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消防法・同法施行令・同法施行規則、金属製避難はしごと緩降機の規格省令(e-Gov)、平成8年消防庁告示第2号、昭和53年消防庁告示第1号、点検の基準 別表第15、平成16年消防庁告示第9号・第10号、消防庁の点検要領 第15 避難器具は、2026年10月15日に原文を取得して確認しました。条文は原文どおりに引用しています。用途の区分や無窓階の判定、規則26条の減免に当たるかどうかは、建物を管轄する消防署で確かめてください。
ビルの2階や3階に店を出す、事務所のフロアを借りる、建物の使い方を変える。そんなときに消防署や管理会社から「この階には避難器具が要ります」と言われて、何を何個、どこに置けばよいのか迷う方は多いと思います。避難器具の設置基準は消防法施行令25条が決めていて、建物全体ではなく「階ごと」に、用途とその階の収容人員で要るかどうかが決まります。
この記事では、条文と消防庁の告示を原文のまま確かめながら、避難器具の種類、要る階、収容人員の数え方、個数の計算と減らせる場合、階ごとに置ける器具、避難はしご・緩降機・救助袋の置き方、4階以上の条件、標識と格納、既存の建物、点検と罰則までを順に見ていきます。計算は例を作って手順どおりに追います。
消防用設備の点検の全体像は消防設備点検とはでまとめています。この記事は避難器具の「置き方の基準」に絞ります。

先に結論

| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 根拠 | 消防法17条、消防法施行令25条、消防法施行規則1条の3・26条・27条、平成8年消防庁告示第2号 |
| 決まり方 | 建物ではなく階ごと。用途と、その階の収容人員で決まる |
| 対象外の階 | 避難階と11階以上の階 |
| 要る階の例 | 病院・福祉施設は2階以上・地階で20人以上、ホテル・共同住宅は30人以上、店舗・飲食店・学校などは50人以上、工場・事務所は3階以上・地階で150人以上(無窓階・地階は100人以上) |
| 見落としやすい階 | 3階以上(飲食店などは2階以上)で、地上へ通じる直通階段が2つない階は10人以上で対象 |
| 個数 | 収容人員100人・200人・300人ごとに1個。耐火構造で避難階段・特別避難階段が2以上なら200人・400人・600人で計算 |
| 置き方 | 開口部の大きさ、操作面積、降下空間、避難空地、標識を告示どおりに確保する |
| 既存の建物 | 避難器具は基準が変わると既存の建物にも新しい基準が及ぶ(法17条の2の5第1項) |
| 点検 | 機器点検6か月ごと、総合点検1年ごと。報告は特定用途の建物が1年に1回、その他が3年に1回 |
避難器具とは 8種類の器具

避難器具は、火事で階段が使えなくなったとき、窓やバルコニーから地上や隣の建物へ逃げるための器具です。令25条2項の表には、避難はしご、緩降機、救助袋、滑り台、避難橋、避難用タラップ、滑り棒、避難ロープの8種類が出てきます。
それぞれの意味は、昭和53年消防庁告示第1号と規格省令が決めています。たとえば救助袋は「使用の際、垂直又は斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるもの」、避難橋は「建築物相互を連絡する橋状のもの」、避難用タラップは「階段状のもので、使用の際、手すりを用いるもの」です。
| 器具 | 条文や告示での意味 |
|---|---|
| 避難はしご | 固定はしご、立てかけはしご、つり下げはしご。金属製のものは規格省令で決まり、国家検定の対象(令37条11号) |
| 緩降機 | 使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下できる機構を持つもの。国家検定の対象(令37条12号) |
| 救助袋 | 垂直または斜めに広げ、袋の中を滑り降りる |
| 滑り台 | 勾配のある直線状またはらせん状の固定された滑り面を滑り降りる |
| 避難橋 | 建物と建物をつなぐ橋状のもの |
| 避難用タラップ | 階段状で、使うときに手すりを用いる |
| 滑り棒 | 垂直に固定した棒を滑り降りる |
| 避難ロープ | 上端を固定してつり下げたロープで降りる |
金属製避難はしごの規格省令は、縦棒が2本以上のはしごの縦棒の間隔を内法寸法で30cm以上50cm以下、横桟の間隔を25cm以上35cm以下としています。つり下げはしごのうち、避難器具用ハッチに格納していて、使うときに突子(建物の壁に当てる部品)が壁に接しない構造のものは「ハッチ用つり下げはしご」と呼ばれます。
避難器具が要る階(令25条1項)

令25条1項は、避難器具を「防火対象物の階(避難階及び十一階以上の階を除く。)」に設置すると決めています。避難階は地上に直接出られる階で、ふつうは1階です。その階の用途と収容人員で、次の1号から5号のどれに当たるかを見ます。
| 号 | 用途(令別表第一) | 対象の階 | 収容人員 |
|---|---|---|---|
| 1号 | (6)項 病院・診療所・福祉施設・幼稚園など | 2階以上・地階 | 20人以上(下階に(1)項から(4)項、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項、(15)項があれば10人以上) |
| 2号 | (5)項 ホテル・旅館・共同住宅・寄宿舎など | 2階以上・地階 | 30人以上(下階の条件は1号と同じで10人以上) |
| 3号 | (1)項から(4)項 劇場・集会場・飲食店・店舗など、(7)項から(11)項 学校・図書館・公衆浴場・駅・神社など | 2階以上・地階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階を除く) | 50人以上 |
| 4号 | (12)項 工場・スタジオ、(15)項 事務所など | 3階以上・地階 | 3階以上の無窓階・地階は100人以上、その他の階は150人以上 |
| 5号 | 上のほか、令別表第一のすべて | 3階以上((2)項・(3)項と、2階にその用途がある(16)項イは2階以上)で、避難階または地上に直通する階段が2以上ない階 | 10人以上 |
1号と2号のかっこ書きは、下の階に火を使う店や物販店、工場、事務所などがある場合に、10人以上へ基準を下げるものです。たとえば1階が飲食店、2階が有床診療所なら、2階は20人ではなく10人以上で対象になります。
いちばん見落としやすいのは5号です。1号から4号に当たらなくても、3階以上の階で地上へ通じる直通階段が1つしかなく、収容人員が10人以上なら避難器具が要ります。(2)項のカラオケボックスや遊技場、(3)項の飲食店は、2階から対象です。小さな雑居ビルの2階・3階の飲食店がこれに当たりやすい点に気をつけてください。
5号は、その階に「避難上有効な開口部を有しない壁」で区画された部分があるときは、区画された部分ごとに直通階段の数を見ます。ひとつのフロアを壁で仕切って複数のテナントが入っている場合は、区画ごとに確かめます。
収容人員の数え方(規則1条の3)

令25条の「収容人員」は、令1条の2で「当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数」とされ、数え方は規則1条の3が用途ごとに決めています。避難器具では、この数え方で「その階の収容人員」を出します。
| 用途 | 数え方(規則1条の3) |
|---|---|
| (1)項 劇場・映画館など | 従業者の数+固定いす席の数(長いすは正面幅÷0.4m)+立見席の床面積÷0.2㎡+その他の部分の床面積÷0.5㎡ |
| (2)項・(3)項の遊技場 | 従業者の数+遊技の機械器具を使える者の数+観覧・飲食・休憩の固定いす席の数(長いすは正面幅÷0.5m) |
| (2)項・(3)項のその他(飲食店など) | 従業者の数+固定いす席の数(長いすは正面幅÷0.5m)+その他の部分の床面積÷3㎡ |
| (4)項 物販店舗など | 従業者の数+主に従業者以外が使う部分のうち、飲食・休憩部分の床面積÷3㎡、その他の部分の床面積÷4㎡ |
| (5)項イ ホテル・旅館 | 従業者の数+洋室はベッドの数、和室は床面積÷6㎡(簡易宿所と主に団体客を泊めるものは÷3㎡)+集会・飲食・休憩部分 |
| (5)項ロ 共同住宅など | 居住者の数 |
| (6)項イ 病院など | 医師・看護師その他の従業者の数+病室内の病床の数+待合室の床面積の合計÷3㎡ |
| (7)項 学校 | 教職員の数+児童・生徒・学生の数 |
| (12)項 工場など | 従業者の数 |
| (15)項 事務所など | 従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積÷3㎡ |
店舗と事務所が入った複合ビル((16)項)は、規則1条の3第2項で、同じ用途の部分をそれぞれ1つの建物とみなして数え、合算します。ただし避難器具の判定は階ごとなので、実際には「その階のその用途の部分」を数えることになります。
何個置くか(令25条2項1号)

令25条2項1号は、対象の階に置く個数を、号ごとに次のように決めています。
| 対象の階 | 1個で足りる人数 | それを超えたら |
|---|---|---|
| 1号・2号・5号の階 | 100人以下 | 100人までを増すごとに1個を加える |
| 3号の階 | 200人以下 | 200人までを増すごとに1個を加える |
| 4号の階 | 300人以下 | 300人までを増すごとに1個を加える |
たとえば1号の階で収容人員が250人なら、100人までで1個、200人までで2個、250人で3個です。同じ250人でも、3号の階なら200人を超えるので2個、4号の階なら300人以下なので1個になります。
同じ階が2つの号に当たるときは、それぞれの号で個数を出して確かめます。次の計算例のように、3号と5号の両方に当たる階はよくあります。
計算例1 3階の飲食店

直通階段が1つしかない雑居ビルの3階に、飲食店((3)項ロ)が入っているとします。従業者は5人、客席は固定いすのないテーブル席で、客席部分の床面積は150㎡とします。
- 収容人員を数える。従業者5人+客席の床面積150㎡÷3㎡=50人で、合計55人
- 3号を当てはめる。(3)項の2階以上の階で50人以上なので対象
- 5号を当てはめる。(3)項は2階以上が対象で、直通階段が1つ、収容人員10人以上なので対象
- 個数を出す。3号は200人以下なら1個、5号は100人以下なら1個。どちらでも1個以上
同じ店で、テーブルを減らして客席の床面積が120㎡になったとします。120㎡÷3㎡=40人に従業者5人で45人となり、3号の50人には届きません。それでも5号の10人以上には当たるので、避難器具は要ります。直通階段が1つのビルでは、席数を減らしても避難器具が要らなくなるとは限りません。
計算例2 4階の事務所
(15)項の事務所が入る4階で、従業者120人、来客が使う応接・会議室の床面積が120㎡とします。収容人員は120人+120㎡÷3㎡=40人で160人です。4号は3階以上の無窓階でない階なら150人以上が対象なので、この階は対象になり、300人以下なので1個です。
この建物の特定主要構造部が耐火構造で、直通階段を避難階段や特別避難階段としたものが2以上あれば、規則26条1項で300人は600人に読み替えます。160人なら個数は1個のままですが、次に説明する規則26条2項にも当たれば、避難階段の数を引いて1未満になり、避難器具を置かなくてよい場合があります。
個数を減らせる場合・置かなくてよい場合(規則26条)

令25条2項1号のただし書きは、建物の位置、構造、設備の状況で避難上支障がないと認められるときは、総務省令で個数を減らし、または置かないことができるとしています。その総務省令が規則26条です。
| 規則26条 | 条件 | 効果 |
|---|---|---|
| 1項 | 特定主要構造部が耐火構造で、直通階段を避難階段または特別避難階段としたものが2以上 | 100人を200人、200人を400人、300人を600人に読み替えて計算 |
| 2項 | 建築基準法施行令で必要な直通階段を、避難階段(屋外のもの、屋内で消防庁長官が定める部分を持つもの)または特別避難階段としている | その数を引く。引いた数が1未満なら置かなくてよい |
| 3項 | 耐火構造の建物で、耐火構造か鉄骨造、両端の出入口に自動閉鎖装置付きの特定防火設備の防火戸(防火シャッターを除く)、避難・通行・運搬専用の渡り廊下 | 渡り廊下の数×2を引く |
| 4項 | 耐火構造の建物で、有効面積100㎡以上の屋上広場に避難橋を設け、直下階から屋上広場への避難階段・特別避難階段が2以上 | 直下階で避難橋の数×2を引く |
| 5項 | 耐火構造で、防火戸つきの耐火構造の壁・床による区画、内装の準不燃材料かスプリンクラー設備、避難階段、バルコニー等などの組み合わせ | 置かなくてよい |
| 6項 | 小規模特定用途複合防火対象物の1号・2号の階で、下階の用途、直通階段2以上、収容人員の条件 | 置かなくてよい |
| 7項 | 3号・4号の階((1)項・(4)項を除く)で、1,500㎡以上の屋上広場の直下階、屋上広場へ避難階段・特別避難階段が2以上など | 置かなくてよい |
5項はさらに3つの型に分かれます。たとえば3号の型は、耐火構造で、居室や住戸から直通階段に直接通じていて、その出入口に特定防火設備の防火戸があり、収容人員が30人未満であることなどが条件です。防火戸の手で開く部分は、幅75cm以上、高さ1.8m以上、下端の床面からの高さ15cm以下とされています。
どの項に当たるかは、建物の構造、階段の仕様、防火戸の種類で決まり、図面を見ないと判断できません。減らせると思い込んで置かずにいると、立入検査で指摘されることがあります。設計や改装の段階で、管轄の消防署に図面を持って相談してください。
階ごとに置ける器具(令25条2項1号の表)

令25条2項1号の表は、号と階ごとに置ける器具を決めています。高い階ほど、使える器具が少なくなります。
| 階 | 1号((6)項 病院・福祉施設など) | 2号・3号(ホテル・共同住宅・店舗・飲食店・学校など) | 4号(工場・事務所) | 5号 |
|---|---|---|---|---|
| 地階 | 避難はしご、避難用タラップ | 避難はしご、避難用タラップ | 避難はしご、避難用タラップ | 対象外 |
| 2階 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難用タラップ | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、滑り棒、避難ロープ、避難用タラップ | 対象外 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、滑り棒、避難ロープ、避難用タラップ |
| 3階 | 滑り台、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難用タラップ | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難用タラップ | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難用タラップ |
| 4階・5階 | 滑り台、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 |
| 6階以上 | 滑り台、救助袋、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 | 滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋 |
病院や福祉施設(1号)は、3階以上で避難はしごを選べず、6階以上では緩降機も外れます。滑り棒と避難ロープは、2号・3号・5号の2階でしか選べません。
器具を置く開口部について、令25条2項2号は「避難に際して容易に接近することができ、階段、避難口その他の避難施設から適当な距離にあり、かつ、当該器具を使用するについて安全な構造を有する開口部」に置くとし、3号は開口部に常に取り付けておくか、すぐ取り付けられる状態にしておくとしています。規則27条1項2号は、滑り棒・避難ロープ・避難橋・避難用タラップ以外の器具を置く開口部を、相互に同一垂直線上にない位置にするよう求めています。上下の階で同じ位置に並べないということです。

避難はしごの置き方

避難はしごの置き方の細目は、規則27条2項を受けた平成8年消防庁告示第2号の第三 一が決めています。ハッチに入れた金属製避難はしご以外のものは、次のとおりです。
| 項目 | 基準(告示第2号 第三 一(一)) |
|---|---|
| 開口部(壁に設ける場合) | 高さ0.8m以上・幅0.5m以上、または高さ1m以上・幅0.45m以上 |
| 開口部(床に設ける場合) | 直径0.5m以上の円が内接できる大きさ |
| 開口部の下端 | 床面から1.2m以下。避難上支障のない固定・半固定のステップ等を設ければ別 |
| 窓や扉 | ストッパー等を設け、使用中に閉まらないようにする |
| 操作面積 | 0.5㎡以上(器具の水平投影面積を除く)、一辺は0.6m以上 |
| 降下空間 | 縦棒の中心線から外方向に0.2m以上、器具の前面から奥行0.65m以上の角柱形 |
| 避難空地 | 降下空間の水平投影面積以上 |
| 避難通路 | 避難空地の最大幅員(1mを超えるものは1m)以上 |
| 最下部の横桟 | 使用状態で降着面等から0.5m以下 |
| 架空電線 | 降下空間との間隔1.2m以上、はしごの上端との間隔2m以上 |
| 地階に設ける場合 | 固定式とし、ドライエリアの部分に設ける(避難器具専用室内なら別) |
規則27条1項4号と5号は、はしごの取り付け方を決めています。固定はしごは柱、床、はりなど構造上堅固な部分に、ボルト締め、埋込み、溶接などで取り付け、横桟は建物から10cm以上離し、降下口は直径50cm以上の円が内接する大きさにします。つり下げはしごも、使ったときに横桟が建物から10cm以上離れるようにします。

消防庁の点検要領 第15 避難器具には、器具ごとの降下空間が図つきの表でまとめられています。避難はしごは縦棒の中心から0.2m以上と奥行0.65m以上、緩降機は半径0.5mの円柱形で、電線がある場合は降下空間から120cm以上の間隔が要ります。点検ではこの範囲に物が置かれていないかを見ます。
ハッチ式の避難はしご

マンションのバルコニーの床にある四角いふたは、避難器具用ハッチです。告示第2号は、ハッチを「金属製避難はしご、救助袋等の避難器具を常時使用できる状態で格納することのできるハッチ式の取付け具」と定義し、第三 一(二)で次の基準を決めています。
- はしごはつり下げはしごとし、使うときに突子が壁に接しない場合はハッチ用つり下げはしごとする
- はしごはハッチに常時使用できる状態で格納する
- ハッチは、手すりなど転落防止の措置をしたバルコニー等、外気に接する部分の床に設ける(避難器具専用室内なら別)
- 各階のハッチの降下口は、直下階の降下口と同一垂直線上にない位置にする
- 降下空間は、ハッチの開口部から降着面等まで、開口部の面積以上の角柱形
- 下ぶたが開いたとき、その下端は避難空地の床面から1.8m以上
ハッチの上に植木鉢や物置を置くと、ふたが開かず使えません。点検の基準 別表第15も、ハッチの上蓋と下蓋の開閉操作が容易にできること、下蓋に雨水等が溜まらない措置があることを確かめるとしています。共同住宅の点検の流れはマンションの消防点検とはで説明しています。
4階以上に避難はしごを置くとき

規則27条1項は、4階以上の階に避難はしごを置くときの条件を上乗せしています。固定はしご(4号ホ)は、金属製であること、安全かつ容易に避難できる構造のバルコニー等に設けること、降下口を直下階の降下口と同一垂直線上にない位置に設けることが求められます。つり下げはしご(5号ニ)は、金属製であること、バルコニー等に設けて取付け具を避難器具用ハッチとすること、降下口を直下階とずらすことが求められます。
どちらも、使うときの落下を防ぐ措置があるもの、避難上・安全上支障のないものは例外とされています。窓から外壁に沿ってつり下げるはしごを4階以上に置く計画なら、例外に当たるかを含めて消防署に確かめてください。
緩降機の置き方

緩降機は、ロープの両端に着用具(体に通すベルト)が付いていて、調速器で速さを抑えながら、自分の重さで1人ずつ交互に降りる器具です。告示第2号 第三 二は、避難はしごの開口部や操作面積の基準を準用したうえで、次の基準を加えています。
| 項目 | 基準(告示第2号 第三 二) |
|---|---|
| 開口部の下端 | 壁に設ける場合、床から1.2m以下 |
| ステップ | 床からの高さが0.5m以上なら、固定または半固定のステップ等を設ける |
| 壁との距離 | 壁面からロープの中心まで0.15m以上0.3m以下 |
| 降下空間 | 緩降機を中心とした半径0.5mの円柱形に包含される範囲以上 |
| フック | 床面から1.5m以上1.8m以下の高さ |
| ロープの長さ | 降ろした着用具の下端が、降着面等からプラスマイナス0.5mの範囲 |
緩降機の規格省令は、使うときに取付け具に取り付ける持ち運び式の緩降機について調速器の質量を10kg以下とし、降下速度は荷重を変えて試験したときに毎秒16cm以上150cm以下としています。規則27条1項6号は、ロープが建物に当たって傷まないように設けること、ロープの長さを取付位置から降着面までの長さとすることを求めています。
救助袋の置き方

救助袋には、建物から斜めに地上へ張る斜降式と、真下へ垂らす垂直式があります。告示第2号 第三 三の基準は次のとおりです。
| 項目 | 斜降式 | 垂直式 |
|---|---|---|
| 開口部 | 高さ・幅とも0.6m以上で、入口金具を操作でき、袋の展張状態を近くの開口部等から確かめられる | 斜降式と同じ |
| 操作面積 | 幅1.5m以上・奥行1.5m以上(形を変えるなら2.25㎡以上) | 斜降式と同じ |
| 降下空間 | 袋の下方と側面に、上部25度・下部35度の範囲 | 器具の中心から半径1m以上の円柱形 |
| 避難空地 | 袋の下端から前方2.5m、中心線から左右それぞれ1m以上 | 降下空間の水平投影面積以上 |
| 出口の高さ | 無荷重で降着面等から0.5m以下 | 斜降式と同じ |
| その他 | 下部支持装置を結合する固定環を設ける | 共用する場合は器具相互の外面を1mまで近づけられる |
斜降式は、地上に袋の下端を固定する固定環が要り、袋の前に2.5mの空地が要ります。駐車場や植え込みに変わって空地がふさがると使えません。点検の基準 別表第15も、固定環に土砂の堆積がなく、保護蓋が容易に開くことを確かめるとしています。
滑り台、滑り棒、避難ロープ、避難橋、避難用タラップの基準も告示第2号にあります。たとえば滑り台の降下空間は滑り面から上方に1m以上と両端から外へ0.2m以上、避難空地は下部先端から前方1.5m以上と中心線から左右0.5m以上です。避難橋と避難用タラップの開口部は高さ1.8m以上とされています。
標識・明るさ・格納

告示第2号の第五から第七は、標識、明るさ、格納を決めています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 位置の標識の場所 | 器具の直近の見やすい箇所と、器具に至る廊下・通路等(設置場所が容易にわかれば別) |
| 位置の標識の大きさ | 縦0.12m以上・横0.36m以上 |
| 位置の標識の文字 | 「避難器具」、または「避難」「救助」の文字を含む器具名(シンボルマークで足りる場合あり) |
| 色 | 地色と文字の色を対比色にし、文字が明確に読みとれる |
| 使用方法の標識 | 器具の直近の見やすい箇所に、図と文字等でわかりやすく(使い方が簡便なものは省略可) |
| 明るさ(第六) | 使用方法の確認や操作が安全かつ円滑にできる明るさの場所に置く |
| 格納(第七) | 常時使用状態のもの以外は格納箱等に収納。屋外は雨水等を排水する措置 |
規則27条1項3号は、特定一階段等防火対象物と呼ばれる建物について、器具を置く場所の出入口に識別できる措置をし、エレベーターホールや階段室の出入口付近にも置き場所を示す標識を設けるよう求めています。同じ号のロは、すべての建物で、置き場所に器具であることと使い方を示す標識を設けるとしています。
使い方は、東京消防庁の避難はしごの使用方法を知ろうが図で説明しています。従業員や入居者が実際に器具を見て、使い方の標識を読んでおくだけでも、いざというときの動きが変わります。誘導灯や誘導標識の基準は誘導灯の交換で触れています。

既存の建物にも新しい基準が及ぶ
消防法17条の2の5第1項は、基準が変わったときに既存の建物の消防用設備等には従前の規定を適用すると決めていますが、かっこ書きで「消火器、避難器具その他政令で定めるもの」を除いています。つまり避難器具は、基準が変わると既存の建物にも新しい基準が当てはまります。
建てたときに避難器具が要らなかった階でも、テナントが入れ替わって用途や収容人員が変わると、令25条1項に当たることがあります。たとえば事務所だった2階に飲食店が入ると、5号は(3)項なら2階から対象になるので、直通階段が1つなら10人以上で避難器具が要ります。用途を変える前に、消防署へ相談してください。設置したときの届出と検査は消防用設備等の設置届で説明しています。
点検と報告

避難器具も、消防法17条の3の3の点検と報告の対象です。平成16年消防庁告示第9号は、避難器具の機器点検を6月、総合点検を1年ごととしています。点検の結果は維持台帳に記録し、規則31条の6第3項で、特定用途の建物((1)項から(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項、(16の3)項)は1年に1回、その他の建物は3年に1回、消防長または消防署長に報告します。報告書の書き方は消防設備点検の報告書でまとめています。

点検の基準 別表第15は、機器点検で周囲の状況(設置場所、操作面積、開口部、降下空間、避難空地)、標識、器具本体、取付具と支持部、格納状況を確かめるとしています。緩降機ならロープに「損傷、腐食、著しい磨耗等がないこと」、救助袋なら本体布に「損傷、ほつれ、腐食、著しい磨耗等がないこと」などです。総合点検では、開口部の開放と器具の取付け、降下、格納が適正にできるかを確かめます。
| 点検・工事 | できる人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 点検(避難器具すべて) | 第5類の甲種・乙種消防設備士、第二種消防設備点検資格者 | 規則33条の3、平成16年消防庁告示第10号 |
| 工事 | 固定式の金属製避難はしご、救助袋、緩降機は甲種第5類の消防設備士 | 令36条の2第1項11号から13号、規則33条の3 |
| 整備 | 固定式の金属製避難はしご、救助袋、緩降機は第5類の消防設備士 | 令36条の2第2項、規則33条の3 |
点検を誰に頼めるかは消防設備点検の資格者、消防設備士の種類は消防設備士とはでまとめています。点検を外に頼むときの考え方は消防設備点検の費用と業者の選び方を参考にしてください。
置かない・直さないとどうなるか

避難器具が基準どおりに置かれていない、または維持されていないと認めたとき、消防長や消防署長は、関係者で権原を有する者に、設置や維持のための措置を命じることができます(法17条の4)。命令に従わないと罰則があります。
| 違反 | 罰則 | 条文 |
|---|---|---|
| 命令に違反して設置しなかった | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(情状により併科) | 法41条1項5号 |
| 同じ違反で法人の業務に関するもの | 法人に3,000万円以下の罰金刑 | 法45条2号 |
| 命令に違反して維持の措置をしなかった | 30万円以下の罰金又は拘留 | 法44条12号 |
| 点検の報告をしない、うその報告をした | 30万円以下の罰金又は拘留 | 法44条11号 |
避難器具は、開口部の前に棚や段ボールを置いて使えなくなっている、ハッチの上に物が載っている、といった維持の不備を立入検査で指摘されやすい設備です。立入検査の流れは消防の立入検査とはで説明しています。防火管理者がいる建物では、日ごろの見回りの項目に避難器具の周りを入れておくと安心です。防火管理者の役割は防火管理者とはでまとめています。
テナントの入れ替えや改装のときに気をつけること
避難器具で困りやすいのは、建てたときよりも、使い方が変わったときです。条文から、気をつけたい場面を3つ並べます。
1つ目は、上の階に飲食店やカラオケ店が入るときです。5号は(2)項・(3)項の用途だと2階から対象になり、直通階段が1つなら10人以上で避難器具が要ります。物販店や事務所だったときは要らなかった階でも、要るようになります。
2つ目は、窓まわりの改装です。開口部の大きさ、下端の高さ、操作面積、降下空間は告示で寸法が決まっています。窓を小さくする、窓の前に造作の棚を作る、外にテントや看板を出すといった工事で、基準を満たさなくなることがあります。
3つ目は、建物の外まわりの変更です。避難空地や避難通路に駐輪場や物置を置くと、降りた先がふさがります。救助袋の斜降式なら袋の前に2.5m、滑り台なら前方1.5mの空地が要ります。建物全体の防火管理の点検は防火対象物点検とはで別に説明しています。
管理者のチェックリスト

- 各階の用途(令別表第一の何項か)と、規則1条の3による収容人員を数えた
- 避難階と11階以上の階を除き、令25条1項の1号から5号を階ごとに当てはめた
- 下の階の用途を確かめた(1号・2号は下階によって10人以上になる)
- 地上へ直通する階段が1つしかない階を確かめた(5号)
- 個数を計算し、規則26条の減免に当たるかを消防署に確かめた
- 置ける器具を階ごとに選んだ(4階以上の避難はしごは金属製などの条件あり)
- 開口部の前、操作面積、降下空間、避難空地、避難通路に物を置いていない
- 位置と使用方法の標識があり、機器点検を6か月ごと、総合点検を1年ごとにしている
よくある質問
Q. 2階建ての小さな店舗でも避難器具は要りますか
A. 2階が避難階でなければ、用途と収容人員で判定します。店舗((4)項)なら2階で収容人員50人以上が対象です(令25条1項3号)。ただし特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階は3号から除かれます。飲食店やカラオケ店((2)項・(3)項)なら、直通階段が2以上ない2階で10人以上でも対象になります(同5号)。
Q. 1階には避難器具が要らないのですか
A. 令25条1項は避難階を除いているので、地上に直接出られる1階は対象外です。避難階は建物によって変わることがあるので、地形に高低差がある建物は消防署で確かめてください。
Q. 11階以上の階に避難器具がないのはなぜですか
A. 令25条1項が「十一階以上の階を除く」としているためです。11階以上の階の避難の備えは、建物の構造やほかの消防用設備とあわせて、管轄の消防署で確かめてください。
Q. 避難はしごと緩降機はどちらを選べばよいですか
A. まず令25条2項1号の表で、その階に置ける器具かを確かめます。たとえば病院・福祉施設の3階以上では避難はしごを選べません。そのうえで、開口部の大きさ、降下空間、避難空地を確保できるか、使う人が操作できるかで選びます。金属製避難はしごと緩降機は国家検定の対象です(令37条)。
Q. ハッチの上に物を置いてもよいですか
A. 置かないでください。告示第2号は、ハッチに格納したはしごを常時使用できる状態にしておくことを求めていて、点検の基準 別表第15でも、上蓋と下蓋の開閉操作が容易にできることを確かめます。
Q. 避難器具の点検は自分でできますか
A. 法令上は、点検を有資格者にさせる建物に当たらなければ、関係者が自ら点検して報告することも認められています(法17条の3の3)。点検できる資格は、第5類の消防設備士と第二種消防設備点検資格者です。固定式の金属製避難はしご、救助袋、緩降機の工事と整備は消防設備士でなければできません(令36条の2)。
Q. 古い建物で、建てたときに避難器具が要らなかった場合はどうなりますか
A. 避難器具は法17条の2の5第1項のかっこ書きで除かれているため、基準が変わると既存の建物にも新しい基準が当てはまります。今の基準で要るなら置く必要があります。
出典
出典(すべて2026年10月15日に原文を確認)
消防法(e-Gov 法令検索) 17条、17条の2の5、17条の3の3、17条の4、41条、44条、45条
消防法施行令(e-Gov 法令検索) 1条の2、25条、36条の2、37条
消防法施行規則(e-Gov 法令検索) 1条の3、26条、27条、31条の6、33条の3
金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(e-Gov 法令検索)
緩降機の技術上の規格を定める省令(e-Gov 法令検索)
消防庁 平成8年消防庁告示第2号 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(PDF)
消防庁 昭和53年消防庁告示第1号 避難器具の基準(PDF)
消防庁 昭和50年消防庁告示第14号 別表第15 避難器具の点検の基準(PDF)
消防庁 平成16年消防庁告示第9号(点検の期間等)(PDF)
消防庁 平成16年消防庁告示第10号(点検の資格)(PDF)
消防庁 点検要領 第15 避難器具(PDF)
東京消防庁 避難はしごの使用方法を知ろう





