等の定期検査
定期報告は4種類。対象も周期も別々に決まる(東京都都市整備局の整理)

義務を負うのは所有者。所有者と管理者が違えば管理者

条文は「所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者)」と書いています。建物を貸していても、テナントに管理を任せていても、義務の宛先は原則として所有者です。

では管理者とは誰か。東京都のQ&Aはこう答えています。「法的に明確な規定はありません。しかしながら、『当該建築物の維持管理、長期修繕計画等に対して、金銭面を含め、主体的に関与しているもの』が、法でいう「管理者」であると考えています。」さらに「単に、清掃、設備の日常的なメンテナンス等のみの委託を受けている管理会社等は定期報告制度上の「管理者」には該当しません。」とも書かれています(東京都 定期報告に関するQ&A Q2-3)。

区分所有のマンションについては、同じQ&Aが「共同住宅等が区分所有されている場合、原則として区分所有者からなる管理組合が管理者(代表者としては、同組合の理事長)となります。」と説明しています。大型の建物で管理の権限が数社に分かれているときは、「全体を統括する管理者として、どの方が最も適切なのか、内部で協議の上、報告する管理者を決めてください。」とされています。

義務を負うのは所有者。所有者と管理者が異なる場合は管理者。清掃や日常メンテナンスだけを請け負う管理会社は管理者に当たらない。区分所有は管理組合
報告義務を負うのは誰か(建築基準法12条1項・東京都Q2-3)

背景にあるのは維持保全の義務(法8条)

定期報告の手前に、もっと広い義務があります。建築基準法8条1項は「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」と定めています。さらに2項で、安全上・防火上・衛生上特に重要な特殊建築物などの所有者・管理者には「維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない」としています(建築基準法8条 e-Gov)。

つまり法律の建て付けは、日常的に適法な状態を保つ義務が土台にあり、その状態を定期的に確かめて行政に見せる手続きが12条の報告、という順番です。報告のときだけ慌てて直すのではなく、日々の維持管理の記録を残しておくほうが、結果として費用も手間も小さくなります。

法8条の維持保全が土台にあり、その状態を定期的に確かめて行政に見せる手続きが法12条の報告
維持保全(法8条)と定期報告(法12条)の関係
建物の所有者と調査者が、エントランスで報告書の内容を確認している様子
調査は資格を持った人が行い、結果を所有者・管理者が特定行政庁へ報告する(イメージ)

消防設備点検・防火対象物点検との違い

建物の法定点検で最も混乱が起きるのが、建築基準法の定期報告と消防法の点検の区別です。東京都のページは「なお、建築基準法に基づく「定期調査・検査報告制度」は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度ですのでご留意ください。」とはっきり書いています(東京都都市整備局)。Q&Aでも「異なる制度です。」と答えています。

建築基準法12条の定期報告消防設備点検防火対象物点検
根拠建築基準法12条1項・3項消防法17条の3の3消防法8条の2の2
報告先特定行政庁(区市町村長または都道府県知事)消防長または消防署長消防長または消防署長
対象の決まり方用途と規模。政令で一律の分と特定行政庁が指定する分消防用設備等が設置されている防火対象物収容人員などの要件を満たす特定防火対象物
資格一級建築士・二級建築士・建築物調査員・建築設備等検査員消防設備士・消防設備点検資格者防火対象物点検資格者
見るもの敷地、構造、防火避難、防火設備、換気排煙など、昇降機消火器、自動火災報知設備、誘導灯などの消防用設備等防火管理の体制と運用
罰則100万円以下の罰金(法101条1項2号)消防法の罰則消防法の罰則

対象の重なり方も違います。建築基準法の定期報告は、用途と規模で切られた「特定建築物」が中心です。消防法の点検は、消防用設備等が設置されていれば規模が小さくても対象になります。そのため、消防設備点検は必要だが定期報告は不要という建物も、その逆もあります。それぞれの中身は次の記事にまとめてあります。

  • 消防設備点検の義務・対象・頻度・報告・費用 → 「消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)」
  • 防火対象物点検の対象判定・特例認定・罰則 → 「防火対象物点検とは(消防設備点検との違い)」
  • マンションで部屋に入られる理由と費用の負担 → 「マンションの消防点検(部屋に入る理由・費用の負担)」

もうひとつ、名前が同じで中身が違う制度があります。ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)の「特定建築物」です。東京都のQ&Aは「異なります。」と答えたうえで、「ビル管理法に限らず、建築基準法以外の法律においても特定建築物という言葉が使用されており、それぞれ定義が異なっているので注意してください。」と注意を促しています(東京都 Q1-4)。業者から届いた見積書に「特定建築物」とあったら、どの法律の話かを先に確かめると行き違いが減ります。

特定建築物という言葉は法律ごとに定義が違う。建築基準法の定期報告とビル管理法の指定建築物は別
「特定建築物」は法律ごとに定義が違う(東京都Q1-4)
建築基準法12条の定期報告と消防法の消防設備点検の違い。報告先は特定行政庁と消防署。資格も見るものも別
建築基準法の定期報告と消防法の点検は別の制度

自分の建物は対象か(東京都を例に)

対象は「政令で一律の分」と「特定行政庁が指定する分」の二段構え

ここが12条点検のいちばん分かりにくいところです。対象建築物は、全国共通で決まっている部分と、地域ごとに決まっている部分に分かれています。

法12条1項は、対象を「政令で定めるもの」と「当該政令で定めるもの以外の特定建築物で特定行政庁が指定するもの」の2つに分けて書いています。国土交通省も「[1]不特定多数の者が利用する建築物及びこれらの建築物に設けられた防火設備 [2]高齢者等の自力避難困難者が就寝用途で利用する施設及びこれらの施設に設けられた防火設備 [3]エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機 は国が政令で一律に報告の対象としています。」「このほか、地域の実情に応じ、特定行政庁(建築主事を置く地方公共団体)が報告の対象を定めることができます。」と説明しています(国土交通省)。

だから「事務所ビルは12条点検の対象ですか」という質問に、全国共通の答えはありません。所在地の特定行政庁が指定していれば対象、していなければ対象外です。ネットで見つけた対象一覧が自分の建物に当てはまるとは限らない理由がここにあります。

対象建築物は二段構え。政令で全国一律に決まる分と、特定行政庁が地域ごとに指定する分がある
対象は政令の分と特定行政庁が指定する分の二段構え(法12条1項)

政令で一律に決まる分(施行令16条1項)

建築基準法施行令16条1項は、法12条1項の「政令で定める建築物」を4つ挙げています(建築基準法施行令 e-Gov)。前提として、対象になるのは法6条1項1号の建築物、つまり「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」です。

前提は法6条1項1号。別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの
政令で一律に対象になる前提は法6条1項1号の建築物
号施行令16条1項の内容(要約)別表第一(い)欄の用途
1号地階または3階以上の階を(1)項の用途に供する建築物、およびその用途の客席部分の床面積の合計が100㎡以上の建築物劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場など
2号劇場、映画館または演芸場の用途に供する建築物で、主階が1階にないもの同上
3号(2)項または(4)項の用途に供する建築物病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎/百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場
4号3階以上の階を(3)項の用途に供する建築物、およびその用途部分の床面積の合計が2,000㎡以上の建築物学校、体育館など

この表を眺めると、見えてくることがあります。別表第一(い)欄には(5)項の倉庫と(6)項の自動車車庫もありますが、施行令16条1項のどの号にも出てきません。つまり倉庫と自動車車庫は、政令で一律に定期調査の対象になる用途には入っていないということです。対象になるとすれば、特定行政庁の指定によります。

なお1項の柱書には、除外の規定も置かれています。「避難階以外の階を法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供しないことその他の理由により通常の火災時において避難上著しい支障が生ずるおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。」という条件です。

施行令16条1項が挙げる4つの号。劇場等の地階3階以上、主階が1階にない劇場、病院ホテル共同住宅と百貨店遊技場、学校体育館の3階以上
政令で一律に対象になる建築物(建築基準法施行令16条1項)
別表第一(い)欄の倉庫と自動車車庫は、施行令16条1項のどの号にも出てこない
倉庫と自動車車庫は政令で一律に対象になる用途には入っていない

特定行政庁が指定できる母集団(施行令14条の2・16条2項)

施行令16条2項は「法第十二条第一項の政令で定める建築物は、第十四条の二に規定する建築物とする。」と定めています。その14条の2はこう書かれています。「一 法別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物のうち階数が三以上でその用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超え二百平方メートル以下のもの 二 事務所その他これに類する用途に供する建築物(法第六条第一項第一号に掲げる建築物を除く。)のうち階数が三以上で延べ面積が二百平方メートルを超えるもの」(建築基準法施行令14条の2 e-Gov)。

2号に事務所が出てくるところがポイントです。事務所ビルは政令で一律に対象になる用途ではなく、特定行政庁が指定して初めて対象になります。東京都は指定しています。同じ規模の事務所ビルでも、所在地によって対象かどうかが変わるのはこのためです。

事務所は施行令14条の2第2号。階数3以上で延べ面積200㎡超の事務所は、特定行政庁が指定したときに対象になる
事務所は特定行政庁の指定で対象になる(施行令14条の2第2号)

東京都で毎年報告が必要になる用途(用途コード11から15)

東京都は、対象と報告時期を用途コードで整理した一覧を公表しています(東京都 定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧 PDF)。まず毎年報告が必要な5つです。報告できる期間は11月1日から翌年の1月31日までです。

用途規模または階(いずれかに該当)用途コード
劇場、映画館、演芸場地階/3階以上の階/その用途部分200㎡超/主階が1階にないもので100㎡超11
観覧場(屋外観覧席のものを除く)、公会堂、集会場地階/3階以上の階/その用途部分200㎡超(平家建ての集会場で客席及び集会室の床面積の合計が400㎡未満のものを除く)12
旅館、ホテル3階以上の階、かつ その用途部分2,000㎡超13
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗3階以上の階、かつ その用途部分3,000㎡超14
地下街その用途部分1,500㎡超15

表の「3階以上の階」には注釈が付いています。一覧の注意1は「F≧3階、F≧5階、地階とは、それぞれ3階以上の階、5階以上の階、地階で、その用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超えるものをいいます。ただし、A≦200㎡の場合、階数が3以上のものに限ります。」としています。単に3階建てというだけでなく、その階にある当該用途の床面積が効いてきます。

3階以上の階とは、その階にある当該用途の床面積の合計が100㎡を超える場合をいう。ただし用途部分が200㎡以下なら階数3以上のものに限る
「3階以上の階」の数え方(東京都の一覧 注意1)
東京都で毎年報告が必要な用途コード11から15。劇場映画館演芸場、観覧場公会堂集会場、旅館ホテル、百貨店店舗、地下街
東京都で毎年報告が必要な特定建築物(用途コード11から15)

東京都で3年ごとの報告になる用途(用途コード21から41)

次が3年ごとの報告です。報告できる期間は5月1日から10月31日までで、用途コードのまとまりごとに当たり年が決まっています。

用途規模または階(いずれかに該当)用途コード報告年度
児童福祉施設等(高齢者・障害者等の就寝の用に供するものを除く)3階以上の階/その用途部分300㎡超(平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く)21令和元年、令和4年…
病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、高齢者・障害者等の就寝の用に供する児童福祉施設等地階/3階以上の階/2階部分300㎡以上/その用途部分300㎡超21令和元年、令和4年…
旅館、ホテル(毎年報告のものを除く)同上22令和元年、令和4年…
学校、学校に附属する体育館3階以上の階/その用途部分2,000㎡超23令和元年、令和4年…
博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、体育館(学校に附属するものを除く)3階以上の階/その用途部分2,000㎡以上24令和元年、令和4年…
下宿、共同住宅または寄宿舎と、この表の他の用途(事務所等を除く)との複合建築物5階以上の階、かつ その用途部分1,000㎡超28令和元年、令和4年…
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗(毎年報告のものを除く)地階/3階以上の階/2階部分500㎡以上/その用途部分500㎡超31令和2年、令和5年…
展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店同上32令和2年、令和5年…
複合用途建築物(共同住宅等の複合用途及び事務所等のものを除く)3階以上の階/その用途部分500㎡超33令和2年、令和5年…
事務所その他これに類するもの5階建て以上で延べ面積が2,000㎡を超える建築物のうち、3階以上の階かつその用途部分1,000㎡超34令和2年、令和5年…
下宿、共同住宅、寄宿舎(高齢者・障害者等の就寝の用に供するものを除く)5階以上の階、かつ その用途部分1,000㎡超40令和3年、令和6年…
高齢者、障害者等の就寝の用に供する共同住宅または寄宿舎地階/3階以上の階/2階部分300㎡以上41令和3年、令和6年…

一覧の注意4によると、ここでいう高齢者・障害者等の就寝の用に供する用途とは、共同住宅及び寄宿舎では「サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホーム」に限られます。児童福祉施設等では「助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、福祉ホーム及び障害福祉サービスを行う施設」に限られます。

賃貸マンションを持っている方が気にするのは用途コード40です。東京都では、5階以上の階にその用途の床面積が100㎡を超えてあり、かつ共同住宅部分の床面積の合計が1,000㎡を超える場合に対象になります。4階建てのアパートや、5階建てでも全体で1,000㎡以下の建物は、ここには当たりません。

東京都で3年ごとの報告になる用途コード。21から28は令和元年と令和4年、31から34は令和2年と令和5年、40と41は令和3年と令和6年
東京都で3年ごとの報告になる特定建築物と当たり年

防火設備と建築設備は「特定建築物に設けられるもの」

②防火設備と③建築設備は、①の特定建築物に該当する建物に設けられているかどうかで決まります。単独で対象になるわけではありません。

防火設備の検査の対象・検査項目・報告時期・費用は防火設備定期検査とは(対象・告示第723号の検査項目・報告時期・費用)で詳しくまとめています。

種類対象(東京都の一覧の原文)報告の時期
防火設備随時閉鎖又は作動をできるもの(防火ダンパーを除く。)で、特定建築物に該当する建築物に設けられるもの。ほかに用途コード29(病院・診療所で患者の収容施設のあるもの)と49(高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途)で、その用途部分が200㎡を超える建築物に設けられるもの前年の報告日の翌日から起算して、おおむね6か月から1年の間隔を空けて、原則として決められた期間に毎年
建築設備換気設備(自然換気設備を除く)、排煙設備(排煙機又は送風機を有するもの)、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備(給水タンク等を設けるもの)で、特定建築物に該当する建築物に設けられるもの毎年報告

ここで法令の構造をもう一度見ておきます。施行令16条3項が法12条3項の「政令で定める特定建築設備等」として挙げているのは、昇降機と防火設備の2つだけです(建築基準法施行令16条3項 e-Gov)。換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給排水設備は、この3項には入っていません。つまり建築設備の定期検査は、政令で一律に決まっているのではなく、特定行政庁が指定したときに対象になるという位置づけです。東京都は指定しています。

施行令16条3項が政令で定めるのは昇降機と防火設備の2つ。換気設備や排煙設備は特定行政庁の指定で対象になる
建築設備の定期検査は特定行政庁の指定で対象になる

報告対象になる換気設備の範囲も限定されています。一覧の注意5は「報告対象の換気設備は、火気使用室、無窓居室又は集会場等の居室に設けられた機械換気設備に限ります。」としています。建物の中にある換気設備を全部検査するわけではありません。

建築設備定期検査の対象は換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備の4つ
建築設備の定期検査で見る4つの設備(東京都の一覧)
報告対象の換気設備は、火気使用室、無窓居室、集会場等の居室に設けられた機械換気設備に限られる
報告対象になる換気設備の範囲(東京都の一覧 注意5)

昇降機は用途も規模も関係なく対象になる

④昇降機等だけは考え方が違います。東京都の説明は「全ての建築物(国等が所有又は管理する建築物を除く。)のエレベーター(ホームエレベーターは除く。)、エスカレーター、小荷物専用昇降機(テーブルタイプは除く。)及び遊戯施設等について」です(東京都都市整備局)。建物が特定建築物かどうかに関係なく、エレベーターが付いていれば定期検査報告の対象になります。

昇降機の範囲は施行令129条の3第1項が定めています。エレベーターは「人又は人及び物を運搬する昇降機…並びに物を運搬するための昇降機…でかごの水平投影面積が一平方メートルを超え、又は天井の高さが一・二メートルを超えるもの」、小荷物専用昇降機は「物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が一平方メートル以下で、かつ、天井の高さが一・二メートル以下のもの」です(建築基準法施行令129条の3 e-Gov)。

昇降機の種類対象から外れるもの(東京都の一覧の原文)
エレベーター労働安全衛生法施行令12条1項6号に規定するエレベーター(労働安全衛生法の性能検査を受けているもの)。かごが住戸内のみを昇降するもの(一戸建て、長屋又は共同住宅の住戸内に設けられた昇降機)
エスカレーター記載なし
小荷物専用昇降機昇降機の全ての出し入れ口の下端が、その出し入れ口が設けられる室の床面よりも50cm以上高いもの(テーブルタイプ)
遊戯施設等記載なし。乗用エレベーター、エスカレーターで観光用のものを含む

飲食店の厨房とホールをつなぐ小荷物専用昇降機は、テーブルタイプなら対象外、床に降りるタイプなら対象になります。見落としやすいところです。

昇降機等の定期検査は建物の用途や規模に関係なく対象。エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等
昇降機等は用途や規模を問わず対象になる

エレベーターの定期検査の頻度、検査できる資格、告示第283号の判定基準、保守点検との違い、費用はエレベーターの法定点検とはで詳しく説明しています。

対象から外れるもの

逆に、報告の対象から外れるものも押さえておきます。

外れるもの根拠・出典
国、都道府県及び建築主事を置く市町村が所有し、または管理する建築物法12条1項の括弧書き。これらは報告ではなく点検(法12条2項・4項)
共同住宅(高齢者、障害者等の就寝の用に供するものを除く)の住戸内東京都の一覧 注意3「定期調査・検査の報告対象から除かれます。」
一戸建て、長屋または共同住宅の住戸内に設けられた昇降機(ホームエレベーター等)東京都の一覧
テーブルタイプの小荷物専用昇降機東京都の一覧
労働安全衛生法の性能検査を受けているエレベーター東京都の一覧
倉庫、自動車車庫(政令で一律に対象になる用途には入っていない)施行令16条1項に該当する号が無い。特定行政庁の指定があれば対象になりうる

判定に迷ったとき、東京都は「①全体の階数・面積 ②各用途に供する面積 ③各階の用途等」を整理したうえで所管の特定行政庁に問い合わせるよう案内しています(東京都 3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧)。この3点をそろえてから電話すると、話が早く進みます。

自分の建物が対象かを確かめる手順。用途と規模を整理し、政令の分と特定行政庁の指定を確認し、昇降機の有無を見る
対象かどうかを確かめる手順

いつまでに報告するのか

条文が決めているのは幅だけ

報告の時期は、法律ではなく国土交通省令が枠を決め、実際の時期は特定行政庁が定めます。建築基準法施行規則5条1項は「法第十二条第一項の規定による報告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね六月から三年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期…とする。」と書いています(建築基準法施行規則5条 e-Gov)。

建築設備等については規則6条1項が「…建築設備又は防火設備…の種類、用途、構造等に応じて、おおむね六月から一年まで(ただし、国土交通大臣が定める検査の項目については、一年から三年まで)の間隔をおいて特定行政庁が定める時期…とする。」としています(建築基準法施行規則6条 e-Gov)。

括弧の中の「一年から三年まで」について、東京都のQ&Aは「建築基準法施行規則第6条第1項の規定に基づき、国土交通大臣が定める検査の項目については、3年に1度の検査が必要です。」と補足しています(東京都 Q4-2)。毎年の検査に加えて、3年に1度だけ行う項目がある、という整理です。

報告の時期は条文が幅だけ決めている。建築物はおおむね6か月から3年、建築設備等はおおむね6か月から1年、大臣が定める項目は1年から3年
条文が定めるのは時期の幅だけ(施行規則5条・6条)
建築設備の検査には毎年行う項目と、国土交通大臣が定める3年に1度の項目がある
建築設備には3年に1度だけ行う検査項目がある(東京都Q4-2)

東京都の報告期間

東京都の場合、実際に報告書を出せる期間は次のように決まっています。

種類報告の時期(東京都の一覧)
特定建築物(用途コード11から15)毎年、11月1日から翌年の1月31日まで
特定建築物(用途コード21から41)3年ごと、5月1日から10月31日まで
防火設備(全用途コード)毎年4月から翌年の1月(令和7年7月1日の東京都建築基準法施行細則改正後)
建築設備毎年報告
昇降機前年の報告日の翌日から起算して1年を経過する日まで
遊戯施設等6か月ごとに報告

防火設備の報告時期は、以前は用途コードごとに月が分かれていました。東京都まちづくりセンターの提出の手引き(令和8年7月)は「指定する報告時期(月)変更(令和7年7月1日東京都建築基準法施行細則改正)」として、全用途コードで「4月から翌年の1月」としています(東京都まちづくりセンター 提出の手引き PDF)。古い一覧を見ている場合は月がずれるので、提出前に受付機関で確かめておくと確実です(東京都 報告時期一覧のページ)。

3年ごとの報告は、当たり年を取り違えると1周期まるごと空いてしまいます。用途コード21から28は令和元年と令和4年から3年ごと、31から34は令和2年と令和5年から3年ごと、40と41は令和3年と令和6年から3年ごとです。

3年ごとの報告の当たり年。用途コード21から28、31から34、40と41でそれぞれ1年ずつずれている
3年ごとの報告は用途コードのまとまりごとに当たり年がずれる

新築のときの初回免除と初回報告

新築・改築した直後は、報告が1回免除されます。根拠は規則5条1項の各号で、検査済証の交付を受けた場合は「その直後の時期を除く」と書かれています。東京都はこれを「新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から、報告が必要となります。」と説明しています(東京都 初回免除)。

東京都が挙げている3年ごとの共同住宅の例はこうです。令和5年度中(2023年4月1日から2024年3月31日まで)に工事完了の検査済証が交付された建築物は、令和6年度の報告が直近の時期となり免除されるため、令和9年度(5月1日から10月31日まで)から報告が必要になります。令和6年度から令和8年度までの間に検査済証が交付された建築物は、令和9年度の報告が免除されるため、令和12年度から報告が必要になります。

ここで注意したいのは、建築設備と昇降機等は扱いが違うことです。東京都は「建築設備及び昇降機等定期検査報告については、新築・改築後、検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回の定期検査報告を提出する必要があります。」として、検査済証交付日が令和6年6月17日なら初回報告は令和8年6月17日まで、という例を挙げています。そのうえで「※特定建築物及び防火設備の「初回免除」と取扱いが異なりますので、ご注意ください。」と念を押しています。

種類初回の考え方(東京都)
特定建築物検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から
防火設備検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から、毎年
建築設備検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回
昇降機等同上
初回免除の考え方。特定建築物と防火設備は翌年度以降の2回目の報告時期から、建築設備と昇降機等は検査済証交付の翌日から2年以内
新築のときの初回報告は種類によって数え方が違う

誰が調査・検査できるのか

建築士か、資格者証の交付を受けている人

法12条1項は「一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者」、3項は「一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者」と定めています。所有者が自分で調べて報告することはできません。

資格者証の種類は施行規則6条の5が定めています。「法第十二条第一項…に規定する建築物調査員資格者証の種類は、特定建築物調査員資格者証及び昇降機等検査員資格者証とする。2 法第十二条第三項…に規定する建築設備等検査員資格者証の種類は、建築設備検査員資格者証、防火設備検査員資格者証及び昇降機等検査員資格者証とする。」(建築基準法施行規則6条の5 e-Gov)

それぞれが担当できる範囲は、同6条の6の表に書かれています(建築基準法施行規則6条の6 e-Gov)。

資格者証の種類調査・検査できるもの(施行規則6条の6の表)
特定建築物調査員資格者証特定建築物
建築設備検査員資格者証建築設備(昇降機を除く)及び防火設備(建築設備の検査等と併せて一体的に行うことが合理的であるものとして国土交通大臣が定めたものに限る)
防火設備検査員資格者証防火設備(上の国土交通大臣が定めたものを除く)
昇降機等検査員資格者証昇降機(観光用エレベーター等を含む)及び遊戯施設

東京都は、これを実務の表に直して公開しています。特定建築物は1級・2級建築士、建築基準適合判定資格者、特定建築物調査員。防火設備は1級・2級建築士、建築基準適合判定資格者、防火設備検査員。建築設備は1級・2級建築士、建築基準適合判定資格者、建築設備検査員。昇降機・遊戯施設は1級・2級建築士、建築基準適合判定資格者、昇降機検査員です(東京都 6.調査・検査の資格者)。

資格者証は国土交通大臣が交付します。交付の要件は、法12条の2第1項が「前条第一項の調査及び同条第二項の点検…に関する講習で国土交通省令で定めるものの課程を修了した者」または「前号に掲げる者と同等以上の専門的知識及び能力を有すると国土交通大臣が認定した者」と定めています。法令違反や不誠実な行為があれば、返納を命じられることもあります(法12条の2第3項。建築基準法12条の2 e-Gov)。

調査と検査ができる資格。特定建築物調査員、防火設備検査員、建築設備検査員、昇降機等検査員と、一級二級建築士
誰が調査・検査できるか(施行規則6条の5・6条の6、東京都の表)

行政は業者を紹介しない

ここが所有者にとって一番困るところです。東京都は「なお、東京都で調査・検査資格者の紹介は行っておりません。」と明記しています(東京都 6.調査・検査の資格者)。Q&Aでも「東京都では調査者の紹介を行っておりません。」と繰り返されています。

そのうえで東京都が示している探し方は3つです(東京都 Q2-1・Q2-2)。

  • 管理会社に相談する
  • 建物の設計・工事を行った建設会社等に相談する
  • 一般財団法人日本建築防災協会が公開している「特定建築物定期調査資格者技術力向上講習受講者名簿【特建全国名簿】」を参考にする

建築設備については、東京都は「一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター(電話03-3591-2421)に問い合わせをする。(建築設備の定期検査報告の受付団体である上記のセンターで、検査者の紹介を行っています。)」と案内しています。建築設備だけは受付団体が紹介をしている、という違いがあります。

行政は業者を紹介しない。探し方は管理会社に相談、設計や工事をした建設会社に相談、日本建築防災協会の名簿を参考にする
行政は業者を紹介しない。示されている探し方は3つ(東京都Q2-1)

行政が業者も金額も示さないので、所有者は自分で複数社に当たって比べるしかありません。次の費用の章で、条件をそろえて比べるための見方を整理します。

何を調べるのか(告示で決まっている項目)

調査・検査の項目は5本の告示で決まる

規則5条2項は「当該調査の項目、方法及び結果の判定基準は国土交通大臣の定めるところによるものとする。」としています。その「大臣の定めるところ」が告示です。国土交通省が公開している告示は次のとおりです(国土交通省 4.調査・検査項目告示)。

告示題名改正の記載
平成20年3月10日国土交通省告示第282号建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件令和5年3月20日改正
平成20年3月10日国土交通省告示第283号昇降機の定期検査報告における検査の項目、事項、方法及び結果の判定基準及び検査結果表を定める件令和元年6月21日改正
平成20年3月10日国土交通省告示第284号遊戯施設の定期検査報告における検査の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件平成29年3月29日改正
平成20年3月10日国土交通省告示第285号建築設備等(昇降機及び遊戯施設を除く。)の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件令和5年3月20日改正
平成28年5月2日国土交通省告示第723号防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件令和5年3月20日改正

調査する側がこれらの告示に沿って項目を埋めていくので、所有者側から見ると「なぜこんな細かいところまで見るのか」という疑問の答えは、この告示にあります。裏を返せば、告示にない項目を理由に高い追加費用を請求されたら、根拠を聞いてよい、ということでもあります。

調査検査の項目を定める5本の告示。告示282号は建築物、283号は昇降機、284号は遊戯施設、285号は建築設備等、723号は防火設備
調査・検査の項目を定める告示(国土交通省)

2025年7月1日から項目が変わった

直近で大きく動いたのが、2025年7月1日施行の改正です。東京都は「令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布、令和7年7月1日施行)及び令和7年国土交通省告示第53号(令和7年1月29日公布、令和7年7月1日施行)により、定期調査・検査等の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表等の見直しが行われました。」と説明しています(東京都 2.定期調査・検査制度改正の内容。告示の本文は令和6年告示第974号と令和7年告示第53号)。

東京都は国の改正内容を原則そのまま取り入れたうえで、都独自の措置を置きました。主なものは次の3つです。

対象東京都の措置(原文)
特定建築物「常時閉鎖式防火扉」について、従来どおり特定建築物定期調査による報告を求める。「換気設備」における「物品放置の状況」について、自然換気設備は、従来どおり特定建築物定期調査による報告を求める。避難経路上の「窓先の空間」の確保に関する調査を追記。
防火設備「常時閉鎖式防火扉」について、防火設備定期検査による報告を求めない。
建築設備「換気設備」及び「非常用の照明装置」において、「物品の放置の状況」を検査項目に追加。「目視により確認する。」とされている項目について、「目視又はこれに類する方法により確認する。」に改正。

常時閉鎖式の防火扉をどちらで報告するかは、東京都では従来どおり特定建築物定期調査です。東京都のQ&Aは「特定建築物において常閉防火扉に係る項目を調査することになるため、建築物調査員が実施することとなり、建築設備等検査員により検査を実施することはできません。」とも答えています(東京都 今回の法改正についてのQ&A)。誰が調べるかまで変わるので、業者と話すときに確認しておきたい点です。

結果表の様式にも切り替えのルールがあります。東京都は「令和7年7月1日施行の調査・検査結果表は7月1日以降に調査・検査する物件に対して使用し、6月30日以前に調査・検査した物件については、従前の調査・検査結果表を使用してください。」としています。

2025年7月1日施行の改正。令和6年告示974号と令和7年告示53号で項目と判定基準が見直された。東京都は常時閉鎖式防火扉を従来どおり特定建築物定期調査で報告
2025年7月1日施行の改正と東京都の独自措置

外壁の全面打診は10年に1度

12条点検で費用が跳ね上がる原因になるのが、外壁のタイル等の全面打診調査です。東京都のQ&Aはこう定めています。「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等…が完了した日、検査済証の交付を受けた日又は外壁の全面改修が完了した日が属する年度の翌年度の開始の日から起算して10年を超え、最初の報告日までに、全面打診等が必要です。」(東京都 Q4-7)

東京都が挙げている例は分かりやすいです。2012年7月10日に検査済証が交付されている場合、起算開始日が2013年4月1日になるので、2023年4月1日以降の直近の報告時期までに全面打診等が必要になります。

「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」の定義も示されています。「当該壁面の前面かつ当該壁面高さの概ね2分の1の水平面内に、公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内通路、広場を有する壁面(壁面直下に鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の強固な落下物防御施設(屋根、庇等)が設置され、または植込み等により、影響角が完全にさえぎられ、災害の危険がないと判断される部分を除く。)です。」(東京都 Q4-9)

打診の代わりに赤外線調査を使えるかについては、「赤外線調査を行うことで、落下により危害を加えるおそれのある部分の劣化及び損傷の状況が正確に判断できる場合、赤外線調査での確認が可能です。」と答えたうえで、一般財団法人日本建築防災協会が取りまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参照するよう示しています(東京都 Q4-8)。足場を組まずに済むぶん費用が下がる場合がありますが、判定の精度が条件です。

全面打診が必要になる年は、通常の調査費用とは別に数十万円から数百万円の見積もりが出ることがあります。10年という周期は前回からの起算で決まるので、いつが自分の建物の当たり年になるかは、検査済証の日付か前回の全面打診の日付から逆算して、修繕計画に入れておくのが現実的です。

外壁の全面打診は10年に1度。検査済証交付日や前回打診日の属する年度の翌年度開始日から10年を超え最初の報告日まで
外壁の全面打診等は10年に1度(東京都Q4-7)

報告の流れと書類

報告書は受付機関を経由して特定行政庁へ

東京都の場合、所有者が直接役所の窓口に出すのではなく、受付機関を経由します。流れは次のとおりです(東京都 4.主な報告の流れ)。

順誰が何をするか(東京都の原文)
1報告者(建物所有者又は管理者)報告時期に合わせて、調査・検査資格者へ調査・検査の依頼
2調査者・検査者調査・検査を行い、報告書を作成し、その結果を報告者に報告
3報告者(調査者・検査者への委任可)報告書を提出(2部+概要書)
4受付機関報告事務手数料の納入を受け、予備審査の上、特定行政庁へ書類を送付
5特定行政庁審査を行った後、報告者へ報告書を返却するために受付機関へ書類送付。審査結果によっては、報告者に対して改善等を指導
6受付機関報告書1部(受付の押印付)、報告済証等を報告者へ送付
7報告者報告書の保存、報告済証の掲示等

3の「調査者・検査者への委任可」がポイントです。多くの場合、調査から提出までを業者がまとめて引き受けます。ただし委任していても、報告義務そのものは所有者・管理者から移りません。期限に間に合わなかったときに責任を問われるのは所有者側です。

報告の流れ。所有者が資格者へ依頼し、調査検査と報告書作成、受付機関へ提出、特定行政庁が審査、報告済証が返ってくる
報告の流れ(東京都の例)

東京都の受付機関は3つに分かれている

東京都では、4種類の報告ごとに受付機関が違います。まとめて1か所に出せるわけではないので、ここも取り違えやすいところです。

報告の種類受付機関所在地電話
特定建築物、防火設備公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター新宿区西新宿7-7-30特定建築物 03-5989-1929/防火設備 03-5989-1937
建築設備一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター港区西新橋1-15-503-3591-2421
昇降機・遊技施設等一般社団法人 東京都昇降機安全協議会渋谷区代々木1-35-403-6304-2225

審査をする特定行政庁も、建物の規模と所在地で分かれます。

区域所管する特定行政庁
特別区の区域で、敷地内に延べ面積が1万㎡を超える建築物がある場合東京都 市街地建築部建築企画課(特定建築物・防火設備 03-5388-3344/建築設備・昇降機等 03-5388-3349)
上記以外の特別区の区域それぞれの区役所
多摩の区域のうち八王子市、町田市、日野市、立川市、府中市、調布市、三鷹市、武蔵野市、国分寺市、西東京市、小平市それぞれの市役所
上記11市以外の市東京都 多摩建築指導事務所 管理課 調査担当(042-548-2029)
島嶼の区域東京都 市街地建築部建築企画課

東京都は区によって書式や提出方法が異なる場合があるとして、提出前に区の担当部署へ確認するよう案内しています(東京都 所管の特定行政庁)。

東京都の受付機関は3つ。特定建築物と防火設備はまちづくりセンター、建築設備は日本建築設備昇降機センター、昇降機は東京都昇降機安全協議会
東京都では報告の種類ごとに受付機関が分かれている

使う様式は決まっている

報告書の様式は施行規則が定めています。規則5条3項は建築物について「別記第三十六号の二様式による報告書及び別記第三十六号の三様式による定期調査報告概要書に国土交通大臣が定める調査結果表を添えてするものとする。」としています。ただし書きで、特定行政庁が規則で独自の様式を定めた場合はそちらによる、とされています(建築基準法施行規則5条 e-Gov)。

規則6条3項は建築設備等の様式を種類ごとに分けています(建築基準法施行規則6条 e-Gov)。

対象報告書の様式概要書の様式
建築物(特定建築物定期調査)別記第三十六号の二様式別記第三十六号の三様式
昇降機別記第三十六号の四様式別記第三十六号の五様式
建築設備(昇降機を除く)別記第三十六号の六様式別記第三十六号の七様式
防火設備別記第三十六号の八様式別記第三十六号の九様式
遊戯施設別記第三十六号の十様式別記第三十六号の十一様式

高さ4メートルを超える看板等も報告の対象になりえます。規則6条の2の2は、法88条1項及び3項で法12条を準用する工作物として「法第六十四条に規定する工作物(高さ四メートルを超えるものに限る。以下「看板等」という。)」と「法第八十八条第一項に規定する昇降機等」を挙げ、報告の時期を「おおむね六月から一年まで(ただし、国土交通大臣が定める検査の項目については、一年から三年まで)」としています(建築基準法施行規則6条の2の2 e-Gov)。屋上の大きな広告塔がある建物では、ここも確認しておきたいところです。

報告書の様式番号。建築物は36号の2と36号の3、昇降機は36号の4と5、建築設備は6と7、防火設備は8と9、遊戯施設は10と11
報告書と概要書の様式(施行規則5条3項・6条3項)
高さ4メートルを超える看板等と昇降機等も、法88条で法12条が準用され定期報告の対象になりうる
高さ4メートルを超える看板等も対象になりうる(施行規則6条の2の2)

報告書の控えの保存

東京都のQ&Aは「建築基準法令上の保存義務はありません。」としています。ただし続けて「建築物を適正に維持管理し続けるには、建築物の所有者・管理者が調査履歴を把握している必要があります。また、次回調査時にも、これまでの調査結果を確認することとなりますので、適切な保存をお願いします。」と書かれています(東京都 Q1-9)。

昇降機だけは別の扱いです。同じQ&Aは、2016年2月に国土交通省が策定した「昇降機の適切な維持管理に関する指針」により「保守点検業者が適切に保守・点検を行うために必要な文書として、昇降機定期検査報告書の写しを3年以上保存することが定められています。」と説明しています。

報告書の控えに建築基準法令上の保存義務は無い。ただし昇降機定期検査報告書の写しは指針で3年以上の保存
報告書の控えの保存(東京都Q1-9)

費用はどれくらいか

公的な相場は存在しない

最初にはっきりさせておくと、12条点検には公定価格も標準料金もありません。行政が金額を示すこともありません。そのため、この記事では相場や平均を作らず、実際に料金を公開している会社の表をそのまま並べます。金額は取得した日の公開内容で、条件によって変わります。

費用は大きく3つに分かれます。調査・検査そのものの費用、報告書の作成と提出代行の費用、そして受付機関に納める報告事務手数料です。見積書を見るときは、この3つのどれが入っていてどれが入っていないかを確かめると比較しやすくなります。

12条点検の費用は3つに分かれる。調査検査の費用、報告書の作成と提出代行の費用、受付機関の報告事務手数料
費用は3つに分かれる
2つの見積書を並べて条件を比べている様子
条件をそろえて比べないと、金額だけでは判断できない(イメージ)

受付機関に納める報告事務手数料(東京都)

これは公表されている金額です。公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターは、特定建築物定期調査報告の事務手数料を次のように公表しています(令和8年7月1日改定。建築物1棟につき。東京都防災・建築まちづくりセンター 報告事務手数料)。

報告部分の床面積(建築物1棟につき)手数料の額(消費税抜き)
500㎡以内6,500円5,909円
500㎡を超え、3,000㎡以内7,300円6,637円
3,000㎡を超え、5,000㎡以内8,800円8,000円
5,000㎡を超え、10,000㎡以内11,100円10,091円
10,000㎡を超え、20,000㎡以内19,500円17,728円
20,000㎡を超え、40,000㎡以内20,900円19,000円
40,000㎡を超えるもの24,700円22,455円

防火設備定期検査報告の事務手数料も公表されています(報告対象建築物1棟につき。同 防火設備定期検査報告 事務手数料)。

延べ面積令和元年10月1日改定令和8年7月1日改定
3,000㎡以内のもの3,300円(税抜 3,000円)3,800円(税抜 3,455円)
3,000㎡を超え、10,000㎡以内のもの5,500円(税抜 5,000円)6,400円(税抜 5,819円)
10,000㎡を超え、20,000㎡以内のもの9,350円(税抜 8,500円)11,100円(税抜 10,091円)
20,000㎡を超えるもの12,100円(税抜 11,000円)14,600円(税抜 13,273円)

センターは「当センターでは、特定行政庁からの受託業務以外にそれぞれの報告書への助言及び相談等の対応、報告対象建築物管理者等への報告の「ご案内」等の送付、報告済証の発行などの事業を自主的に行っています。頂いた事務手数料は、これらの費用などに充てられています。」と説明しています。業者の見積書にこの手数料が含まれていない場合は、別に用意することになります。

特定建築物定期調査報告の事務手数料。500㎡以内6500円から40000㎡超24700円まで床面積で段階的に決まる
受付機関に納める報告事務手数料(東京都防災・建築まちづくりセンター)

業者が公開している料金(2026年9月23日時点)

次は各社が自社サイトで公開している料金です。平均は作りません。会社名とURLを併記します。まずビューローベリタスジャパン株式会社の特定建築物定期調査の価格表です。税込で、括弧内が税抜です。

延床面積共同住宅事務所・病院・福祉施設ホテル・旅館・店舗
〜500㎡44,000円(40,000円)55,000円(50,000円)66,000円(60,000円)
〜1,000㎡55,000円(50,000円)71,500円(65,000円)82,500円(75,000円)
〜2,000㎡71,500円(65,000円)82,500円(75,000円)93,500円(85,000円)
〜3,000㎡82,500円(75,000円)93,500円(85,000円)110,000円(100,000円)
〜5,000㎡93,500円(85,000円)132,000円(120,000円)148,500円(135,000円)
5,000㎡〜別途お見積り別途お見積り別途お見積り

同社は建築設備定期検査の価格表も公開しています。

延床面積共同住宅事務所・病院・福祉施設ホテル・旅館・店舗
〜500㎡33,000円(30,000円)44,000円(40,000円)55,000円(50,000円)
〜1,000㎡44,000円(40,000円)55,000円(50,000円)66,000円(60,000円)
〜2,000㎡49,500円(45,000円)66,000円(60,000円)77,000円(70,000円)
〜3,000㎡55,000円(50,000円)88,000円(80,000円)99,000円(90,000円)
〜5,000㎡66,000円(60,000円)110,000円(100,000円)132,000円(120,000円)
5,000㎡〜別途お見積り別途お見積り別途お見積り

注記は「案件数・規模や提供サービス内容等により価格が変動しますので、正式なお見積は下記よりお問い合わせください」です。

大阪の株式会社防災屋は特定建築物定期調査の費用を税抜で公開しています。同社は「不特定多数の人が利用する用途(ホテル・病院・遊技場等)は調査項目が多く、共同住宅等より費用が高くなる傾向があります。正確な費用は建物の場所・階数によっても変動するため、お見積りをご依頼ください。」と注記しています。

延べ面積共同住宅・事務所などホテル・病院・遊技場など
500㎡25,000円〜30,000円〜
1,000㎡30,000円〜50,000円〜
2,000㎡50,000円〜70,000円〜
3,000㎡70,000円〜90,000円〜
5,000㎡100,000円〜120,000円〜
10,000㎡150,000円〜180,000円〜

株式会社 日本確認検査センターは、報告書の作成費用と現地調査費用を分けて公開しています。分け方そのものが参考になります。

項目手数料(括弧内は税込)
特定建築物の定期報告書作成費用(3年毎)40,000円(44,000円)
建築設備の定期報告書作成費用(毎年)36,000円(39,600円)
防火設備の定期報告書作成費用(毎年)36,000円(39,600円)
定期報告書行政提出、調整代行費用10,000円(11,000円)
建築物外壁全面打診検査・赤外線診断調査別途見積もり

同社の現地調査費用は、学校・ホテル・物販店舗・病院・老人ホーム等・事務所・飲食店などの用途で、延べ面積ごとに次のようになっています。

延べ面積建築物建築設備防火設備
500㎡未満45,000円(49,500円)40,000円(44,000円)38,000円(41,800円)
500以上〜1,000㎡未満55,000円(60,500円)45,000円(49,500円)43,000円(47,300円)
1,000以上〜2,000㎡未満60,000円(66,000円)50,000円(55,000円)48,000円(52,800円)
2,000以上〜3,000㎡未満65,000円(71,500円)55,000円(60,500円)53,000円(58,300円)
3,000以上〜4,000㎡未満70,000円(77,000円)60,000円(66,000円)58,000円(63,800円)
4,000以上〜5,000㎡未満75,000円(82,500円)65,000円(71,500円)63,000円(69,300円)

髙橋建築事務所は建築設備定期検査の費用を公開しています。ホテル・旅館・共同住宅・センター・スーパー・病院・事務所・福祉施設の区分です。

延べ面積金額(括弧内は税込)
〜500㎡55,000円(57,750円)
500〜1,000㎡70,000円(73,500円)
1,000〜2,000㎡80,000円(84,000円)
2,000〜3,000㎡95,000円(99,750円)
3,000〜5,000㎡120,000円(126,000円)
5,000㎡〜別途お見積もり

見積もりを比べるときにそろえる7項目

同じ建物でも、見積書の前提が違えば金額は変わります。各社の注記から、条件をそろえるべき項目を抜き出すと次の7つになります。

確かめること根拠になる注記の例
報告書の作成費が入っているか日本確認検査センターは報告書作成費用と現地調査費用を分けて表示している
行政への提出代行費が入っているか同社は「定期報告書行政提出、調整代行費用」を別項目で表示している
受付機関の報告事務手数料が入っているか髙橋建築事務所は「特定行政庁が指定する機関への手数料は含まれておりません。」と注記している
外壁の全面打診・赤外線調査が入っているか日本確認検査センターは「別途見積もり」と表示している
交通費や遠方の割増があるか髙橋建築事務所は「神戸市西区より50kmを超える場合、遠距離の場合は別途交通費などが発生する場合があります。」と注記している
平日の昼間か、休日や夜間か髙橋建築事務所は「調査(検査)は,管理者等立会いの下平日昼間時での実施の想定です。」と注記している
指摘が出たときの是正工事は別か髙橋建築事務所は「費用には不具合の是正などは含みません。」と注記している

設備の条件で追加費用が出ることもあります。髙橋建築事務所は「中央管理方式の空調設備、機械排煙設備がある場合は別途費用が掛かります。」「書類作成費用に、別途費用が発生する場合がございます(25000円~)」とも注記しています。複数社に頼むときは、同じ図面と同じ条件を渡して見積もりを取ると、比べられる形になります。

見積もりを比べるときにそろえる7項目。報告書作成費、提出代行費、事務手数料、全面打診、交通費、実施の時間帯、是正工事
見積もりを比べるときにそろえる7項目

報告しないとどうなるか

100万円以下の罰金。法人にも科される

建築基準法101条1項は「次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。」と定め、2号に「第十二条第一項若しくは第三項…又は第五項…の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者」を挙げています(建築基準法101条 e-Gov)。報告をしないことだけでなく、虚偽の報告も同じ条文で罰金の対象です。

さらに法105条1項は両罰規定です。「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をした場合においては、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。」とし、2号で101条を挙げています(建築基準法105条 e-Gov)。法人が持っている建物なら、担当者と法人の両方が対象になりうる形です。

東京都のQ&Aも「建築基準法第12条に定められており、報告を怠ることは法令違反となります。またその場合、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります。」と書いています(東京都 Q1-6)。

報告をせず、または虚偽の報告をした者は100万円以下の罰金。法人の業務に関しての違反なら法人にも罰金刑
罰則は100万円以下の罰金(建築基準法101条1項2号・105条1項2号)

案内が来ないことは、義務がないことの証明にならない

「うちには案内が届いていないから対象外だ」と考えてしまうケースがあります。東京都のQ&Aはここを正面から否定しています。「建築基準法12条では、所有者又は管理者…に報告義務が課せられていますので、特定行政庁等からの「案内の有無」は、「報告義務の有無」とは無関係です。」(東京都 Q1-8)

なぜ案内が来ないことがあるのかも説明されています。「以前に報告をいただいている場合、定期調査・検査報告の受付団体から、準備に必要な期間を考慮した時期に、ご案内を差し上げております。しかし、これまで報告をいただいていない場合等、お知らせできない場合もございます。」(東京都 Q1-7)。つまり一度も報告していない建物ほど案内が届きにくい、という構造です。心当たりがある場合は、東京都の新規登録用紙で建物の情報を知らせる手続きが用意されています。

なお、特定行政庁は報告に係る建築物の台帳を整備し保存することになっています(法12条8項。建築基準法12条 e-Gov)。報告していない建物が把握されていないだけで、制度の外にいるわけではありません。

案内の有無と報告義務の有無は無関係。一度も報告していない建物ほど案内が届きにくい
案内が来ないことは、義務がないことの証明にならない(東京都Q1-8)

取り壊した・売った場合も届出が必要

建物をなくした、手放したというときも、そのまま放っておくと台帳の上では対象のまま残ります。東京都は次のように案内しています(東京都 Q3-1からQ3-3)。

状況必要な手続き(東京都の回答)
建物を取り壊した「建築物除却・使用休止届」の提出が必要
建物を売却した、または管理者が変わった「建築物等の所有者等変更届」の提出が必要
会社の代表者が変わった所有者または管理者、またはその両方が変わった場合には変更届が必要。代表者が変わった場合にも原則提出は必要

報告にかかる費用を惜しむ気持ちは分かります。東京都のQ&Aは「費用もかかるが、定期報告をする意味があるのか?」という問いに、「万が一、建築に係る事故等が発生した場合、定期報告の有無及びその内容は重要な参考資料となることも予想されます。」「指摘を踏まえた計画的な修繕・維持管理を行うことは、長期的に見ると維持保全費用を抑えることにも繋がります。」と答えています(東京都 Q1-5)。事故が起きたときに何を確認していたかを示せるかどうかは、所有者にとって大きな差になりえます。

建物を取り壊したら建築物除却・使用休止届、売却や管理者の変更は建築物等の所有者等変更届
建物をなくした・手放したときの届出(東京都Q3-1からQ3-3)

よくある質問

12条点検は何年に1回ですか

種類によって違います。東京都の場合、特定建築物の定期調査は用途コード11から15が毎年、21から41が3年ごとです。防火設備と建築設備は毎年、昇降機も毎年、遊戯施設等は6か月ごとです。条文が定めているのは幅だけで、建築物はおおむね6か月から3年、建築設備等はおおむね6か月から1年(国土交通大臣が定める検査の項目は1年から3年)の中で、特定行政庁が時期を定めます。

特殊建築物定期調査と特定建築物定期調査は違うものですか

同じ制度です。東京都のQ&Aは「同じ報告制度です。建築基準法の改正により、平成28年6月から、特殊建築物等定期調査報告から特定建築物定期調査報告に名称が変更となりました。名称が変わっただけで、二つの報告が必要になったわけではありません。」と答えています(東京都 Q1-10)。古い資料では特殊建築物という言い方が残っています。

所有者が自分で調査して報告できますか

できません。法12条1項は一級建築士・二級建築士または建築物調査員資格者証の交付を受けている者に調査をさせることを求めています。3項の検査も同様に、一級建築士・二級建築士または建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者です。

エレベーターの保守点検を毎月やっていれば定期検査報告は不要ですか

保守点検と定期検査報告は別です。東京都は、全ての建築物のエレベーター(ホームエレベーターを除く)、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等について、昇降機は毎年、遊戯施設等は半年ごとに資格者が検査して特定行政庁に報告するものと説明しています。保守業者が報告まで代行している場合もあるので、契約の範囲を確認してください。

外壁の打診調査は毎回必要ですか

毎回ではありません。東京都のQ4-7によると、全面打診等が完了した日、検査済証の交付を受けた日、または外壁の全面改修が完了した日が属する年度の翌年度の開始の日から起算して10年を超え、最初の報告日までに全面打診等が必要です。条件を満たせば赤外線調査による確認も可能とされています。

報告書の控えは何年保存すればよいですか

東京都は「建築基準法令上の保存義務はありません。」としたうえで、調査履歴の把握と次回調査での確認のために適切な保存を求めています。昇降機については、2016年2月に国土交通省が策定した「昇降機の適切な維持管理に関する指針」の第二章第6第2項が「所有者は、…第二章第5第1項の規定による定期検査報告書等の写しその他保守点検業者が適切に保守・点検を行うために必要な文書等を3年以上保存するものとする。」と定めています。保存するのは所有者です。

4階建ての賃貸マンションは対象ですか

東京都の用途コード40は、5階以上の階にその用途の床面積が100㎡を超えてあり、かつ共同住宅部分の床面積の合計が1,000㎡を超えるものが対象です。4階建てはここには当たりません。ただしエレベーターが付いていれば、昇降機の定期検査報告の対象になります。また対象かどうかの線引きは特定行政庁ごとに違うので、最終的には所在地の特定行政庁で確かめてください。

事務所ビルは対象ですか

全国一律の答えはありません。事務所は施行令16条1項の各号に挙げられておらず、施行令14条の2第2号の「事務所その他これに類する用途に供する建築物…のうち階数が三以上で延べ面積が二百平方メートルを超えるもの」として、特定行政庁が指定したときに対象になります。東京都では用途コード34として、5階建て以上で延べ面積が2,000㎡を超える建築物のうち、3階以上の階かつその用途部分が1,000㎡を超えるものが3年ごとの報告の対象です。

消防設備点検をやっていれば12条点検は不要ですか

不要にはなりません。東京都は「建築基準法に基づく「定期調査・検査報告制度」は、消防法に基づく消防用設備等点検とは異なる制度ですのでご留意ください。」と書いています。報告先も資格も見る対象も別です。消防側の点検については「消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)」にまとめています。

業者を紹介してもらえますか

東京都は「東京都で調査・検査資格者の紹介は行っておりません。」としています。示されている探し方は、管理会社に相談する、建物の設計・工事を行った建設会社等に相談する、一般財団法人日本建築防災協会が公開している特定建築物定期調査資格者の名簿を参考にする、の3つです。建築設備については、受付団体である一般財団法人 日本建築設備・昇降機センターが検査者の紹介を行っていると案内されています。

最後に確認すること

この記事は東京都を例に書いています。対象になる建物と報告の時期は特定行政庁が定めるため、同じ用途・同じ規模でも所在地によって答えが変わります。次の順番で確かめると、手戻りが少なくなります。

確認の手順。用途と規模と階を整理し、所在地の特定行政庁を調べ、対象と時期を確かめ、前回の報告日と検査済証の日付を確認し、複数社から同じ条件で見積もりを取る
確認の手順
順確かめること
1建物全体の階数と延べ面積、各用途に供する面積、各階の用途を整理する
2所在地を所管する特定行政庁を確認する(東京都なら区役所、11市の市役所、多摩建築指導事務所、東京都のいずれか)
3その特定行政庁が公表している対象建築物と報告時期の一覧で、自分の建物の用途コードと当たり年を確かめる
4検査済証の交付日、前回の報告日、前回の外壁全面打診の日を手元にそろえる
5エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、高さ4メートルを超える看板等の有無を確認する
6同じ図面と同じ条件を渡して、複数社から見積もりを取る
7見積書に報告書作成費、提出代行費、報告事務手数料、全面打診が入っているかを確かめる

判断に迷う用途については、東京都が報告対象建築物の判断のフローチャートとケーススタディを公開しています(東京都 3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧)。物販店舗、共同住宅、複合用途建築物、事務所、病院・旅館・ホテル、展示場・キャバレー・遊技場・飲食店などが例として載っています。

制度の全体像は国土交通省の「建築基準法に基づく定期報告制度について」、東京都内の手続きは「東京都都市整備局 定期調査・検査報告制度」がそれぞれの一次情報です。条文そのものは建築基準法、建築基準法施行令、建築基準法施行規則を e-Gov で読めます。

建物の法定義務は建築基準法だけではありません。消防法の点検、貯水槽の清掃など、別々の法律が別々の周期で動いています。まとめて把握しておきたい方は、消防側の記事も参考にしてください。

建築基準法12条点検
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