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防火管理者とは?必要な建物・収容人員の数え方・甲種と乙種・講習と受講料・選任届と消防計画・統括防火管理者【2026年版・条文つき】

2026 9/23
消防設備点検
2026年9月23日2026年9月26日
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防火管理者とは?必要な建物・収容人員の数え方・甲種と乙種・講習と受講料・選任届と消防計画・統括防火管理者【2026年版・条文つき】

この記事の情報

法令は e-Gov の現行版(消防法は2025年6月1日施行、消防法施行令は2025年10月1日施行、消防法施行規則は2026年6月26日施行の版)で確認し、消防庁の告示と令和7年版消防白書、東京消防庁と一般財団法人日本防火・防災協会のページとあわせて2026年9月23日に確認した内容です。受講料や様式は変わることがあります。建物ごとの最終的な判断は、管轄の消防署に確認してください。

テナントとして店を出したら、ビルの管理会社から「防火管理者を決めて届け出てください」と言われた。事務所の人事異動で、前任者がやっていた役目を引き継ぐことになった。賃貸のアパートを買ったら、消防署から選任の案内が届いた。防火管理者は、建物を持っている人にも、借りて商売をしている人にも、ある日とつぜん回ってくる役目です。

ところが、自分の建物に本当に必要なのか、誰がなればよいのか、講習はどれを受ければよいのか、消防計画には何を書けばよいのかが、調べてもなかなかはっきりしません。条文が長いうえに、収容人員という耳慣れない数字が判定の基準になっているからです。

この記事では、消防法8条と消防法施行令・消防法施行規則、消防庁の告示の原文を確かめたうえで、対象になる建物の判定、甲種と乙種の分かれ目、講習の時間と受講料、選任届と消防計画の出し方、消防計画に書く項目、統括防火管理者、選任しなかったときに何が起きるかの順に整理しました。最後にチェックリストとよくある質問を置いています。

先に結論を書くと、防火管理者が必要かどうかは建物全体の収容人員で決まります。自力で避難することが著しく困難な人が入所する社会福祉施設等を含む建物は10人以上、飲食店や物販店などの特定用途がある建物は30人以上、共同住宅や事務所など非特定用途だけの建物は50人以上です。必要な資格が甲種か乙種かは延べ面積で決まります。そして届け出る書類は、選任届と消防計画の2通です。

防火管理者の要点。決めるのは管理権原者、対象の目安は収容人員10人30人50人、資格は甲種か乙種で分かれ目は延べ面積、届出は選任届と消防計画の2通
防火管理者の要点(出典 消防法8条・同法施行令1条の2・3条・3条の2)
目次
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防火管理者とは(消防法8条)

防火管理者は、建物の中で火災を防ぎ、いざというときに人を逃がすための段取りを、日常的に担当する人です。根拠は消防法8条1項で、原文は次のとおりです(消防法 e-Gov)。

「学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。」

1文が長いので6つに分けて読む

この条文は、誰が、誰を、何をさせるか、どこへ届けるか、定めないとき、やっていないときの6つに分けると読みやすくなります。5つ目と6つ目は同じ条の3項と4項にあたります。

消防法8条1項を6つの要素に分けた図。誰が、誰を、何をさせる、どこへ、定めないとき、やっていないとき
条文を6つに分けて読む(出典 消防法8条)
要素条文が書いていること
誰が多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者
誰を政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定める
何をさせる消防計画の作成/消火、通報及び避難の訓練の実施/消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備/火気の使用又は取扱いに関する監督/避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理/収容人員の管理
どこへ定めたときは遅滞なく所轄消防長又は消防署長へ届け出る(8条2項)
定めないとき定めるべきことを命ぜられる(8条3項)
やっていないとき法令や消防計画に従って業務が行われるよう必要な措置を命ぜられる(8条4項)

義務を負うのは管理権原者、業務をするのは防火管理者

ここを取り違えると話が合わなくなります。条文で義務を負っているのは管理について権原を有する者(管理権原者)です。防火管理者は、その人から選ばれて実際の業務をする人です。命令の名あて人になるのも、罰則の対象になるのも管理権原者の側です。

なお、消防設備点検(消防法17条の3の3)で義務を負うのは「関係者」で、消防法2条4項が「防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者」と定義しています。防火管理者の条文が使っている「管理について権原を有する者」とは書き分けられています。消防設備点検そのものの周期や報告の出し方は、1本目の記事「消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)」にまとめています。

管理権原者と防火管理者の役割分担。管理権原者は防火管理者を定め届け出て命令と罰則の対象になる。防火管理者は消防計画を作り訓練と自主検査と火気の監督を行う
決める人と、やる人は別(出典 消防法8条1項2項・同法施行令3条1項・3条の2)

防火管理者は「管理的又は監督的な地位にある」人から選びます(消防法施行令3条1項)。資格を持っているだけでは足りず、その建物や事業所で判断や指示ができる立場にあることが条文の要件です。

ビルの中では何人も選ばれる

1棟のビルに対して防火管理者が1人だけ、というわけではありません。管理権原が分かれていれば、その分だけ選任が必要になります。東京消防庁は「防火管理者が必要な建物では、建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要です」と書いています(東京消防庁 防火管理者が必要な防火対象物と資格)。

つまり、共用部分について建物のオーナーが1人、各テナントについてそれぞれの事業者が1人ずつ、という形になります。テナントの店長のところに案内が来るのは、この仕組みのためです。

ビルの中では建物所有者とすべてのテナントがそれぞれ防火管理者を選任する
権原が分かれていれば、その数だけ必要になる(出典 東京消防庁)
ビルに入っている飲食店の客席と厨房。壁際に消火器が置かれている(イメージ)
テナントとして入っている店舗も、自分の区画について防火管理者を選ぶ(イメージ)

自分の建物に防火管理者は必要か

判定の基準は収容人員です。延べ面積ではありません。ここは間違えやすいところで、面積は後で出てくる甲種と乙種の区分に使う数字です。基準は消防法施行令1条の2第3項1号にあり、イ・ロ・ハの3つに分かれています。

防火管理者が必要になる収容人員の3つの線。社会福祉施設等を含む建物は10人以上、特定用途の建物は30人以上、非特定用途だけの建物は50人以上
必要かどうかは収容人員で決まる(出典 消防法施行令1条の2第3項1号)

3つの人数の線

号建物収容人員
イ令別表第一(6)項ロ(自力で避難することが著しく困難な人が入所する社会福祉施設等)と、その用途の部分がある(16)項イ・(16の2)項10人以上
ロ(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ・ハ・ニ、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項((6)項ロの部分があるものを除く)30人以上
ハ(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項まで、(16)項ロ、(17)項50人以上

条文のイの原文は「当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの」です。数えるのは建物全体で、自分のテナントの区画だけではありません。小さな店でも、入っているビルの全体で線を越えていれば対象になります。

特定用途と非特定用途の分かれ目

イとロが対象にしているのが特定用途、ハが非特定用途です。特定用途は、不特定多数の人が出入りするものや、逃げるのに手助けが要る人が利用するものです。

特定用途と非特定用途の一覧。特定用途は劇場、遊技場、飲食店、物販店、ホテル、病院、社会福祉施設、幼稚園、地下街など。非特定用途は共同住宅、学校、図書館、工場、駐車場、倉庫、事務所など
特定用途と非特定用途(出典 消防法施行令別表第一)
区分主な用途(令別表第一)
特定用途(1)劇場・公会堂/(2)キャバレー・遊技場・性風俗営業店舗・カラオケボックス等/(3)料理店・飲食店/(4)百貨店・物品販売店舗・展示場/(5)イ 旅館・ホテル/(6)病院・社会福祉施設・幼稚園等/(9)イ 蒸気浴場等/(16)イ 特定用途を含む複合用途/(16の2)地下街
非特定用途(5)ロ 共同住宅/(7)学校/(8)図書館等/(9)ロ 一般浴場/(10)停車場/(11)神社・寺院/(12)工場・スタジオ/(13)駐車場・航空機格納庫/(14)倉庫/(15)事務所等/(16)ロ 非特定の複合用途/(17)文化財

複合用途の建物については、消防法施行令1条の2第2項が「当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする。」と定めています。社員食堂のように、主たる用途に付いている部分は、独立した用途として数えないという意味です。

同条1項には、百貨店に準ずる大規模な小売店舗の定めもあります。原文は「法第八条第一項の政令で定める大規模な小売店舗は、延べ面積が千平方メートル以上の小売店舗で百貨店以外のものとする。」です。

収容人員の数え方は用途ごとに違う

収容人員の算定方法は消防法施行規則1条の3が用途ごとに定めています。従業者の数だけで数える用途もあれば、客席の面積を割り算する用途もあります。

用途ごとの収容人員の数え方。飲食店は従業者プラス客席、物販店は床面積を3平方メートルと4平方メートルで割る、ホテルはベッドの数、共同住宅は居住者の数、工場と倉庫は従業者の数
収容人員は用途ごとに数え方が違う(出典 消防法施行規則1条の3)
用途算定方法の要点
(1)項 劇場等従業者の数+客席(固定いす席はその数、長いす式は正面幅を0.4メートルで割った数、立見席は床面積を0.2平方メートル、その他は0.5平方メートルで割った数)
(2)項・(3)項 飲食店・料理店等従業者の数+客席(固定いす席はその数、長いす式は正面幅を0.5メートルで割った数、その他の部分は床面積を3平方メートルで割った数)
(4)項 百貨店・物品販売店舗等従業者の数+飲食又は休憩の部分は床面積を3平方メートル、その他の部分は4平方メートルで割った数
(5)項イ 旅館・ホテル等従業者の数+宿泊室(洋式はベッドの数、和式は床面積を6平方メートル、簡易宿所と主として団体客を宿泊させるものは3平方メートルで割った数)+集会・飲食・休憩の部分
(5)項ロ 共同住宅居住者の数
(6)項イ 病院等医師、歯科医師、助産師、薬剤師、看護師その他の従業者の数+病室内の病床の数+待合室の床面積の合計を3平方メートルで割った数
(6)項ロ・ハ 社会福祉施設従業者の数と、老人、乳児、幼児、身体障害者、知的障害者その他の要保護者の数の合計
(6)項ニ 幼稚園等教職員の数と、幼児、児童又は生徒の数の合計
(10)項・(12)項から(14)項まで 停車場・工場・駐車場・倉庫従業者の数
(15)項 事務所等従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで割った数の合計

複合用途や地下街は、同条2項により、用途ごとの部分をそれぞれ1つの防火対象物とみなして数えてから合計します。計算の例や、長いす席の幅の扱いといった細かいところは、2本目の記事「防火対象物点検とは(消防設備点検との違い・対象・特例認定)」に用途別の計算例まで書いていますので、実際に数えるときはそちらを見てください。

複合用途ビルの収容人員の数え方。用途ごとに区切り、その用途の算定方法で数え、全部を足す
複合用途ビルは用途ごとに数えてから足す(出典 消防法施行規則1条の3第2項)

建物が建つ前から対象になることもある

同じ令1条の2第3項には、まだ使われていない建物についての定めもあります。

新築の工事中の建築物と建造中の旅客船も対象になる条件
工事中でも対象になる場合がある(出典 消防法施行令1条の2第3項2号3号)
対象条件
新築の工事中の建築物収容人員50人以上で、地階を除く階数が11以上かつ延べ面積1万平方メートル以上/延べ面積5万平方メートル以上/地階の床面積の合計が5千平方メートル以上のもののうち、総務省令で定めるもの
建造中の旅客船収容人員50人以上で、甲板数が11以上のもののうち、総務省令で定めるもの

東京消防庁は、これらは甲種防火管理者の資格が必要だと案内しています(東京消防庁 防火管理者が必要な防火対象物と資格)。

条例で上乗せしている自治体がある

消防法の基準に当てはまらなくても、市町村の火災予防条例で対象を広げていることがあります。東京都の場合は東京都火災予防条例55条の3が4つの類型を足しています。原文は「次に掲げる防火対象物で令第一条の二第三項に定めるもの以外のもの(管理について権原が分かれているものにあつては、当該部分)の管理について権原を有する者は、法第八条第一項並びに令第二条、第三条(第一項第二号及び第三項を除く。)及び第三条の二の規定の例により、令第三条第一項第一号イからニまでのいずれかに該当する者のうちから防火管理者を定め、必要な業務を行わせなければならない。」です。

東京都火災予防条例55条の3による上乗せ4類型。危険物の指定数量1000倍以上、指定可燃物1500平方メートル以上、50台以上の屋内駐車場、地階に乗降場を有する停車場
東京都の上乗せ(出典 東京都火災予防条例55条の3)
号対象
1同一敷地内の屋外タンク貯蔵所又は屋内貯蔵所で、その貯蔵する危険物の数量の合計が指定数量の千倍以上のもの
2指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う防火対象物で、床面積の合計が千五百平方メートル以上のもの
3五十台以上の車両を収容する屋内駐車場
4令別表第一(十)項に掲げる車両の停車場のうち、地階に乗降場を有するもの

条例の上乗せは自治体ごとに違います。東京都以外の建物については、所在地の消防本部や消防署の案内を見てください。

同じ敷地に建物が2つ以上あるとき

消防法施行令2条の原文は「同一敷地内に管理について権原を有する者が同一の者である別表第一に掲げる防火対象物が二以上あるときは、それらの防火対象物は、法第八条第一項の規定の適用については、一の防火対象物とみなす。」です。棟が分かれていても、権原者が同じなら収容人員を合算して判定します。1棟ずつでは線に届かないのに、合計すると越えることがあります。

同一敷地内に権原者が同じ建物が2つ以上あるときは1つの防火対象物とみなして収容人員を合算する
同じ敷地の建物は合算する(出典 消防法施行令2条)

甲種と乙種はどちらが要るか

対象になることが分かったら、次は資格の種類です。消防法施行令3条1項が甲種防火対象物と乙種防火対象物を分けていて、その分かれ目が延べ面積です。

甲種と乙種を分ける延べ面積。特定用途は300平方メートル未満なら乙種、非特定用途は500平方メートル未満なら乙種。それ以外は甲種
甲種と乙種を分けるのは延べ面積(出典 消防法施行令1条の2第3項・3条1項)

延べ面積の境目

令3条1項2号は、乙種でよい建物を次のように定めています。原文は「第一条の二第三項第一号ロ及びハに掲げる防火対象物で、延べ面積が、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては三百平方メートル未満、その他の防火対象物にあつては五百平方メートル未満のもの」です。

建物の区分延べ面積必要な資格
特定用途の建物(令1条の2第3項1号ロ)300平方メートル未満乙種でよい
特定用途の建物300平方メートル以上甲種
非特定用途の建物(同号ハ)500平方メートル未満乙種でよい
非特定用途の建物500平方メートル以上甲種
社会福祉施設等を含む建物(同号イ)面積を問わず甲種
工事中の建築物・建造中の旅客船(同項2号3号)面積を問わず甲種
東京都火災予防条例55条の3の4類型面積を問わず甲種

甲種の資格があれば、乙種で足りる建物の防火管理者にもなれます。迷ったときに甲種を取っておくと、転勤や異動で別の建物を担当することになっても使えます。

大きなビルの小さなテナントは乙種で足りる場合がある

建物全体が甲種防火対象物でも、テナントの区画が小さければ乙種でよいという定めがあります。消防法施行令3条3項と消防法施行規則2条の2の2です。規則2条の2の2の原文は「令第三条第三項の総務省令で定める防火対象物の部分は、前条第一項第二号イからハまでに掲げるものとする。」で、そこで挙げられているのは、その部分だけを1つの防火対象物とみなして数えると収容人員が10人・30人・50人の線に届かない部分です。

大きなビルの小さなテナントが乙種で足りる3つの条件
テナント部分が乙種でよい場合(出典 消防法施行令3条3項・同法施行規則2条の2の2)
  • 建物全体は甲種防火対象物である
  • その建物の管理について権原が分かれている
  • 自分の区画だけを1つの防火対象物とみなして数えると、収容人員が10人・30人・50人の線に届かない

この3つを満たせば、テナント側の防火管理者は乙種の資格でよいという扱いになります。ただし判断するのは消防署ですので、届け出る前に確かめてください。

該当する人が社内にいないとき

「管理的又は監督的な地位にある人」が現地にいない建物もあります。無人の共同住宅や、遠隔地から管理している物件です。消防法施行令3条2項はこの場合の読み替えを定めていて、「管理的又は監督的な地位にあるもの」を「防火管理上必要な業務を適切に遂行するために必要な権限及び知識を有するものとして総務省令で定める要件を満たすもの」と読み替えます。

要件は消防法施行規則2条の2第2項の3つです。

遠隔地の特例の3要件。必要な権限が付与されていること、業務の内容を明らかにした文書の交付を受けていること、建物の状況の説明を受けていること
遠隔地に勤務している場合などの読み替え(出典 消防法施行令3条2項・同法施行規則2条の2)
号要件
1防火管理上必要な業務を行う防火対象物の管理について権原を有する者から、防火管理上必要な業務を適切に遂行するために必要な権限が付与されていること
2管理権原者から、防火管理上必要な業務の内容を明らかにした文書を交付されており、かつ、当該内容について十分な知識を有していること
3管理権原者から、当該防火対象物の位置、構造及び設備の状況その他防火管理上必要な事項について説明を受けており、かつ、当該事項について十分な知識を有していること

同条1項は、この読み替えが使える防火対象物として、複数の建物の管理権原者が同一である場合の当該建物、権原が分かれていて小さな区画を含む建物、特定資産に該当する防火対象物又は不動産特定共同事業契約に係る不動産に該当する防火対象物を挙げています。

賃貸マンションやアパートで誰を選任するかという話は、3本目の記事「マンションの消防点検(部屋に入る理由・費用の負担)」でも触れています。

講習を受けなくても資格になる人がいる

防火管理者の資格は講習だけではありません。令3条1項1号のロ・ハ・ニと、ニを受けた消防法施行規則2条が、別のルートを並べています。

講習を受けなくても防火管理者の資格になる人の一覧。防災に関する学科の卒業者、消防職員、安全管理者、防火対象物点検資格者、危険物保安監督者、警察官、一級建築士、消防団員など
講習以外の資格ルート(出典 消防法施行令3条1項1号・同法施行規則2条)
根拠該当する人
令3条1項1号ロ大学又は高等専門学校において総務大臣の指定する防災に関する学科又は課程を修めて卒業した者で、1年以上防火管理の実務経験を有するもの
令3条1項1号ハ市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に1年以上あった者
規則2条1号労働安全衛生法11条1項に規定する安全管理者として選任された者
規則2条1号の2防火対象物点検資格者の免状の交付を受けている者
規則2条2号危険物保安監督者として選任された者で、甲種危険物取扱者免状の交付を受けているもの
規則2条3号鉱山保安法により保安管理者として選任された者(保安統括者を含む)
規則2条4号国若しくは都道府県の消防の事務に従事する職員で、1年以上管理的又は監督的な職にあった者
規則2条5号警察官又はこれに準ずる警察職員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者
規則2条6号建築主事、建築副主事(一級建築士試験に合格した者に限る)又は一級建築士の資格を有する者で、1年以上防火管理の実務経験を有するもの
規則2条7号市町村の消防団員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者
規則2条8号前各号に掲げる者に準ずるものとして消防庁長官が定める者

東京消防庁は、これらに当たる人が資格を証明するために出す書面まで一覧にしています。たとえば消防職員は「消防士長以上の職又は技術吏員である係長以上の職に1年以上あった者」、警察官は「巡査部長以上の階級」、消防団員は「班長以上の階級に3年以上」と具体的な役職まで示されています(東京消防庁 よくある質問 保有資格や職務経験等により資格を取得できる方)。社内に該当者がいないか、先に確かめる価値はあります。

講習の受け方と受講料

該当者がいなければ講習を受けます。講習の時間と科目は消防法施行規則2条の3が定めていて、都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長、または総務大臣の登録を受けた法人が実施します。

講習の時間。甲種新規はおおむね10時間、乙種はおおむね5時間、甲種再講習はおおむね2時間、甲種新規と防災管理新規を併せるとおおむね12時間
講習の時間は法令で決まっている(出典 消防法施行規則2条の3)

講習の時間と科目

規則2条の3第2項は、甲種防火管理新規講習について「その講習時間はおおむね十時間とする」と定め、科目を6つ挙げています。

講習時間科目
甲種防火管理新規講習おおむね10時間防火管理の意義及び制度/火気の使用又は取扱いに関する監督/消防用設備等の点検及び整備並びに避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理/消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練/防火管理上必要な教育/消防計画の作成
乙種防火管理講習おおむね5時間上の6科目に係る基礎的な知識及び技能
甲種防火管理再講習おおむね2時間おおむね過去5年間における防火管理に関する法令の改正の概要/火災事例等の研究
甲種防火管理新規講習と防災管理新規講習を併せて実施する場合おおむね12時間2つの新規講習を合わせたもの

修了した人には、規則別記様式第1号による修了証が交付されます。

受講料(日本防火・防災協会)

登録講習機関のうち全国で講習を開いているのが一般財団法人日本防火・防災協会です。同協会が公表している受講料は次のとおりです(日本防火・防災協会 防火・防災管理講習・消費税10%込み)。

日本防火・防災協会の受講料。甲種防火管理新規講習8000円、乙種7000円、防災管理新規7000円、防火・防災管理新規10000円、甲種再講習7000円、防火・防災管理再講習7500円
受講料(出典 一般財団法人日本防火・防災協会)
講習会名対面型オンライン型受講料(税込)
甲種防火管理新規講習連続2日間受講時間10時間・12日間8,000円(うち消費税額等727円)
乙種防火管理講習1日間受講時間5時間・7日間7,000円(うち636円)
防災管理新規講習1日間受講時間5時間・7日間7,000円(うち636円)
防火・防災管理新規講習(甲種防火管理新規+防災管理新規)連続2日間受講時間12時間・14日間10,000円(うち909円)
甲種防火管理再講習半日受講時間2時間・5日間7,000円(うち636円)
防火・防災管理再講習(甲種防火管理+防災管理)半日受講時間3時間・5日間7,500円(うち681円)

同協会は、この表に添えて「受講すべき講習の種類については、事業所を管轄する消防本部(局)、消防署にご確認ください。対象物の用途、規模、収容人員、管理権原の範囲等により異なります。」と書いています。また、同じページに「令和9年度実施からの防火・防災管理講習の受講料を改定します」という告知が出ています。申し込む時期によって金額が変わる可能性があります。

東京消防庁の講習は受講料でなく教材費

東京消防庁が実施する講習は、受講料ではなく教材費がかかる形になっています。同庁は「講習にかかる費用は、教材費となります。」と明記しています(東京消防庁 よくある質問 講習費用はいくら?)。

東京消防庁の講習の教材費。令和7年4月の講習から防火・防災管理新規7000円、防災管理新規3000円、乙種2500円、再講習2200円
東京消防庁の教材費(出典 東京消防庁 よくある質問)
講習種別令和7年3月の講習まで令和7年4月の講習から
防火・防災管理新規講習6,000円7,000円
防災管理新規講習2,300円3,000円
乙種防火管理講習1,900円2,500円
防火・防災管理再講習1,600円2,200円
甲種防火管理再講習1,600円2,200円

教材は東京防災救急協会のオンラインショップで事前に購入する形で、オンラインで受講する場合は別に配送代がかかると案内されています。

なお、同庁の講習一覧に並んでいるのは「防火・防災管理新規講習」「防災管理新規講習」「乙種防火管理講習」「防火・防災管理再講習」「甲種防火管理再講習」の5種類で、甲種防火管理新規講習の単独開催は一覧にありません(東京消防庁 防火管理講習・防災管理講習)。申請条件も「防火管理者や防災管理者として東京都内(稲城市を除く)の建物や事業所に選任される方に限り申請できます。東京都以外で選任される方や受講義務のない方は申請できません。」と書かれています。

2日間の講習で何をやるか

東京消防庁が公開している時間割から、中身の見当がつきます(東京消防庁 よくある質問 講習の時間割について・令和6年6月更新)。防火・防災管理新規講習を対面で受ける場合です。

東京消防庁の防火・防災管理新規講習の時間割。1日目は意義及び制度と火気管理と施設及び設備の維持管理、2日目は消防計画と訓練及び教育と効果測定
2日間の講習の中身(出典 東京消防庁 よくある質問)
日時間講習科目等
1日目9:00から9:10ガイダンス
1日目9:10から11:45防火管理及び防災管理の意義及び制度
1日目12:45から14:50火気管理
1日目15:00から16:30施設及び設備の維持管理
2日目9:10から10:00施設及び設備の維持管理
2日目10:10から16:10防火管理及び防災管理に係る消防計画、訓練及び教育(実技を含む)
2日目16:10から17:00効果測定及び修了証交付等

2日目の大半が消防計画と訓練にあてられています。講習の山場は、条文を覚えることではなく、自分の建物の消防計画を作れるようになることに置かれています。

対面型とオンライン型の違い。対面は甲種新規が連続2日間、オンラインは10時間を12日間に分けて受講できる
対面とオンラインの違い(出典 日本防火・防災協会/東京消防庁)

修了証そのものに期限はない

よくある誤解がここです。日本防火・防災協会は「防火・防災管理修了証そのものには有効期限や失効期限はありません。ただし、法令により、防火管理者・防災管理者として選任されている方は、定められた期間内に再講習を受講する必要があります。」と書いています(日本防火・防災協会 再講習について)。

防火・防災管理修了証そのものには有効期限や失効期限はない。期限が問題になるのは再講習の義務がある人だけ
修了証に期限はない(出典 日本防火・防災協会)

再講習が要るのは一部の人だけ

規則2条の3第1項は、甲種防火管理再講習の対象を「令第四条の二の二第一項第一号の防火対象物の防火管理者(前条の防火対象物の部分に係る防火管理者を除く。)」と書いています。令4条の2の2第1号は「収容人員が三百人以上のもの」で、特定用途の防火対象物に限られます。

甲種防火管理再講習の義務があるのは、収容人員300人以上の特定用途の建物で防火管理者に選任されている人
再講習が必要なのは一部だけ(出典 消防法施行規則2条の3第1項・同法施行令4条の2の2第1号)

東京消防庁も「甲種防火管理新規講習修了者で、収容人員が300名以上の特定用途の甲種防火対象物で防火管理者として選任されている方に限ります。(小規模事業所等で防火管理者に選任されている者を除く。)」と書いています(東京消防庁 よくある質問 再講習の受講期限について)。

再講習の期限

期限は甲種防火管理再講習について定める件(平成16年消防庁告示第2号)が定めています。原文は次のとおりです。

「一 …防火管理者に定められた日の四年前までに講習(…甲種防火管理新規講習又は再講習をいう。…)の課程を修了した防火管理者にあっては防火管理者に定められた日から一年以内に、それ以外の防火管理者にあっては最後に講習の課程を修了した日以後における最初の四月一日から五年以内に再講習の課程…を修了しなければならない。二 前号の防火管理者は、直近の再講習の課程を修了した日以後における最初の四月一日から五年以内に再講習の課程を修了しなければならない。当該再講習の課程を修了した日以降においても同様とする。」

再講習の期限の2パターン。選任された日の4年前までに修了していた場合は選任日から1年以内、それ以外は最後に修了した日以後の最初の4月1日から5年以内
再講習の期限(出典 平成16年消防庁告示第2号)
場合期限
防火管理者に定められた日の4年前までに講習を修了していた定められた日から1年以内
それ以外最後に講習の課程を修了した日以後における最初の4月1日から5年以内
その後直近の再講習を修了した日以後における最初の4月1日から5年以内ごとに繰り返す

古い修了証を持っている人を新しく選任すると、選任してから1年で再講習の期限が来ます。人事で引き継ぐときに見落としやすいところです。

選任と届出の進め方

ここまでで、対象かどうか、甲種か乙種か、誰を選ぶかが決まります。あとは書類です。

選任から届出までの6段階。収容人員を数える、対象か判定する、甲種か乙種か決める、資格を取る、管理的又は監督的な地位の人を選ぶ、選任届と消防計画の届出を出す
選任から届出までの流れ(出典 消防法8条・同法施行令1条の2・3条・3条の2・同法施行規則3条・3条の2)

出す書類は2通

1通目が選任(解任)届出書です。消防法8条2項が「前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。」と定め、消防法施行規則3条の2が「別記様式第一号の二の二による届出書によつてしなければならない」「前項の届出書には、選任の届出にあつては、防火管理者の資格を証する書面を添えなければならない」と続きます。

2通目が消防計画作成(変更)届出書です。消防法施行令3条の2第1項が「防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。」と定め、消防法施行規則3条1項が「別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長…又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。」と続きます。

出す書類は2通。選任届出書は別記様式第1号の2の2で管理権原者が出す。消防計画作成届出書は別記様式第1号の2で防火管理者が出す
出す書類は2通(出典 消防法8条2項・同法施行規則3条・3条の2)
届出書様式出す人添えるもの根拠
防火管理者選任(解任)届出書別記様式第1号の2の2管理権原者資格を証する書面法8条2項・規則3条の2
消防計画作成(変更)届出書別記様式第1号の2防火管理者消防計画そのもの令3条の2第1項・規則3条1項

出す人が違うところに注意してください。選任届は管理権原者、消防計画の届出は防火管理者の名前で出します。

選任届に書く欄

東京消防庁が公開している様式(防火・防災管理者選任(解任)届出書 様式PDF)から、記入する欄を並べます。他の自治体でも消防法施行規則の別記様式が元になっているので、おおむね同じです。

選任届の記入欄。届出者は管理権原者の住所と氏名と電話番号、建物は所在地と名称と管理権原と用途と令別表第一の項と収容人員と種別、防火管理者は氏名と住所と選任年月日と職務上の地位と資格
選任届に書く欄(出典 東京消防庁 様式PDF)
区分記入する欄
届出者管理権原者の住所、氏名(法人の場合は名称及び代表者氏名)、電話番号
建物所在地、名称、管理権原(単一権原か複数権原か)、複数権原の場合に管理権原に属する部分の名称、用途、令別表第一の項、収容人員、種別(甲種か乙種か)
防火管理者氏名(フリガナ)、住所、選任年月日、職務上の地位
資格講習の種別(甲種の新規か再講習か、乙種か)、講習機関、修了年月日。講習以外の場合は令3条1項の号、規則2条の号
解任のとき氏名、解任年月日、解任理由

様式の備考には「この用紙の大きさは、日本産業規格A4とすること。」「消防法施行令第1条の2第3項第2号及び第3号の防火対象物にあってはその他必要な事項の欄に工事が完了した際の防火対象物の規模を記入すること。」「消防法施行令第3条第2項又は同令第47条括弧書を適用するものにあってはその他必要な事項の欄に管理的又は監督的な地位にある者のいずれもが防火及び防災管理上必要な業務を適切に遂行することができない理由を記入すること。」とあります。先に触れた遠隔地の特例を使うときは、その理由をこの欄に書くことになります。

消防計画の届出書に書く欄

もう1通は書く欄が少なく、本文は「別添のとおり、防火管理に係る消防計画を作成(変更)したので届け出ます。」です(消防計画作成(変更)届出書 様式PDF)。中身の計画書は別添で付けます。

消防計画の届出書の記入欄。届出者は防火管理者の住所と氏名、管理権原者の氏名、建物の所在地と名称、複数権原の場合の部分の名称、用途と令別表第一の項
消防計画の届出書に書く欄(出典 東京消防庁 様式PDF)
区分記入する欄
届出者防火管理者の住所、氏名
管理権原者氏名(法人の場合は名称及び代表者氏名)
建物所在地、名称(変更の場合は変更後の名称)
複数権原のとき管理権原に属する部分の名称(変更の場合は変更後の名称)
用途用途、令別表第一の項(変更の場合は変更後の用途)
その他その他必要な事項(変更の場合は主要な変更事項)

窓口、郵送、電子申請

出し方は3つあります。東京消防庁の案内を例にすると次のようになります(東京消防庁 防火・防災管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書)。

届出の出し方3つ。窓口は届出書1部と資格を証する書面、郵送は写しと返信用封筒、電子申請は資格を証する書面のデータ
出し方は3つ(出典 東京消防庁)
出し方用意するもの
窓口届出書1部(控えが必要な場合は2部)、資格を証する書面(写しでも可)。消防計画は届出書および消防計画1部。受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分まで
郵送届出書、資格を証する書面の写し、控えが必要な場合は宛名を記入し返信用切手を貼付した返信用封筒。担当者の名前と連絡先が分かるようにする
電子申請選任(解任)の届出も消防計画の作成(変更)の届出も電子申請ができる。資格を証する書面のデータを用意して始める

電子申請の入口は自治体ごとに違います(東京都の場合は東京消防庁 電子申請)。管轄の消防署は消防署一覧のようなページから調べられます。

消防計画には何を書くのか

選任と並んで重い宿題がこちらです。消防法施行規則3条1項1号が、消防計画に定める事項をイからヲまで12個挙げています。条文は「おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し」と書いていて、管理権原者の指示を受けて作る点も決まっています。

消防計画に定める12項目。自衛消防の組織、自主検査、設備の点検及び整備、避難施設の維持管理、防火上の構造の維持管理、定員の遵守、教育、訓練、災害時の消火活動と避難誘導、消防機関との連絡、工事中の火気の監督、その他
消防計画に定める12項目(出典 消防法施行規則3条1項1号)

12の項目

号定める事項
イ自衛消防の組織に関すること
ロ防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること
ハ消防用設備等又は法第十七条第三項に規定する特殊消防用設備等の点検及び整備に関すること
ニ避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること
ホ防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること
ヘ定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること
ト防火管理上必要な教育に関すること
チ消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること
リ火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること
ヌ防火管理についての消防機関との連絡に関すること
ル増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取扱いの監督に関すること
ヲイからルまでに掲げるもののほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項

ハの「消防用設備等の点検及び整備」は、消防設備点検そのものです。誰に頼んでいるか、いつやるかを消防計画に書きます。点検の周期や費用については「消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)」と「消防設備点検の費用と業者の探し方」にまとめています。

委託しているときと、権原が分かれているとき

同条2項と3項が、2つの書き足しを求めています。

業務の一部を委託している場合は受託者の氏名と住所と業務の範囲及び方法を書く。権原が分かれている場合は権原の範囲を書く
委託と権原の範囲(出典 消防法施行規則3条2項3項)
場合消防計画に足すこと
防火管理上必要な業務の一部を、関係者及び関係者に雇用されている者以外の者に委託している受託者の氏名及び住所(法人にあっては名称及び主たる事務所の所在地)並びに受託者の行う防火管理上必要な業務の範囲及び方法(消防法17条の3の3の点検は除く)
管理について権原が分かれている当該防火対象物の当該権原の範囲

2つ目は、テナントビルではたいてい出てきます。どこまでが自分の受け持ちで、どこからが共用部分なのかを書いておくという意味です。

地域によって足す項目がある

同条4項から9項までが、地震に備える地域の追加項目を定めています。いずれも対象になるのは一定の施設に限られ、指定を受けた日から6月以内に定めることとされています。

地震防災対策強化地域は6項目、南海トラフ地震防災対策推進地域と日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域は3項目を消防計画に足す
地域によって足す項目(出典 消防法施行規則3条4項から9項まで)
地域足す事項
地震防災対策強化地域警戒宣言が発せられた場合における自衛消防の組織/地震予知情報及び警戒宣言の伝達/警戒宣言が発せられた場合における避難誘導/施設及び設備の点検及び整備その他の応急対策/大規模な地震に係る防災訓練の実施/被害の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報
南海トラフ地震防災対策推進地域南海トラフ地震に伴い発生する津波からの円滑な避難の確保/防災訓練の実施/被害の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域津波からの円滑な避難の確保/防災訓練の実施/被害の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報

訓練は年2回以上、しかも事前に通報する

見落とされやすいのが同条10項と11項です。原文は次のとおりです。

「令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない。」

「前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。」

特定用途の建物の防火管理者は消火訓練と避難訓練を年2回以上実施し、あらかじめ消防機関に通報する
訓練は年2回以上、事前に通報(出典 消防法施行規則3条10項11項)

対象は特定用途の建物です。非特定用途だけの建物には回数の定めがなく、消防計画に定めた頻度で実施します。訓練をやっていても、事前の通報を忘れているケースは少なくありません。

実際の消防計画はどんな形か

条文だけでは中身が見えないので、東京消防庁が公開している作成例を見ます。小規模用の作成例の1ページ目は作成チェック表になっていて、次の19項目が並んでいます(東京消防庁 小規模用消防計画 作成例)。

東京消防庁の小規模用消防計画の19項目と別表別紙の一覧
小規模用の消防計画に並ぶ項目(出典 東京消防庁 小規模用消防計画 作成例)
番号作成する内容
1から5目的と適用範囲/防火管理業務の一部委託/管理権原者の責任及び防火管理者の業務/火災予防上の自主検査/法定点検等及び報告
6から10従業員が守るべき事項/放火防止対策/工事等における安全対策/防火・防災教育/消防機関への連絡・報告
11から15自衛消防隊の編成及び任務等/訓練/震災対策/大規模テロ等に伴う災害対策/大雨・強風対策
16から19受傷事故等に係る自衛消防対策/火山噴火に伴う降灰時の安全対策/その他防火管理上必要な事項/避難経路図の掲示

それぞれの項目には、消防法8条1項で必要なもの、東京都震災対策条例10条で必要なもの、火災予防条例55条の4に基づく自衛消防対策のもの、該当する場合だけ定めるもの、統括防火管理義務対象物に該当する場合に定めるもの、という印が付いています。自分の建物に当てはまる印だけを埋めていけば計画ができる形です。

さらに別表と別紙が付いています。

別表・別紙内容
別表1防火・防災管理業務の一部委託状況表
別表2自主検査チェック表(日常)と(定期)
別表3家具・じゅう器等の転倒・落下・移動防止対策チェック表
別表4一斉帰宅抑制における従業員等のための備蓄
別表5震災時における時差退社計画
別表6施設の安全点検のためのチェックリスト
別紙1防火・防災の手引き(新入社員用)
別紙2防火・防災の手引き(従業員用)

本文の書き出しも具体的です。1の目的と適用範囲は「この計画は、火災を予防するともに、火災、地震その他の災害等による人命の安全及び被害の軽減を図ることを目的とし、管理権原の及ぶ  部分に勤務等する者は、この計画を遵守する。」という文の空欄を埋める形になっています。3の管理権原者の責任は「管理権原が及ぶ範囲の防火管理業務について、全ての責任を持つ。」「防火・防災上の建物構造の不備や消防用設備等・特殊消防用設備等の不備欠陥が発見された場合、速やかに改修する。」と書かれています。

建物の型に合った作成例を使う

作成例は1種類ではありません。東京消防庁 消防計画の作成には次の型が置かれています。

消防計画の作成例の種類。大規模用、中規模用、小規模用、小規模テナント用、自らの事業所を持たない建物所有者用、共同住宅用、一時使用店舗等
建物の型に合った作成例を使う(出典 東京消防庁 消防計画の作成)
作成例向いている建物
大規模用・中規模用・小規模用規模に応じた一般の建物
小規模テナント用ビルに入っている小さな店舗や事務所
自らの事業所を持たない建物所有者用貸すだけで自分では使っていないオーナー
共同住宅用賃貸や分譲の共同住宅
一時使用店舗等の消防計画催事などで一時的に使う店舗
防火・防災管理業務実施計画書業務の実施要領をまとめるもの

どの規模の作成例を使えばよいかを調べる「消防計画判定チェッカー」と、用途や規模や収容人員を入力していくと計画ができる作成支援ツールも公開されています。日本防火・防災協会も消防計画の様式集を公開していて、届出書の様式や中規模用の消防計画、別表10種、訓練の実施要領や放送文の例が手に入ります。

ここで作る計画は、置いておく書類ではありません。訓練の回数も、自主検査の担当も、避難経路図をどこに貼るかも、ここに書いたとおりに運用することが求められます。

統括防火管理者が要るビル

1棟に複数の管理権原者がいるビルでは、各自が防火管理者を選ぶだけでは足りません。建物全体をまとめる人が要ります。それが統括防火管理者で、根拠は消防法8条の2です。

1項の原文は「高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。…)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街…でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(…「統括防火管理者」という。)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。」です。

対象になる建物

政令で定める防火対象物は消防法施行令3条の3にあります。前提は、管理について権原が分かれていることです。

統括防火管理者が必要になる建物。社会福祉施設等を含む建物は地階を除く3階以上かつ10人以上、特定用途は3階以上かつ30人以上、非特定の複合用途は5階以上かつ50人以上、準地下街、高層建築物、指定された地下街
統括防火管理者が必要になる建物(出典 消防法8条の2第1項・同法施行令3条の3)
号建物階数収容人員
1令別表第一(6)項ロ及び(16)項イ((6)項ロの用途の部分が存するものに限る)地階を除く階数が3以上10人以上
2(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ・ハ・ニ、(9)項イ、(16)項イ((6)項ロの部分を除く)地階を除く階数が3以上30人以上
3(16)項ロ(非特定用途の複合用途)地階を除く階数が5以上50人以上
4(16の3)項(準地下街)定めなし定めなし
法8条の2高さ31メートルを超える高層建築物定めなし定めなし
法8条の2地下街のうち消防長又は消防署長が指定するもの定めなし定めなし

条文が「協議して定め」と書いているところが重い部分です。1社の判断では決められず、全ての管理権原者が話し合って1人を選びます。

統括防火管理者になれる人

消防法施行令4条が資格を定めています。原則は甲種防火管理者です。ただし、高層建築物や令3条の3第2号から第4号までの建物、地下街のうち、延べ面積が特定用途で300平方メートル未満、非特定用途で500平方メートル未満といった小さいものについては、乙種でもよいとされています。社会福祉施設等を含む令3条の3第1号の建物は、この緩和の列挙に入っていません。

あわせて、消防法施行規則3条の3の3つの要件を満たす必要があります。

統括防火管理者に求められる資格と3つの要件。必要な権限の付与、業務の内容の説明と知識、建物の状況の説明と知識
資格と3要件の両方が要る(出典 消防法施行令4条・同法施行規則3条の3)
号要件
1防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行う防火対象物の管理について権原を有する者から、それぞれが有する権限のうち、全体についての防火管理上必要な業務を適切に遂行するために必要な権限が付与されていること
2管理権原者から、全体についての防火管理上必要な業務の内容について説明を受けており、かつ、当該内容について十分な知識を有していること
3管理権原者から、当該防火対象物の位置、構造及び設備の状況その他全体についての防火管理上必要な事項について説明を受けており、かつ、当該事項について十分な知識を有していること

全体についての消防計画

統括防火管理者の仕事の中心が、建物全体の消防計画です。消防法施行令4条の2が作成と届出を定め、消防法施行規則4条1項が定める事項を7つ挙げています。作成にあたっては管理権原者の確認を受け、別記様式第1号の2の2の2で届け出ます。

全体についての消防計画に定める7事項。権原の範囲、委託先、訓練の定期的な実施、避難施設の維持管理、災害時の消火活動と通報連絡と避難誘導、消防隊への情報提供と誘導、その他
全体についての消防計画の7事項(出典 消防法施行令4条の2・同法施行規則4条1項)
号定める事項
1防火対象物の管理について権原を有する者の当該権原の範囲に関すること
2全体についての防火管理上必要な業務の一部が関係者及び関係者に雇用されている者以外の者に委託されている場合の、受託者の氏名及び住所並びに業務の範囲及び方法に関すること
3全体についての消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練その他の訓練の定期的な実施に関すること
4廊下、階段、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること
5火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること
6火災の際の消防隊に対する当該防火対象物の構造その他必要な情報の提供及び消防隊の誘導に関すること
7前各号に掲げるもののほか、防火対象物の全体についての防火管理に関し必要な事項

6号は、各テナントの計画にはない項目です。建物全体の構造を消防隊に伝えて誘導する役目は、まとめ役にしかできません。

各テナントの計画は全体の計画に合わせる

法8条の2第3項の原文は「前条第一項の規定により前項に規定する防火管理者が作成する消防計画は、第一項の規定により統括防火管理者が作成する防火対象物の全体についての消防計画に適合するものでなければならない。」です。テナント側の計画を作るときは、先に全体の計画を見せてもらう必要があります。

同条2項は指示権を定めています。原文は「統括防火管理者は、…必要があると認めるときは、同項の権原を有する者が前条第一項の規定によりその権原に属する当該防火対象物の部分ごとに定めた同項の防火管理者に対し、当該業務の実施のために必要な措置を講ずることを指示することができる。」です。東京消防庁は、共用部分の転倒や落下の危険がある物件や避難に支障のある物件の撤去、建物全体の訓練への不参加者に参加を促すことを例に挙げています。

各テナントの消防計画は全体についての消防計画に適合しなければならない。統括防火管理者には必要な措置を指示する権限がある
全体の計画と各テナントの計画の関係(出典 消防法8条の2第2項3項)

届出と、テナントが入れ替わったとき

届出は消防法施行規則4条の2により別記様式第1号の2の2の2の2で行い、選任の届出には資格を証する書面を添えます。東京消防庁は、あわせて添える書類を4つ挙げています(東京消防庁 統括防火・防災管理者制度について)。

統括の届出に添える書類4つ。選任届出書と管理権原者一覧、協議の実施を証する書類、管理権原者一覧、要件を証する書類
統括の届出に添える書類(出典 東京消防庁)
番号書類
1統括防火・防災管理者選任(解任)届出書。連名で届け出る場合は「別紙のとおり」と記入し、主要な者を記入する場合も管理権原者一覧を添付する
2協議の実施を証する書類。契約書、建物管理規約、協議の結果(議事要旨)などの任意の様式でよい
3管理権原者一覧
4統括防火・防災管理者の資格を有する者であるための要件を証する書類

同庁は、テナントの入れ替わりについて「統括防火・防災管理者の届出は全ての管理権原者(建物所有者及び全テナント)に義務付けられているため、統括防火・防災管理者に変更がなくても、管理権原者が変更(新規テナントが入居等)した場合は、統括防火・防災管理者選任届出および全体についての消防計画の届出が必要となります。(テナントの退去時及び法人の代表者が変更になった場合、届出は不要です。)」と書いています。

また「統括防火・防災管理者が選任されない場合は、既に共同防火管理協議事項を届出していても消防法第8条の2違反となります。」とも書かれています。制度が変わる前の共同防火管理の届出が残っているだけの建物は、出し直しが要ります。様式は統括防火・防災管理者選任(解任)届出書と全体についての消防計画作成(変更)届出書のページから入手できます。

選任しなかったらどうなるか

いきなり罰金になるわけではありません。順番があります。

選任していないときの6段階。立入検査、警告と指導、選任命令と措置命令、命令違反の罰則、使用停止命令、使用停止命令違反の罰則
決めていないときに起きること(出典 消防法5条・5条の2・8条・39条の2の2・41条・42条・45条)

命令が先に出る

消防法8条3項が選任命令、4項が措置命令です。3項の原文は「消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。」、4項の原文は「…防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。」です。

同条5項が消防法5条3項と4項を準用していて、命令をしたときは「標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。」とされています。標識は建物やその場所に設置することができ、所有者、管理者又は占有者は設置を拒んだり妨げたりしてはならないと書かれています。

罰則の一覧

罰則の一覧。選任命令違反は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、措置命令違反は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、届出を怠ると30万円以下の罰金又は拘留、使用停止命令違反は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
罰則の一覧(出典 消防法39条の2の2・41条・42条・44条)
条何をしたとき法定刑
法42条1項1号防火管理者の選任命令(法8条3項)に違反した6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
法41条1項2号防火管理業務の措置命令(法8条4項)に違反した1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
法44条8号選任又は解任の届出(法8条2項)を怠った30万円以下の罰金又は拘留
法39条の2の2使用の禁止、停止又は制限の命令(法5条の2第1項)に違反した3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金

41条も42条も、2項で「情状により拘禁刑及び罰金を併科することができる。」と定めています。「拘禁刑」という言い方は、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が2025年6月1日に施行されたことによるものです。それ以前の条文では「懲役」と書かれていました。古い解説ページには今も「懲役」と書かれていることがあります。

会社にも罰金がかかる場合

消防法45条が両罰規定です。原文は「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。」です。

両罰規定の範囲。使用停止命令違反は法人に1億円以下、選任命令違反と措置命令違反は各本条の罰金刑、届出を怠った場合は両罰の列挙に入っていない
会社にも罰金がかかる場合(出典 消防法45条)
違反法人への罰金
使用の禁止、停止又は制限の命令の違反(39条の2の2)1億円以下の罰金刑(45条1号)
選任命令の違反(42条1項1号)各本条の罰金刑(45条3号)
措置命令の違反(41条1項2号)各本条の罰金刑(45条3号)
届出を怠った(44条8号)45条3号の列挙に入っていない

45条3号が列挙しているのは、44条については「第一号、第三号、第十一号、第十二号若しくは第二十二号」です。8号は入っていません。届出漏れは行為者の側の問題として扱われる形になっています。

命令に従わないと使用停止命令へ進む

消防法5条の2第1項は、8条3項と4項の命令が履行されない場合などに、権原を有する関係者に対して建物の使用の禁止、停止又は制限を命ずることができると定めています。1号の原文には「…第八条第三項若しくは第四項、第八条の二第五項若しくは第六項…の規定により必要な措置が命ぜられたにもかかわらず、その措置が履行されず、履行されても十分でなく、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行されても当該期限までに完了する見込みがないため、引き続き、火災の予防に危険であると認める場合…」とあります。

この使用停止命令に違反すると、39条の2の2により3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金がかかります。

なお、統括防火管理者についての選任命令(法8条の2第5項)と措置命令(同条6項)は、罰則の条文(41条・42条・44条)の各号を確かめた範囲では、直接これを引いている号が見当たりません。ただし5条の2第1項が8条の2第5項と6項を明記していますので、使用停止命令の前提にはなります。

公表制度の対象は設備の未設置

「選任しないと公表される」と書かれていることがありますが、全国共通の違反対象物の公表制度は対象が違います。令和7年版消防白書「5.立入検査と違反是正」の原文は「違反対象物の公表制度は、特定防火対象物で屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備の設置義務があるにもかかわらず未設置であるもの等について、市町村の条例に基づき、市町村等のホームページに公表する制度である。」です。

同じページの脚注は「重大違反対象物」を「屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備を設置しなければならない建物で、これらの消防用設備等のいずれかが設置されていないもの又は本来の機能が損なわれている状態にあるもの」と定義しています。実施状況は消防庁のページで公開されています。

違反対象物の公表制度の対象は屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備の未設置。防火管理者の未選任そのものではない
公表制度の対象(出典 令和7年版消防白書・東京都火災予防条例64条の3)

ただし、条例の書きぶりはこれより広いことがあります。東京都火災予防条例64条の3は「消防総監は、防火対象物の設備、管理等の状況が法、令及びこの条例の規定に違反する場合は、都民が当該防火対象物を利用する際の判断に資するため、その旨を公表することができる。」と定め、対象と違反の内容と手続は規則で定めるとしています。自分の所在地でどこまでが公表の対象になるかは、所轄の消防署に確かめてください。

実際に命令が出た件数

では、どのくらい命令が出ているのか。令和7年版消防白書によると、令和6年度に全国の消防機関が行った立入検査は75万9,676回でした(資料1-1-56)。そのうち命令に至ったのは441件で、防火管理に関する命令は13件です(資料1-1-57)。

令和6年度の立入検査は759676回、防火管理に関する命令は13件。内訳は防火管理者選任命令7件、防火管理業務適正執行命令5件、統括防火管理者選任命令1件
命令が出た件数(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-56・1-1-57・1-1-59)
命令の種類命令件数是正件数
防火対象物に関する命令(法5条・5条の2・5条の3)208207
防火管理に関する命令(法8条・8条の2)1312
消防用設備等に関する措置命令(法17条の4)220142
合計441361

13件の内訳は、防火管理者選任命令が7件、防火管理業務適正執行命令が5件、統括防火管理者選任命令が1件、統括防火管理業務適正執行命令が0件です(資料1-1-59)。

命令が出た13件の用途の内訳。飲食店と特定複合用途防火対象物と非特定複合用途防火対象物
命令が出たのはどんな建物か(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-59)
用途防火管理者選任命令防火管理業務適正執行命令統括防火管理者選任命令
飲食店220
特定複合用途防火対象物431
非特定複合用途防火対象物100
合計751

数字だけを見ると命令は少ないのですが、これは命令に至る前に警告や指導で是正されているためです。白書も「消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている」と書いています。命令の件数が少ないことは、放置してよいという意味にはなりません。火災が起きたときの責任は、行政処分とは別の話として問われます。

ビルのエレベーターホールで書類を見ながら打ち合わせをする担当者と作業着の人(イメージ)
立入検査では消防計画や届出の控えが確認される(イメージ)

全国でどれだけ選任されているか

令和7年版消防白書「3.防火管理制度」が、全国の実施状況を公表しています。令和7年3月31日現在の数字です。

全国の防火管理実施状況。義務対象1059384件のうち選任895684件で84.5パーセント、消防計画の作成847761件で80.0パーセント
全国の選任率(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-52)
項目件数割合
防火管理実施義務防火対象物数1,059,384件(母数)
防火管理者を選任している防火対象物数895,684件84.5%
防火管理に係る消防計画を作成している防火対象物数847,761件80.0%

参考までに、全国の防火対象物の数は430万869件です(同白書「2.防火対象物」)。防火管理者の選任義務があるのは、そのうち約4分の1にあたります。

用途で見ると差が大きい

資料1-1-52は用途別の内訳まで出しています。選任率が低い順に並べると、雑居ビルが目立ちます。

用途別の選任率。特定複合用途74.6パーセント、非特定複合用途75.7パーセント、駐車場80.4パーセント、倉庫81.4パーセント、共同住宅82.4パーセント、飲食店83.5パーセント、事務所84.4パーセント、病院93.1パーセント、幼稚園98.1パーセント
選任率が低いのは雑居ビル(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-52)
義務件数の多い用途の選任率と計画作成率の一覧
件数で見るとどこに漏れがあるか(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-52)
用途義務件数選任している選任率計画を作成している作成率
特定複合用途防火対象物211,865158,15174.6%145,50768.7%
共同住宅等172,388142,09482.4%132,82677.1%
百貨店等106,94793,91987.8%89,92084.1%
事務所等99,45083,92084.4%79,46779.9%
飲食店72,36360,43883.5%57,08278.9%
公会堂等59,25350,80485.7%48,31081.5%
老人デイサービスセンター等51,87949,74895.9%48,65593.8%
特別養護老人ホーム等45,99344,09695.9%43,20693.9%
非特定複合用途防火対象物40,84030,92475.7%28,39469.5%
学校40,41738,76395.9%37,71193.3%
工場等36,89032,99189.4%31,20884.6%
旅館等32,04129,51292.1%28,56989.2%
神社・寺院等23,69020,45586.3%19,03980.4%
病院等21,00019,55893.1%19,04890.7%
倉庫10,7588,75381.4%8,27176.9%
幼稚園等8,3438,18298.1%8,04096.4%

資料の備考には「防火対象物の管理権原者が複数であるときは、その全てが防火管理者の選任又は防火管理に係る消防計画の作成をしている場合のみ計上する。( )内は、部分的に選任又は作成されている防火対象物の数値である。」とあります。特定複合用途防火対象物では、この括弧内が28,818件で13.6%です。つまり、テナントの一部だけが選任していて全部はそろっていない建物が、1割以上あることになります。

この数字の読み方は素直です。逃げ遅れが起きやすいのは雑居ビルなのに、そこがいちばん整っていないということです。1つでも欠けると建物全体として数に入らない集計なので、自分のテナントが出していないだけで、ビル全体が未達の側に入ります。

統括防火管理者はもっと低い

資料1-1-53の数字です。

統括防火管理の実施状況。義務対象90359件のうち選任63468件で70.2パーセント、全体についての消防計画61718件で68.3パーセント
統括防火管理者の選任率(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-53)
項目件数割合
統括防火管理実施義務防火対象物数90,359件(母数)
統括防火管理者を選任している防火対象物数63,468件70.2%
全体についての消防計画を作成している防火対象物数61,718件68.3%
統括防火管理の選任率を建物の型で見た表
建物の型で見た統括の選任率(出典 令和7年版消防白書 資料1-1-53)
区分義務件数選任率全体計画の作成率
特定複合用途防火対象物53,94370.0%67.6%
高層建築物25,94374.1%73.4%
非特定複合用途防火対象物6,73260.3%57.9%
飲食店1,94762.4%60.2%
百貨店等56764.4%62.4%
旅館等24684.6%76.0%
地下街4095.0%85.0%

防火管理者より10ポイント以上低くなっています。全ての管理権原者が協議しなければ決められない仕組みなので、1社でも動かないと届け出られません。テナントが多いビルほど止まりやすい形になっています。

ほかの法定点検との関係

建物にかかる義務は防火管理だけではありません。根拠法も周期も提出先も別なので、まとめて並べます。

建物にかかる義務の比較。防火管理者の選任、消防設備点検、防火対象物点検、建築基準法12条の定期報告、貯水槽の清掃と検査
建物にかかる義務の整理(出典 消防法・建築基準法・水道法)
制度根拠義務を負う人周期この記事との関係
防火管理者の選任消防法8条管理権原者選任したら遅滞なく届出。消防計画は変更のつど本記事
統括防火管理者の選任消防法8条の2管理権原者が協議同上本記事
消防設備点検消防法17条の3の3関係者(所有者・管理者・占有者)点検は6か月と1年、報告は1年に1回か3年に1回消防設備点検とは
防火対象物点検消防法8条の2の2管理権原者点検も報告も1年に1回防火対象物点検とは
建築基準法12条の定期報告建築基準法12条所有者・管理者建築物はおおむね6月から3年、建築設備等はおおむね6月から1年の間隔で特定行政庁が定める時期建築基準法12条点検とは
貯水槽の清掃と簡易専用水道の検査水道法34条の2簡易専用水道の設置者どちらも1年以内ごとに1回貯水槽の清掃は義務?

防火対象物点検は「防火管理が適切か」を見る制度

このなかで防火管理者といちばん近いのが防火対象物点検です。消防法8条の2の2は、防火管理者が必要な建物のうち一定のものについて、防火対象物点検資格者に「防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の設置及び維持その他火災の予防上必要な事項」が基準に適合しているかを点検させ、消防長又は消防署長に報告することを求めています。

つまり、この記事で作った選任届や消防計画、訓練の記録が、そのまま点検で見られます。

防火対象物点検で確かめられるもの。選任届出、消防計画の作成と届出、訓練の実施、避難通路と防火戸の状態
防火対象物点検とのつながり(出典 消防法8条の2の2・同法施行令4条の2の2)

対象になるのは、防火管理者が必要な特定用途の建物のうち、収容人員が300人以上のもの、または地階か3階以上の階に特定用途があって、そこから避難階か地上に直通する階段が2つ(屋外階段や一定の構造なら1つ)設けられていないものです。判定の詳しい手順と特例認定については「防火対象物点検とは(消防設備点検との違い・対象・特例認定)」にまとめています。

防火管理維持台帳

防火対象物点検の対象になる建物では、消防法施行規則4条の2の4第2項が、点検の結果を防火管理維持台帳に記録して保存することを求めています。この台帳に綴じるものの一覧が、防火管理で作る書類のほぼ全部にあたります。

防火管理維持台帳に綴じるもの。届出の写し、点検の書類、実施の記録、その他
防火管理維持台帳に綴じるもの(出典 消防法施行規則4条の2の4第2項)
区分綴じるもの
届出の写し消防計画、防火管理者の選任届、全体についての消防計画、統括防火管理者の選任届、自衛消防組織の届出に係る書類の写し
点検の書類防火対象物点検の報告書の写し、特例認定の申請書の写しと通知、消防用設備等の点検結果報告書の写し、設置届に係る書類の写しと検査済証
実施の記録自主検査/設備の点検及び整備/避難施設の維持管理/防火上の構造の維持管理/定員の遵守その他収容人員の適正化/教育/訓練/工事中の火気の監督の状況を記載した書類
その他消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事、整備等の経過一覧表、甲種防火管理再講習の修了証の写し、そのほか防火管理上必要な書類

台帳を作る義務があるのは防火対象物点検の対象になる建物ですが、それ以外の建物でも、同じものをまとめて保管しておくと立入検査のときに早く済みます。

チェックリスト

防火管理のチェックリスト8項目
今日できる確認(出典 消防法8条・8条の2・同法施行規則3条・3条の2・4条)
  • 建物全体の収容人員を数えて、10人・30人・50人のどの線に当たるかを見る
  • 延べ面積を見て、甲種が要るのか乙種で足りるのかを確かめる
  • 選任届の控えがあるか、届け出ている名前が今の担当者と合っているかを確かめる
  • 消防計画の控えがあるか、テナントや設備の変更が反映されているかを見る
  • 消火訓練と避難訓練を年2回以上やっているか、消防機関へ事前に通報しているかを確かめる(特定用途の建物)
  • 収容人員300人以上の特定用途なら、再講習の期限が来ていないかを見る
  • 管理権原が分かれているビルなら、統括防火管理者と全体についての消防計画があるかを確かめる
  • テナントが入れ替わったら、統括の選任届と全体についての消防計画の届出をやり直す
  • 消防計画に書いた委託先や連絡先が、今の実態と合っているかを見る

よくある質問

防火管理者は建物に1人でよいのですか。

管理について権原が分かれていれば、その数だけ必要になります。東京消防庁は「防火管理者が必要な建物では、建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要です」と書いています。共用部分について建物のオーナーが1人、各テナントについてそれぞれの事業者が1人ずつ、という形になります。

延べ面積が小さければ防火管理者は要りませんか。

必要かどうかは収容人員で決まるので、面積が小さくても対象になることがあります。延べ面積が出てくるのは、甲種と乙種のどちらの資格が要るかを決める場面です。特定用途で300平方メートル未満、非特定用途で500平方メートル未満なら乙種でよいとされています。

収容人員は、いま実際に建物にいる人数ですか。

実際の人数ではなく、消防法施行規則1条の3の算定方法で計算した数です。従業者の数だけで数える用途もあれば、客席の床面積を割り算する用途もあります。用途ごとに分母が違うので、条文の表に当てはめて数えます。

自分のテナントだけで数えてよいのですか。

選任が必要かどうかの判定は建物全体の収容人員で見ます。自分の区画だけで数えるのは、そのテナントが乙種でよいかどうかを判断する場面です。判断は消防署が行いますので、届け出る前に確かめてください。

甲種と乙種のどちらを取ればよいですか。

建物の区分で決まりますが、甲種の資格があれば乙種で足りる建物の防火管理者にもなれます。将来別の建物を担当する可能性があるなら、甲種を取っておくと使い回せます。どちらが必要かは事業所を管轄する消防本部や消防署に確かめてください。

講習を受けないと防火管理者になれませんか。

講習以外のルートもあります。大学や高等専門学校で総務大臣の指定する防災に関する学科を修めて卒業し1年以上の実務経験がある人、市町村の消防職員で管理的又は監督的な職に1年以上あった人、安全管理者、防火対象物点検資格者、甲種危険物取扱者免状を持つ危険物保安監督者、一定の経歴のある警察官や消防団員、一級建築士などが該当します。社内に該当者がいないか先に確かめる価値があります。

修了証に有効期限はありますか。

日本防火・防災協会は「防火・防災管理修了証そのものには有効期限や失効期限はありません」と書いています。期限が問題になるのは再講習の義務がある人だけです。昔とった修了証はそのまま使えます。

再講習は全員が受けるのですか。

いいえ。甲種防火管理再講習の義務があるのは、収容人員300人以上の特定用途の建物で防火管理者に選任されている人に限られます。それ以外の建物の防火管理者には受講義務がありません。

古い修了証を持つ社員を選任しても大丈夫ですか。

資格としては使えます。ただし再講習の義務がある建物では、選任された日の4年前までに講習を修了していた場合、選任された日から1年以内に再講習を受けることになります。引き継ぎのときに修了年月日を確かめておくと安心です。

選任の期限は何日以内と決まっていますか。

条文は「遅滞なく」と書いていて、何日以内という数字はありません。解任したときも同じです。消防計画については、消防法施行令3条の2第1項が作成と届出を求め、施行規則3条1項が変更のときも同様と定めています。

届出を出すのは防火管理者本人ですか。

選任(解任)届出書は管理権原者の名前で出します。消防計画作成(変更)届出書は防火管理者の名前で出します。出す人が違うので、様式を見ながら確かめてください。

消防計画はどこまで細かく書くのですか。

消防法施行規則3条1項が12の事項を挙げていて、建物の位置、構造、設備の状況と使用状況に応じて定めることになっています。東京消防庁が大規模用から共同住宅用まで型ごとの作成例を公開しているので、自分の建物に近い型を選んで空欄を埋めていくのが近道です。

訓練は年に何回やればよいですか。

特定用途の建物の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施しなければならないと施行規則3条10項が定めています。さらに11項が、実施するときはあらかじめ消防機関に通報することを求めています。非特定用途だけの建物には回数の定めがなく、消防計画に定めた頻度で実施します。

テナントが入れ替わったら何をしますか。

新しいテナントは自分の区画について防火管理者を選任して届け出ます。統括防火管理者が必要なビルでは、統括防火管理者が変わっていなくても、管理権原者が変わったことで統括の選任届と全体についての消防計画の届出をやり直すとされています。東京消防庁は、退去のときと法人の代表者が変わっただけのときは不要と案内しています。

統括防火管理者は誰が決めるのですか。

全ての管理権原者が協議して定めます。1社の判断では決められません。届出には協議の実施を証する書類を添えることになっていて、東京消防庁は契約書、建物管理規約、協議の結果(議事要旨)などの任意の様式でよいとしています。

防火管理者を選任していないと公表されますか。

全国共通の違反対象物の公表制度は、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備の未設置などを対象にしていて、防火管理者の未選任そのものは対象として書かれていません。ただし条例の書きぶりは自治体ごとに違い、東京都火災予防条例64条の3は「設備、管理等の状況」と広く書いたうえで対象を規則に委ねています。所轄の消防署に確かめてください。

命令が年に13件しかないなら、急がなくてもよいのでは。

命令に至る前に警告や指導で是正されているため、件数だけでは実態が見えません。また、行政処分とは別に、火災が起きたときの責任は民事や刑事の場で問われます。選任と消防計画は、費用も手間も限られている割に効果が大きい部類の手続きです。

防火管理者と防火対象物点検は同じものですか。

別の制度です。防火管理者は日常の体制をつくる人で、防火対象物点検はその体制が整っているかを資格者が1年に1回確かめて報告する制度です。詳しくは「防火対象物点検とは(消防設備点検との違い・対象・特例認定)」にまとめています。

消防設備点検もやらなければいけませんか。

設備が付いている建物では、防火管理とは別に消防設備点検の義務があります。点検は6か月と1年、報告は1年に1回か3年に1回です。周期や費用については「消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)」と「消防設備点検の費用と業者の探し方」を見てください。

賃貸アパートのオーナーですが、誰を選任すればよいですか。

共同住宅は非特定用途なので、居住者の数で50人以上なら対象になります。管理的又は監督的な地位にある人がいずれも遠隔の地に勤務しているなどの事情があるときは、消防法施行令3条2項の読み替えを使える場合があります。マンションの消防点検の話とあわせて「マンションの消防点検(部屋に入る理由・費用の負担)」も参考にしてください。

困ったときの窓口

問い合わせ先の一覧。対象かどうかと資格は管轄の消防署の予防課、講習の申込みは登録講習機関か消防本部、届出の様式は管轄の消防署
どこに聞けばよいか(出典 東京消防庁 防火・防災管理講習/申請様式)
聞きたいこと窓口
自分の建物が対象か、甲種か乙種か建物を管轄する消防署の予防課
どの講習を受ければよいか同じく管轄の消防署。講習会場では受け付けていない
講習の申込みと日程都道府県知事の登録を受けた講習機関、または管轄の消防本部
届出の様式と出し方管轄の消防署。電子申請の窓口も用意されている
消防計画の書き方管轄の消防署。作成例と作成支援ツールが公開されている

東京消防庁は、防火管理者に選任されている人やこれからなる人に向けて防火管理ポータルサイトを公開していて、資格を取る、消防署に届出する、消防計画をつくる、訓練する、知識を深める、という流れでまとまっています。防火・防災管理のページからは、実践ガイドやポケットマニュアルにもたどれます。

まとめ

覚えておく数字の一覧。収容人員10人30人50人、延べ面積300平方メートルと500平方メートル、講習10時間と5時間、再講習は300人以上、訓練は年2回以上、統括は3階以上
覚えておく数字(出典 消防法8条・8条の2ほか)

防火管理者の制度は、条文をたどると3つの数字と2枚の書類に整理できます。収容人員の10人・30人・50人で必要かどうかが決まり、延べ面積の300平方メートル・500平方メートルで甲種か乙種かが決まり、出す書類は選任届と消防計画の届出の2通です。

全国の選任率は84.5%、消防計画の作成率は80.0%、統括防火管理者の選任率は70.2%です。整っていない建物が2割ほどあり、そこは雑居ビルと共同住宅と飲食店に寄っています。命令が出る件数は年13件と少ないのですが、それは警告や指導の段階で是正されているためで、義務がゆるいという意味ではありません。

用途の判定も、収容人員の数え方も、建物ごとに事情が違います。この記事は条文と公的資料の原文をたどって整理したものですので、最終的な判断は管轄の消防署に確かめてください。

消防設備点検
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    屋内消火栓設備とは|設置基準(延べ500・700・1,000㎡と2倍3倍読み)、1号・易操作性1号・2号・広範囲型2号の違い、水源とポンプ、点検の中身、資格、罰則【2026年版・条文つき】
    2026年10月14日
  • 自動火災報知設備とは|設置基準(施行令21条の全15号)、警戒区域、感知器と受信機の決まり、非常電源、点検の中身と周期、資格、交換の目安、罰則【2026年版・条文つき】
    自動火災報知設備とは|設置基準(施行令21条の全15号)、警戒区域、感知器と受信機の決まり、非常電源、点検の中身と周期、資格、交換の目安、罰則【2026年版・条文つき】
    2026年10月13日

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  • 2026年11月5日
    建築基準法12条点検

    非常用照明の設置基準|要る建物の4つの条件(500㎡・1,000㎡・無窓の居室)、設置しなくてよい部屋、床面1ルクスと予備電源、誘導灯との違い、点検とバッテリー交換の目安【2026年版・施行令126条の4の原文つき】

  • 2026年11月4日
    改修・交換工事

    フロン点検とは|業務用エアコン・冷凍冷蔵機器の簡易点検は3か月に1回、7.5kW以上は定期点検、対象の見分け方と管理者、記録簿、罰則、費用の例【2026年版・環境省の手引きつき】

  • 2026年11月3日
    消防設備点検

    避難器具の設置基準|設置が必要な階(施行令25条)、収容人員と個数の計算、減免、避難はしご・緩降機・救助袋の置き方、4階以上の条件、標識、点検、罰則【2026年版・条文つき】

  • 2026年11月2日
    建築基準法12条点検

    防火区画とは|面積・高層・竪穴・異種用途の4種類、1,500㎡や100㎡の基準、防火戸と防火シャッターの条件、管理で区画を壊さない注意【2026年版・施行令112条の原文つき】

  • 2026年11月1日
    消防設備点検

    消火器の設置基準|設置が必要な建物(施行令10条)、必要な本数の計算(能力単位)、歩行距離20m、付加設置、高さ1.5mと標識、飲食店、既存の建物、罰則【2026年版・条文つき】

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