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  3. 非常用照明の設置基準|要る建物の4つの条件(500㎡・1,000㎡・無窓の居室)、設置しなくてよい部屋、床面1ルクスと予備電源、誘導灯との違い、点検とバッテリー交換の目安【2026年版・施行令126条の4の原文つき】

非常用照明の設置基準|要る建物の4つの条件(500㎡・1,000㎡・無窓の居室)、設置しなくてよい部屋、床面1ルクスと予備電源、誘導灯との違い、点検とバッテリー交換の目安【2026年版・施行令126条の4の原文つき】

2026 11/05
建築基準法12条点検
2026年11月5日
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非常用照明の設置基準|要る建物の4つの条件(500㎡・1,000㎡・無窓の居室)、設置しなくてよい部屋、床面1ルクスと予備電源、誘導灯との違い、点検とバッテリー交換の目安【2026年版・施行令126条の4の原文つき】

この記事の情報

建築基準法・建築基準法施行令・消防法施行令(e-Gov)、国土交通省の「非常用の照明装置の設置基準の合理化」と定期報告制度のページ、平成20年国土交通省告示第285号、東京都都市整備局の定期報告の一覧、日本照明工業会の資料は、2026年10月15日に原文を取得して確認しました。照明器具の構造や照度の細かな決まりは昭和45年建設省告示第1830号にありますが、今回は原文を取得できなかったため、この記事では細かな数値を断定していません。実際の判断は、確認申請の図面と、建物のある地域の特定行政庁(建築指導課など)で確かめてください。

ビルの廊下や階段の天井に付いている、ふだんは普通の照明と同じように見える器具。停電したときにだけ電池で点灯するのが非常用照明です。テナントが入れ替わって部屋の間仕切りを変えたい、古いビルを買ったが非常用照明が足りているのか分からない、定期検査の報告書に「非常用照明 不点灯」と書かれていた。こうした場面で、どの建物のどの部屋に付ける決まりなのか、どれくらいの明るさが要るのかを知っておくと、工事や点検の判断がしやすくなります。

この記事では、建築基準法施行令126条の4(どこに要るか)と126条の5(どんな構造か)の原文を読み、設置しなくてよい場合、消防法の誘導灯との違い、定期検査とバッテリー交換の目安までを順に整理します。器具の配置計算のような設計の話ではなく、建物を持つ人と管理する人が知っておきたい範囲に絞っています。

建物の出入口まわりで管理者と点検者が設備を確かめているイメージ
非常用照明は停電時に居室と通路の床を照らす(イメージ)
目次
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先に結論

非常用照明の要点5つ。停電しても床を照らす照明で床面1ルクス以上、要る建物は別表第1の用途・3階以上で500平方メートル超・無窓の居室・1,000平方メートル超の4つの条件、居室と地上へ出る通路に付ける、住戸・病室・学校等などは対象外、点検とバッテリー交換が要りバッテリーは4〜6年が交換の目安
非常用照明の要点
知りたいこと答え(根拠)
非常用照明とは停電したときに自動で点灯し、床を照らして避難を助ける照明(建築基準法では「非常用の照明装置」)
要る建物別表第1(1)〜(4)の特殊建築物、階数が3以上で延べ面積500㎡超、無窓の居室がある、延べ面積1,000㎡超のどれか(施行令126条の4)
付ける場所その居室と、居室から地上に通ずる廊下・階段などの通路
要らない場合住戸、病院の病室、学校等、避難上支障がない居室で大臣が定めるもの、30㎡以下の居室で条件を満たすものなど
明るさ直接照明で、床面で1ルクス以上(施行令126条の5)
点検とバッテリー特定行政庁が指定すれば定期検査の対象。バッテリーは4〜6年が交換の目安(日本照明工業会)

非常用照明は、法律の上では「非常用の照明装置」と呼ばれます。日本照明工業会は「非常用照明器具を非常灯と呼ぶ場合があります。」と説明しています(日本照明工業会 建物のオーナー様向け情報)。以下では、ふだんの呼び方に合わせて非常用照明と書きます。

非常用照明はどの法律で決まっているか

建築基準法35条の対象。別表第1の1から4の特殊建築物、階数が3以上の建築物、窓その他の開口部を有しない居室がある建築物、延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物は、非常用の照明装置などを政令の基準に従って設ける
建築基準法35条

非常用照明のおおもとは、建築基準法35条です。条文は、特殊建築物、階数が3以上の建築物、窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が1,000㎡を超える建築物について、「廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。」と定めています(建築基準法35条)。

この「政令で定める技術的基準」が、建築基準法施行令の126条の4と126条の5です。126条の4が設置する場所を、126条の5が照明装置の構造を決めています。国土交通省は、非常用の照明装置を義務付ける理由を「火災時の停電により、照明が確保されないことによって、避難方向の認識が困難になったり、避難速度の低下などが想定されることから、建築物の用途・規模に応じて、停電時に自動点灯する非常用の照明装置の設置を義務付け。」と説明しています(国土交通省 非常用の照明装置の設置基準の合理化(PDF))。

建物の持ち主には、建築基準法8条1項で「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」という努力義務があります(建築基準法8条)。非常用照明は付けたら終わりではなく、いざというときに点く状態を保つことまでが求められている、と考えておくとよいでしょう。

設置が要る建物の4つの条件

非常用照明が要る建物。施行令126条の4第1項の4つの条件。1 法別表第1の1から4の用途の特殊建築物、2 階数が3以上で延べ面積が500平方メートルを超える、3 116条の2第1項1号の窓その他の開口部を有しない居室、4 延べ面積が1,000平方メートルを超える。どれか1つに当たれば居室と地上に通ずる通路に設ける
設置が要る建物(126条の4第1項)

施行令126条の4第1項の原文は次のとおりです。

「法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物の居室、第百十六条の二第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が千平方メートルを超える建築物の居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、非常用の照明装置を設けなければならない。」(建築基準法施行令126条の4)

漢数字を算用数字に直すと、三は3、五百平方メートルは500㎡、千平方メートルは1,000㎡、第百十六条の二第一項第一号は116条の2第1項1号です。条文を分けると、次の4つのどれかに当たる建物の居室が対象になります。

条件中身考え方
1 特殊建築物法別表第1(い)欄(1)〜(4)の用途規模にかかわらず、その用途の居室が対象
2 規模階数が3以上で、延べ面積が500㎡を超える3階建て以上でも500㎡以下なら、この条件には当たらない
3 無窓の居室116条の2第1項1号に当たる居室建物の規模にかかわらず、その居室が対象
4 面積延べ面積が1,000㎡を超える階数にかかわらず対象

別表第1(1)〜(4)の用途とは

1つめの条件の特殊建築物は、建築基準法の別表第1(い)欄に並ぶ用途のうち(1)項から(4)項までです(建築基準法 別表第1)。

項別表第1(い)欄の用途政令で加わる類する用途(施行令115条の3)
(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場などなし
(2)病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など児童福祉施設等
(3)学校、体育館など博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
(4)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場など公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(床面積が10㎡以内のものを除く)

飲食店や物品販売の店舗は、施行令115条の3で(4)項に類する用途とされています(施行令115条の3)。つまり、小さな2階建ての建物でも、飲食店や物販店の居室には非常用照明が要るのが原則です。ただし、(3)項の学校や体育館は、あとで見るただし書きの3号で対象外とされています。

「無窓の居室」の読み方

無窓の居室の読み方(仮の数字の例)。居室の床面積40平方メートルなら20分の1は2平方メートル。採光に有効な開口部の合計が2平方メートル以上なら当たらない、2平方メートル未満なら無窓の居室で非常用照明が要る。ふすま・障子など随時開けられるもので仕切られた2室は1室とみなす
無窓の居室の読み方

3つめの条件の「窓その他の開口部を有しない居室」は、施行令116条の2第1項1号で決まっています。採光に有効な部分の面積の合計が「当該居室の床面積の二十分の一以上のもの」を有しない居室、つまり採光に有効な開口部が床面積の20分の1未満の居室です(施行令116条の2)。

仮の数字で読むと、床面積40㎡の居室なら20分の1は2㎡です。採光に有効な開口部の面積の合計が2㎡未満なら、この居室は無窓の居室に当たり、建物が小さくてもその居室と通路に非常用照明が要ります。地下の部屋や、窓のない会議室、倉庫を事務室に変えた部屋などで当たりやすい条件です。

同じ116条の2第2項では「ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前項の規定の適用については、一室とみなす。」とされています。間仕切りを壁で作るか、引き戸のような開けられるもので作るかで、無窓の居室に当たるかどうかが変わることがあります。テナントの内装工事で部屋を区切るときは、この点を設計者に確かめてもらうと安心です。

建物の例で読む

建物の例で読む。3階建て・延べ400平方メートルの事務所は500平方メートル以下で1,000平方メートル以下なので、無窓の居室があればその居室と通路に要る。2階建て・延べ1,200平方メートルの事務所は1,000平方メートルを超えるので要る。1階の飲食店は別表第1の4項に類する用途なので要る
建物の例で読む

仮の建物で当てはめてみます。3階建てで延べ面積400㎡の事務所ビルは、事務所が別表第1の用途ではなく、「階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える」にも「1,000㎡を超える」にも当たりません。この場合でも、採光に有効な開口部が床面積の20分の1未満の居室があれば、その居室と、そこから地上に通ずる通路には非常用照明が要ります。

2階建てで延べ面積1,200㎡の事務所は、1,000㎡を超えるので、居室と通路に要ります。1階の飲食店は、別表第1(4)項に類する用途なので、規模にかかわらず居室と通路に要ります(ただし書きに当たる部分を除く)。用途を事務所から飲食店に変えるときは、非常用照明の要否も変わることがあるので注意してください。

どこに付けるか

どこに付けるか。対象の居室と、居室から地上に通ずる廊下・階段などの通路。採光上有効に直接外気に開放された通路は付けなくてよい。照明装置の設置を通常要する部分も対象
設置する場所

126条の4第1項で設置が求められるのは、条件に当たる居室と、「これらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路」です。国土交通省の資料では、対象として居室のほかに「①〜④までの居室から地上に通ずる廊下、階段、ロビー等の通路」を挙げ、「※その他、これらに類する部分で、照明装置の設置を通常要する部分も対象。」としています(国土交通省 設置基準の合理化(PDF))。

一方で、通路のうち「採光上有効に直接外気に開放された通路」は除かれます。マンションやアパートの外廊下、屋外の階段のように、外に向かって大きく開いている通路がこれに当たりやすい部分です。屋内の廊下や階段室、エレベーターホールは原則として対象になります。

設置しなくてよい場合

設置しなくてよい4つの場合(126条の4第1項ただし書き)。1号 一戸建の住宅、長屋・共同住宅の住戸。2号 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室など。3号 学校等。4号 避難階やその直上階・直下階の居室で避難上支障がないものなどとして大臣が定めるもの。共同住宅の共用の廊下や階段は住戸ではないので別に考える
設置しなくてよい場合

126条の4第1項には「ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。」というただし書きがあり、次の4つが挙がっています。

号条文読み方
1号一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸住戸の中は対象外。共用の廊下や階段は別
2号病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室寝る部屋は、ふだんから使い慣れている人がいることが多い
3号学校等学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
4号避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの中身は国土交通大臣の告示で決まる

3号の「学校等」は、施行令126条の2第1項2号で「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場」と定義されています。幼保連携型認定こども園は学校等から外れているので、対象外にはなりません。

4号の中身は、平成12年建設省告示第1411号で決まっていますが、今回は原文を取得できませんでした。避難階(地上に出られる階)やその上下の階の居室のうち、どの居室が当たるかはこの告示で決まります。自分の建物の居室がこれに当たるかは、設計者か特定行政庁に確かめてください。

30㎡以下の居室の扱い

30平方メートル以下の居室の扱い。規制の適用を受けない居室に、床面積が30平方メートル以下で地上への出口を有する居室と、30平方メートル以下で地上まで通ずる部分が条件を満たす居室が加わった。条件は非常用の照明装置が設けられたもの、採光上有効に直接外気に開放されたもの
30㎡以下の居室

国土交通省は「非常用の照明装置の設置基準の合理化」として、「規制の適用を受けない居室」に次の居室を加えたと説明しています(国土交通省 設置基準の合理化(PDF))。

  • 「床面積が30㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの」
  • 「床面積が30㎡以下の居室で、地上まで通ずる部分が次の①又は②に該当するもの」(「① 非常用の照明装置が設けられたもの」「② 採光上有効に直接外気に開放されたもの」)

同じ資料の図には「地上に至るまでの避難経路において照度を確保(非常用の照明装置の設置など)。」という注記があります。小さな居室そのものは対象外にできても、そこから地上へ出る通路が暗くならないようにしておく、という考え方です。1階の小さな店舗や事務所、廊下に面した小部屋などで関係しやすい扱いです。

別の建築物とみなす部分

別の建築物とみなす部分(126条の4第2項と117条2項)。1号 開口部のない耐火構造の床や壁で区画された部分、2号 火熱や煙・ガスが互いに有害な影響を及ぼさない構造方法の部分。延べ面積の数え方が変わるので設計者の判断を図面で確かめる
別の建築物とみなす部分

126条の4第2項は「第百十七条第二項各号に掲げる建築物の部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。」としています。117条2項1号は「建築物が開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されている場合における当該床又は壁により分離された部分」、2号は火熱や煙・ガスで互いに防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いた部分です(施行令117条)。

たとえば、開口部のない耐火構造の壁で建物が2つに分かれていれば、それぞれの部分の延べ面積で500㎡や1,000㎡を判断することになります。延べ面積の数え方が変わるので、図面でどのように扱われているかを設計者に確かめておくとよいでしょう。

非常用照明の構造 床面1ルクスと予備電源

非常用照明の構造(施行令126条の5)。1号イ 直接照明で床面1ルクス以上、ロ 火災で温度が上がっても光度が著しく下がらない構造、ハ 予備電源を設ける、ニ このほか大臣が定める構造方法。2号 停電で自動点灯し床面1ルクス以上を確保できるとして大臣の認定を受けたもの
非常用照明の構造(126条の5)

施行令126条の5は、非常用の照明装置を次の1号か2号のどちらかの構造にするよう定めています(施行令126条の5)。

条文
1号イ照明は、直接照明とし、床面において1ルクス以上の照度を確保することができるものとすること
1号ロ照明器具の構造は、火災時において温度が上昇した場合であつても著しく光度が低下しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること
1号ハ予備電源を設けること
1号ニイからハまでに定めるもののほか、非常の場合の照明を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること
2号火災時において、停電した場合に自動的に点灯し、かつ、避難するまでの間に、当該建築物の室内の温度が上昇した場合にあつても床面において1ルクス以上の照度を確保することができるものとして、国土交通大臣の認定を受けたもの

ポイントは、床面で1ルクス以上を確保すること、停電しても点くように予備電源を設けること、火災の熱で暗くならないことの3つです。1号ロとニの「国土交通大臣が定めた構造方法」は昭和45年建設省告示第1830号で決まっていて、器具の構造や予備電源、照度の測り方の細かな決まりはそこにあります。この記事では告示の原文を確認できていないため、細かな数値は書いていません。

器具を選ぶときの目安として、日本照明工業会は非常用照明器具について「建築基準法令及び工業会規格JIL5501「非常用照明器具技術基準」に適合していることを自主評定する業務を2001年6月から実施しています。」と説明し、「登録製造事業者は型式評定を受けた製品にJIL適合マーク(下図)を貼付します。」としています(日本照明工業会 非常用照明器具自主評定情報)。交換のときは、器具にこの表示があるかを工事業者と一緒に確かめるとよいでしょう。

誘導灯との違い

誘導灯との違い。非常用照明は建築基準法施行令126条の4・126条の5で停電時に床を照らす、点検は30分間か60分間、報告先は特定行政庁。誘導灯は消防法施行令26条で避難口や避難の方向を示す、非常電源は20分間(一部は60分間)、報告先は消防長か消防署長
非常用照明と誘導灯の違い

非常用照明とよく混同されるのが、緑色の表示板で非常口や避難の方向を示す誘導灯です。日本照明工業会は「誘導灯・非常用照明器具は、消防法の消防用設備等及び建築基準法の建築設備として、関連法令に基づき、維持管理し、定期点検及び報告の義務があります。」と説明しています(日本照明工業会 建物のオーナー様向け情報)。

非常用照明誘導灯
法律建築基準法施行令126条の4・126条の5消防法施行令26条
役目停電時に床を照らして避難を助ける避難口や避難の方向を示す
非常電源の点検の時間30分間又は60分間20分間又は60分間
点検する人一級又は二級建築士、建築設備検査資格者など消防設備士・消防設備点検資格者
報告先特定行政庁消防長又は消防署長

同じ天井に並んでいても、非常用照明は建築基準法、誘導灯は消防法(消防法施行令)と、法律も点検の報告先も別です。日本照明工業会は「誘導灯および非常用照明器具は、それぞれ消防法、建築基準法で規定された点検の制度が決められていて」と説明しています(日本照明工業会 防災照明器具の保守・点検)。消防設備点検の報告に誘導灯が入っていても、非常用照明はそれとは別の定期検査で扱われる、と覚えておくと混乱しません。誘導灯の交換やバッテリーの話は 誘導灯の交換、消防設備の点検全体は 消防設備点検 にまとめています。

60分間の長時間形が要る場合

60分間の長時間形が要る場合。平成23年6月17日公布の省令改正で、誘導灯の非常電源が60分間以上と決められた防火対象物で、階段通路誘導灯の代わりに設けている非常用照明器具は、長時間形(60分間)への置き換えが義務
60分間の長時間形

消防法との関係で注意したいのが、階段の非常用照明です。日本照明工業会によると、平成23年6月17日に「消防法施行規則及び危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令」が公布され、「誘導灯の非常電源を60分間以上が義務付けられている防火対象物で階段通路誘導灯の代替として設置している非常用照明器具も長時間形(60分間)への置き換えが義務付けられることになりました。」と説明しています(日本照明工業会 建物のオーナー様向け情報)。

階段の非常用照明が、消防法の階段通路誘導灯の役目も兼ねている建物では、非常用照明の器具にも60分間の性能が求められることがある、ということです。階段の器具を交換するときは、交換前の器具が30分形か60分形かを確かめ、同じかそれ以上の性能のものを選ぶようにしてください。

定期検査と点検

非常用照明の定期検査(建築基準法12条3項)。特定行政庁が指定すれば対象になり検査資格者などが検査し報告、指定がなければ報告の義務はないが維持管理は必要(法8条)。東京都は特定建築物に当たる建物の非常用の照明装置を毎年報告の対象にしている
非常用照明の定期検査

非常用照明は、建築基準法12条3項の建築設備の定期検査の対象になりえます(建築基準法12条)。ただし、昇降機や防火設備と違って、政令で全国一律に対象とされているわけではありません。換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備は、特定行政庁が指定したときに対象になります。

東京都の一覧では、建築設備の対象として「換気設備(自然換気設備を除く。)」「排煙設備(排煙機又は送風機を有するもの)」「非常用の照明装置」「給水設備及び排水設備(給水タンク等を設けるもの)」を挙げ、「上記の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの」について「毎年報告」としています(東京都都市整備局 報告時期一覧(PDF)、同 一覧のページ)。日本照明工業会も、特定行政庁が指定する建築物の建築設備は「毎年定期的に検査し報告書を提出してください。」とし、「※地域の特定行政庁により、対象建築物及び対象建築設備に対象が異なる場合がありますので、各特定行政庁にご確認をお願いいたします。」と添えています(日本照明工業会)。

報告の義務がない建物についても、日本照明工業会は「それ以外の建物を有しているオーナー様には、法律上の報告義務はありませんが、チェックリストに従って、点検の維持管理を適切に実施していただくようお願いします。」としています。報告の対象外でも、停電時に点かなければ意味がないので、点検は続けておきたいところです。定期報告の全体像は 建築基準法12条の定期報告、建築設備の定期検査の流れと報告書は 建築設備定期検査 で詳しく扱っています。

定期検査で見られること

定期検査で見られること(平成20年国土交通省告示第285号 別表第三)。予備電源への切替えと点灯は作動の状況と点灯時間を確かめる、照度は最も暗い部分の床面を低照度測定用照度計で測る、取付けは天井などに正しく固定されているか、電池内蔵形の蓄電池は点滅スイッチを切っても充電ランプが点灯しないのは不適合、物品の放置は令和7年7月1日施行の改正で追加
定期検査の検査項目

非常用の照明装置の検査の方法と判定基準は、平成20年国土交通省告示第285号の別表第三に並んでいます(国土交通省告示第285号(Word))。大きな項目は、照明器具、電池内蔵形の蓄電池、電源別置形の蓄電池、自家用発電装置などに分かれています。

検査項目(告示の言葉)検査の方法・判定基準
予備電源への切替え及び器具の点灯の状況並びに予備電源の性能作動の状況及び点灯時間を確認する
照度の状況避難上必要となる部分のうち最も暗い部分の水平床面において低照度測定用照度計により測定する
取付けの状況天井その他の取付け部に正しく固定されていないことなどは不適合
電池内蔵形の蓄電池 充電ランプの点灯の状況点滅スイッチを切断しても充電ランプが点灯しないことは不適合

また、令和6年告示第974号などの改正(令和7年7月1日施行)で、「換気設備」及び「非常用の照明装置」において「物品の放置の状況」が検査項目に加わりました。照明器具の下に棚を置いて光が床に届かない、器具の前に看板や吊り下げ物があるといった状態は、検査で指摘されることがあります。テナントの什器の置き方にも気を配っておきましょう。

予備電源が自家用発電装置の場合は、発電機そのものの点検も関わってきます。非常用発電機の負荷試験については 非常用発電機の負荷試験 で扱っています。建物全体の調査の中身は 特定建築物の定期調査 を参考にしてください。

非常点灯の確かめ方

非常点灯の確かめ方(日本照明工業会)。1 非常用照明器具は48時間(誘導灯は24時間)十分に充電する、2 常用電源を切って非常点灯に切り替わるかを見る、3 30分たってから非常点灯が続いているかを再び確認する、4 続かなければバッテリー交換などの処置
非常点灯の確かめ方

日本照明工業会は、非常点灯の性能を確かめるときの方法を「十分(誘導灯 24時間・非常用照明器具 48時間)充電したのち常用電源を遮断して非常点灯に切り替えてください。誘導灯は20分・非常用照明器具は30分経過後、非常点灯しているか再び確認してください。」と説明しています。さらに「充電モニタが点灯しない時および非常点灯が誘導灯は20分・非常用照明器具は30分持続しない時は、バッテリー交換など適切な処置をしてください。」としています(日本照明工業会 点検者様向け情報)。

器具に付いている点検スイッチ(引きひもやボタン)を操作すると、その場で非常点灯に切り替わるかを確かめられます。ただし、30分続くかどうかまでは、十分に充電したうえで時間を測らないと分かりません。点検業者に頼むときは、どの方法で何台を確かめたかを報告書で確認しておくとよいでしょう。

劣化とバッテリー交換の目安

劣化診断のチェック項目(日本照明工業会)。使用期間が15年以上、使用期間は8年以上、点検スイッチを操作しても非常点灯に切り替わらない、充電モニタ(緑色LED)が点灯していない、ランプモニタ(赤色LED)が点滅または点灯している、蓄電池に白い粉が出ている、蓄電池の使用期間は6年以上
劣化診断のチェック項目

日本照明工業会は、「全ての製造物は使用(設置)開始と同時に劣化が始まり、その進行によりいつかは機能不良となります。」「劣化進行に伴って生じる機能不良は、その時期をある程度予見できるものの、多くのものは突然不意に訪れます。」と説明しています(日本照明工業会 防災照明器具の保守・点検)。そのうえで、簡易版の劣化診断チェックシートで「劣化進行による不意の機能不良を避けるために法定点検とは別に1回/年の劣化診断をおすすめ致します。」としています(日本照明工業会 簡易版 劣化診断チェックシート)。

チェック項目(チェックシートの言葉)当てはまったとき
使用期間が15年以上劣化が進んでいる。不意の機能不良を避けるために器具の交換
使用期間は8年以上劣化が進んでいることがある。新しい器具に交換するか専門家に相談
点検スイッチを操作しても非常点灯に切り替わらない購入した販売店・工事店・メーカーなどの専門家に相談
充電モニタ(緑色LED)が点灯していない同上
ランプモニタ(赤色LED)が点滅または点灯している同上
蓄電池(バッテリー)に白い粉が出ている同上
蓄電池(バッテリー)の使用期間は6年以上蓄電池の交換を検討
交換の目安(日本照明工業会)。蓄電池(バッテリー)は4〜6年が交換の目安、器具は8年以上で交換か専門家に相談、15年以上の器具は器具の交換を勧めている。部分的な改修や改造はせず器具ごとの交換にする
交換の目安

同じチェックシートでは、「蓄電池(バッテリー)は、4~6年が交換の目安です。」とされています。なお、表示板が「6~10年が交換の目安」とされているのは、避難口・通路誘導灯の器具の話です。器具本体は、使用期間が8年以上なら交換か専門家への相談、15年以上なら交換、という読み方になります。

器具の一部だけを直すことについては、日本照明工業会の資料で「部分的な改修や改造は上記委員会の認定品、評定品と異なることになりますので禁止されています。改修する場合は、器具毎の交換をお願いします。」とされています。器具の一部に手を加えるような改造は避け、器具ごと交換するのが基本です。使用済みの蓄電池について日本照明工業会は「防災照明器具に使用しているニッケル・カドミウム蓄電池またはニッケル・水素蓄電池は、リサイクル法で規定された小形二次電池です。」としているので、交換を頼んだ業者に回収まで任せるとよいでしょう。

ビルの管理では、器具ごとの設置年を一覧にしておくと、交換の時期をまとめて計画しやすくなります。定期検査の報告書に「不点灯」や「点灯時間不足」の指摘があった器具は、バッテリーの交換で済むのか、器具の交換が要るのかを点検業者に確かめてください。

よくある質問

非常用照明と非常灯は同じものですか

日本照明工業会は「非常用照明器具を非常灯と呼ぶ場合があります。」と説明しています。建築基準法の言葉では「非常用の照明装置」です。緑色の表示で非常口を示す誘導灯は消防法の設備で、別のものです。

小さな2階建ての事務所でも非常用照明は要りますか

事務所は建築基準法の別表第1の用途ではないので、2階建てで延べ面積が1,000㎡以下なら、126条の4の規模の条件には当たりません。ただし、採光に有効な開口部が床面積の20分の1未満の居室(無窓の居室)があれば、その居室と通路には要ります。飲食店や物販店が入っている場合は、別表第1(4)項に類する用途として要るのが原則です。

マンションの住戸の中にも付ける必要がありますか

126条の4第1項ただし書き1号で、共同住宅の住戸は対象外とされています。一方で、住戸から地上に出るまでの共用の廊下や階段は住戸ではないので、別に考えます。外に開いた外廊下で、採光上有効に直接外気に開放された通路に当たる部分は、設置が要らないとされています。

非常用照明の点検は誰がしますか

建築基準法12条3項の定期検査の対象になっている建物では、一級又は二級建築士や建築設備検査資格者などの資格者が検査し、特定行政庁に報告します。報告の対象外の建物でも、器具の点検スイッチで非常点灯に切り替わるかを確かめるなど、日常の維持管理は続けておきたいところです。

バッテリーはどれくらいで交換しますか

日本照明工業会の劣化診断チェックシートでは「蓄電池(バッテリー)は、4~6年が交換の目安です。」とされています。点検で非常点灯が30分続かない、充電モニタが点かないといった場合も、バッテリー交換などの処置が勧められています。

テナントが間仕切りを増やすときに気をつけることは

部屋を区切ると、新しくできた部屋が無窓の居室に当たったり、非常用照明の光が届かない場所ができたりすることがあります。ふすまや障子のように随時開けられるもので仕切った2室は1室とみなされますが、壁で区切る場合はそうなりません。工事の前に設計者や内装業者に、非常用照明の追加が要るかを確かめてもらってください。

まとめ

この記事の要点。根拠は建築基準法35条と施行令126条の4・126条の5、別表第1の用途・3階以上で500平方メートル超・無窓の居室・1,000平方メートル超、居室と地上へ出る通路に設け住戸や病室などは対象外、床面で1ルクス以上で予備電源つき、誘導灯は消防法で点検の報告先も別、バッテリーは4〜6年、器具は8年・15年で見直す
この記事の要点

非常用照明は、建築基準法35条と施行令126条の4・126条の5で決められた、停電したときに床を照らして避難を助ける設備です。別表第1(1)〜(4)の用途、階数が3以上で延べ面積500㎡超、無窓の居室、延べ面積1,000㎡超のどれかに当たる建物の居室と、そこから地上へ出る通路に設けます。住戸、病室、学校等などは対象外で、30㎡以下の居室も条件を満たせば対象外にできます。

付けたあとは、点検で非常点灯が続くかを確かめ、バッテリーは4〜6年、器具は8年・15年を目安に見直すことが大切です。用途の変更や間仕切りの工事で要否が変わることもあるので、工事の前に設計者や特定行政庁に確かめる習慣をつけておくと安心です。

出典(すべて2026年10月15日に原文を確認)
建築基準法(e-Gov)
建築基準法施行令(e-Gov)
消防法施行令(e-Gov)
国土交通省 非常用の照明装置の設置基準の合理化(PDF)
国土交通省 建築基準法に基づく定期報告制度について
平成20年国土交通省告示第285号(Word)
東京都都市整備局 定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧
東京都都市整備局 報告時期一覧(PDF)
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日本照明工業会 簡易版 劣化診断チェックシート
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