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消防法・同法施行令・同法施行規則(e-Gov)、東京都火災予防条例(東京都例規集)、東京消防庁の自衛消防訓練のページ・リーフレット・自衛消防訓練通知書の様式・実施結果記録書・火災総合訓練の実施要領、神田消防署の案内、さいたま市・川崎市・鎌倉市・松本広域消防局・船橋市の案内、消防庁の立入検査標準マニュアルは、2026年10月11日に原文を取得して確認しました。条文と案内は原文どおりに引用しています。通知の書類名や出し方は消防本部ごとに違うので、最後は建物を管轄する消防署で確かめてください。
年に1度、館内放送が流れて従業員が階段で外に出る。多くの職場で見かける消防訓練ですが、何回やればよいのか、消防署に何かを出す必要があるのか、出すならどの書類をどこへ出すのかは、建物の用途と地域によって変わります。検索すると「通知書」「届出」「計画報告書」と呼び名もばらばらで、迷う担当者は少なくありません。
この記事では、消防訓練を、ビルの所有者・管理会社と、テナントの防火管理担当の目線で並べます。法律のどこに訓練の義務があるか、年2回以上が義務になる建物、事前の通知、本部ごとに違う書類名、東京消防庁の通知書の書き方と出し方、訓練の種類と流れ、記録の保存、テナントが分かれたビルの全体訓練、立入検査で見られる点と罰則です。消防計画そのものの作り方と防火管理者の選任は 防火管理者とは にまとめています。

先に結論

| 項目 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 誰がやる | 防火管理者(管理権原者が行わせる) | 消防法8条1項・施行令3条の2第2項 |
| 何をやる | 消火、通報及び避難の訓練 | 消防法8条1項 |
| 何回 | 特定用途の建物は消火訓練と避難訓練を年2回以上。それ以外は消防計画で決めた回数 | 施行規則3条10項 |
| 事前の通知 | 年2回以上の対象の防火管理者は、あらかじめ消防機関に通報 | 施行規則3条11項 |
| 記録(東京都) | 実施結果記録書を訓練の日から3年間保存 | 火災予防条例55条の4・東京消防庁 |
| 罰則 | 措置命令に違反すると1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | 消防法8条4項・41条1項2号 |
ポイントは3つです。訓練の回数を条文で決めているのは、飲食店や物販店、ホテル、病院、福祉施設など特定用途の建物の「消火訓練と避難訓練」だけで、通報訓練には条文上の回数がありません。その年2回以上の訓練には、事前に消防機関へ通報する義務がついています。そして通報に使う書類の名前と出し方は、東京消防庁なら「自衛消防訓練通知書」、川崎市なら「消防訓練実施計画報告書」というように本部ごとに違います。
訓練の義務はどこに書いてあるか

消防訓練の出発点は消防法8条1項です。原文は、多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、防火管理者を定め「当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備…その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。」としています。
つまり、訓練をやらせる責任は建物やテナントの管理権原者(所有者やテナントの代表者など)にあり、実際に計画して実施するのは防火管理者です。施行令3条の2第2項は防火管理者の側から同じことを書いていて、「防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施…その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。」としています。
そして消防計画に何を書くかを決めているのが施行規則3条1項です。1号チに「消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。」とあります。消防訓練は、思いついたときにやるものではなく、消防計画に時期と中身を書き、そのとおりに回していくものという位置づけです。消防計画のほかの項目は 防火管理者の記事の消防計画の節 で一覧にしています。
何回やるのか

回数を決めているのは施行規則3条10項です。原文は「令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない。」です。
ここで回数が決まっているのは「消火訓練及び避難訓練」の2つです。通報訓練は条文に回数がなく、消防計画で決めた回数になります。さいたま市、鎌倉市、松本広域消防局の案内も、消火訓練と避難訓練は特定用途で年2回以上、通報訓練は消防計画に定める回数、という同じ並べ方をしています。
特定用途以外の建物、たとえば事務所だけのビル、工場、倉庫、学校、共同住宅などは、条文上の回数の定めがありません。消防計画に定めた回数で実施します。ただし回数がゼロでよいわけではありません。鎌倉市は、定期的な訓練の実施のため、消防計画に定める回数を年1回以上にするよう案内しています。
年2回以上が義務になる建物

規則3条10項があげる項を、施行令別表第一の言葉で並べると上の表になります。(1)項の劇場、映画館、集会場、(2)項のキャバレー、遊技場、カラオケボックス、(3)項の料理店、飲食店、(4)項の百貨店、物品販売店舗、(5)項イの旅館、ホテル、(6)項の病院、診療所、老人福祉施設、保育所、幼稚園など、(9)項イの蒸気浴場、熱気浴場、(16)項イの複合用途、(16の2)項の地下街です。
建物がどの項に当たるかの考え方は、防火対象物点検の記事でも扱っています。点検が要る建物かどうかもあわせて確かめたい場合は 防火対象物点検とは を見てください。
事務所テナントでも年2回になることがある

見落としやすいのが複合ビルです。規則3条10項は、その建物が別表第一の何項に当たるかで対象を決めています。1階に飲食店が入っていて上の階が事務所というビルは、特定用途が一部に入る(16)項イの建物です。この場合、上の階の事務所の防火管理者も「(十六)項イ…に掲げる防火対象物の防火管理者」に当たります。
船橋市は、立入検査の指摘への対応方法の中で、訓練の書類の提出が要らない非特定用途の例として「共同住宅、工場、倉庫、事務所(複合用途のビルなどのテナント部分は除く)」と書き、複合用途のビルのテナント部分を外しています。自分の会社が事務所だからといって回数の定めがないと判断せず、建物全体の用途を管理会社や消防計画で確かめてください。
事前の通知(規則3条11項)

年2回以上の訓練には、事前の通知がついています。施行規則3条11項の原文は「前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。」です。
条文上の義務は、10項の対象(特定用途の建物)の防火管理者が、消火訓練と避難訓練をするときにかかります。一方で、消防本部の案内はこれより広く求めていることがあります。さいたま市は「派遣が無い場合であっても、原則、管轄する消防署又は出張所へ提出する必要があります。」と書き、松本広域消防局は「非特定用途防火対象物で通報訓練を行う場合も管轄する消防署・出張所に連絡してください。」としています。反対に船橋市は、非特定用途の建物は提出不要としています。
| 建物・訓練 | 条文上の通知の義務 | 本部の案内の例 |
|---|---|---|
| 特定用途の建物の消火訓練・避難訓練 | あり(施行規則3条11項) | 各本部とも事前の通知を案内 |
| 特定用途以外の建物の訓練 | 条文上の定めなし | さいたま市は原則提出、船橋市は提出不要 |
| 特定用途以外の建物の通報訓練 | 条文上の定めなし | 松本広域消防局は連絡を求める |
このように、通知が要る範囲の運用は本部ごとに差があります。迷ったら、訓練の前に管轄の消防署へ電話で聞くのがいちばん早い方法です。
書類の名前は本部ごとに違う

| 本部 | 書類名 | 出し方の案内 |
|---|---|---|
| 東京消防庁 | 自衛消防訓練通知書 | 窓口に持参、FAX(神田消防署の案内)、電子申請 |
| さいたま市 | 消防訓練等の届出書 | 管轄する消防署又は出張所へ。立会い指導が要る場合は事前相談 |
| 川崎市 | 消防訓練実施計画報告書 | 市内各消防署警防課の窓口(受付時間は随時)、オンライン手続 |
| 鎌倉市 | 消防訓練計画報告書 | 2部(正本・副本)を持参か郵送。受付後に副本を返却 |
| 船橋市 | 自衛消防訓練受報書 | 消防署・分署・出張所へ直接持参・郵送・FAX・メール |
「消防訓練 通知書」「消防訓練 届出」で検索しても、自分の地域の書類にたどり着けないことがあるのはこのためです。書類名が分からないときは、管轄の消防本部のサイトで「訓練」と検索するか、消防署の予防課に問い合わせるのが近道です。
鎌倉市は、事前に計画報告書を出さずに訓練をした場合について「再度消防訓練の実施を指導する場合があります。」と書いています。せっかく訓練をしても、通知を忘れると訓練をやり直すことになりかねません。
東京消防庁の自衛消防訓練通知書

東京消防庁のリーフレットは「自衛消防訓練は、消防計画に基づき、定期的に実施することが義務付けられています。」としたうえで、手順を4つのステップで示しています。STEP2が「消防署へ通知する」で、原文は「自衛消防訓練を実施する際は、事前に消防署へ通知してください。通知は、電子申請または自衛消防訓練通知書を消防署の窓口へ提出等により行います。」です。
通知書に書くこと

東京消防庁の自衛消防訓練通知書は、日本産業規格A列4番の1枚です。宛先は管轄の消防署長で、届出者は「防火・防災管理者」か「統括防火・防災管理者」のどちらかにチェックを入れて氏名を書きます。そのあとに建物の所在と名称、事業所等の名称と階・用途、実施日時、訓練種別、参加予定人員、問合せ先、訓練概要と続きます。
訓練種別は、総合訓練と部分訓練に分かれています。様式の注は、総合訓練を「一連の自衛消防活動について、通報、消火、避難の要素を取り入れて総合的に実施する訓練」と説明しています。部分訓練は、通報訓練、消火訓練、避難訓練、地震訓練、その他から選びます。総合訓練と消火訓練には、放水ありか放水なしかの欄もあります。訓練概要の欄には「ネットで自衛消防訓練」の活用と夜間想定のチェック欄があります。
ビル全体で訓練をするときは、参加する事業所の名称や階が欄に書ききれないことがあります。様式の注は、その場合は参加事業所一覧等の資料を添付するよう求めています。
出し方は窓口・FAX・電子申請

神田消防署の案内は、通知書の提出先として、窓口へ直接持参、FAXによる提出、電子申請による提出の3つをあげています。電子申請は、東京消防庁のサイトの「各種申請>電子申請>2建物の火災予防>自衛消防訓練の通報」から入り、パソコンやスマートフォンで手続きできます。
ただし、電子申請で済ませられない訓練があります。リーフレットは「次の①~③の内容を含む訓練を実施する場合、電子申請ではなく、直接管轄の消防署にご相談ください。①訓練資器材の貸出し ②職員の派遣要請 ③119番通報を実際に行う訓練」としています。消防職員に来てもらいたい、訓練用の消火器を借りたい、本物の119番につないで通報の練習をしたい、という場合は日程に余裕をもって消防署に相談してください。
川崎市はオンライン手続(e-KAWASAKI)と窓口の両方を用意し、窓口用に PDF と Word の様式を置いています。鎌倉市は2部(正本・副本)を出し、郵送の場合は返信用の封筒を同封します。船橋市はメールでも受け付けています。どの本部も、訓練の「前」に出すことが前提です。
訓練の中身

東京消防庁は、自衛消防訓練の種類として、消火訓練、避難訓練、通報・伝達訓練、応急救護訓練、総合訓練の5つをあげています。法律が求めている「消火、通報及び避難の訓練」を土台に、けが人の手当てと、それらを一連の流れでつなぐ総合訓練を加えた形です。
| 種類 | リーフレットにある中身の例 |
|---|---|
| 消火訓練 | 消火器は火元の近くに運ぶ、安全ピンを抜く、ノズルを火元に向ける、レバーを握る、放射する。屋内消火栓(1号消火栓の場合)は起動ボタンを押す、ホースを伸ばす、開閉バルブを開く、放水する |
| 通報・連絡訓練 | 通報文の例を準備する。災害の種別(火事か救急か)、どこで(住所・建物名)、何が燃えているか、けが人や逃げ遅れた人はいるか。放送文の例を準備し、放送設備の使い方を覚える |
| 避難訓練 | 実際に避難経路を通って避難する。放送を聞いて避難方向を指示する。煙を吸わないように呼びかける。階段入り口や曲がり角に誘導員を置く |
| 応急救護訓練 | けが人の観察や止血、心肺蘇生法を覚える。AEDの使い方を覚える。搬送方法を確かめる |
| 総合訓練 | 災害発生から消防隊到着までの一連の流れを訓練する |
松本広域消防局は「消火、避難、通報の訓練は、時間が無ければ別々に実施しても構いません。」と案内しています。東京消防庁のリーフレットも、朝礼の時に消火器の取り扱いや避難経路を確認するなど、工夫次第で少ない時間でも訓練ができるとしています。年2回の訓練を毎回大がかりな総合訓練にする必要はなく、部分訓練を組み合わせて回すこともできます。
総合訓練の流れ

東京消防庁の「火災総合訓練の実施要領」は、総合訓練を、想定のあと8つの実施項目で組み立てています。最初に出火場所、燃焼物件、延焼の程度と範囲を決め、発生場所の確認、消防機関への通報、館内への連絡、初期消火、区画の形成、避難誘導、応急救護、指揮と進みます。
見落としやすいのが「区画の形成」です。初期消火のあとに出火室の扉を閉め、防火戸・防火シャッターを閉め、エレベーター、エスカレーターの運転中止を確かめる、という段取りが入っています。避難誘導では、階段入口や通路角など主要な避難経路に誘導員を配置し、逃げ遅れの有無を確認します。最後の指揮では、消防隊が着いたら誘導し、災害状況、避難状況、活動状況、消防用設備等の作動状況を伝えます。
要領は、消火水や消火剤の放出は「一連の活動とは別に実施することでもよい。」としています。屋内で放水できない建物では、流れの確認と放水の練習を分けて行う方法もあります。設備の場所や作動のしかたは、ふだんの 消防設備点検 の報告書でも確かめられます。
通報訓練で気をつけること

通報訓練で本物の119番を使うときは、事前の了解が前提です。東京消防庁の実施要領は「119 番回線による通報は、あらかじめ消防署の了解を取って行う。」としています。鎌倉市は、通報訓練開始の5分ほど前に指令情報課に連絡し、119番通報の冒頭に「訓練火災、訓練火災」と言うよう案内しています。
ふだんの通報訓練は、会社の内線電話などを使った模擬で十分に練習できます。東京消防庁のリーフレットは、落ち着いて通報できるように通報文の例を準備することをすすめています。
訓練でけがをしないために

消防庁の立入検査標準マニュアルは、訓練の確認の項目の中で、燃焼中の食用油に水をかけたり、至近距離から消火器を放射したりした際に油が飛散して負傷する事例があること、エレベーターを使用して避難し、煙の拡大により負傷する事例も見られることを書いています。
鎌倉市は、建物に設置している消火器で訓練をする場合は模擬で実施するよう求め、各消防署所で訓練用の水消火器を用意していると案内しています。東京消防庁のリーフレットも、訓練に適した動きやすい服装でけがに十分注意して実施するよう書いています。

計画から記録まで

東京消防庁のリーフレットの手順は、計画を立てる、消防署へ通知する、訓練を実施する、実施結果を検討する、の4つです。計画の段階で日時、場所、訓練の内容などを事前に決めて参加者に知らせ、通知を出し、訓練をして、結果を次の訓練に生かします。リーフレットは、この流れを計画、実施、結果の検討、見直しの順にくり返す形で示し、「自衛消防訓練は継続が大事!」としています。
東京都は記録を3年間保存

東京都では、訓練のあとに記録をつくって保存する決まりがあります。火災予防条例55条の4第2項は、防火管理者は「防火管理に係る消防計画に基づき自衛消防訓練を実施したときは、規則で定めるところにより、その実施結果記録を作成し、これを保存しなければならない。」とし、3項は統括防火管理者にも同じことを求めています。
東京消防庁の「自衛消防訓練実施結果記録書」のページは、記録書は「消防機関への提出は必要ありませんが、訓練を実施した日から3年間保管する義務があります。」とし、根拠として火災予防条例施行規則第11条の4をあげています。対象者は防火管理者、統括防火管理者、防災管理者、統括防災管理者です。
東京以外では扱いが分かれます。鎌倉市は、訓練の後に消防署所へ報告や書類を出す必要はないとし、そのかわりに事後検証をして防火管理維持台帳に綴じるよう求めています。松本広域消防局は、各訓練を実施したら管轄の消防署・出張所へ報告するよう案内しています。川崎市には「消防訓練実施結果報告書」という様式もあります。訓練の後に何を出すかも、管轄の本部の案内で確かめてください。
記録は、あとで立入検査や防火対象物点検で訓練の実施状況を説明するときの材料にもなります。通知の控えと一緒に、消防計画のそばに綴じておくと探しやすくなります。
全員が集まれないときは

シフト勤務やリモートワークで、全員がそろう日をつくれない職場もあります。東京消防庁は「ネットで自衛消防訓練」を公開していて、「いつでも・どこでも・ひとりでもをコンセプトに、集合せずに実施できる新たな自衛消防訓練の方法」と説明しています。リーフレットは、集合して行う訓練と併用することで、1回の訓練で全員が参加できるとしています。英語、韓国語、中国語(繁体字、簡体字)にも対応しています。
ただし、動画を見ただけで終わらせないことが求められています。東京消防庁は、視聴後に勤務先の建物に設置してある消防用設備等の場所や避難経路を実際に確認するよう求め、神田消防署は、防火管理者は動画による訓練の実施状況を確認するよう書いています。通知書の訓練概要の欄にも、ネットで自衛消防訓練の活用にチェックを入れる欄があります。
テナントが分かれたビルの訓練

管理について権原が分かれている高層建築物などでは、テナントごとの防火管理者とは別に、建物全体を見る統括防火管理者を置きます。消防法8条の2第1項は、統括防火管理者に「当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施」などを行わせるとしています。施行規則4条1項3号も、全体についての消防計画に「消火、通報及び避難の訓練…の定期的な実施に関すること」を定めるとしています。
つまり、このようなビルでは、各テナントが自分の部分で行う訓練と、建物全体で行う訓練の2本立てになります。消防庁の立入検査標準マニュアルは、複数の管理権原に分かれている建物では、営業時間が異なることや関係者の意思疎通が図れていないことから「防火対象物全体の訓練が実施されていない場合がある。」と書いています。
全体訓練の日程をそろえ、テナントに参加をうながし、通知書に参加事業所の一覧を付けるのは、実務では管理会社やビルの防災センターが担うことが多い部分です。統括防火管理者の選任や全体についての消防計画は 防火管理者とは の統括防火管理者の節で書いています。
自衛消防組織が要る大きな建物

さらに規模の大きい建物では、消防法8条の2の5で自衛消防組織を置くことになります。施行令4条の2の4第1号は、特定の用途の建物で、地階を除く階数が11以上なら延べ面積10,000平方メートル以上、5以上10以下なら20,000平方メートル以上、4以下なら50,000平方メートル以上を対象としています。地下街は延べ面積1,000平方メートル以上です。
この建物の防火管理者は、施行規則4条の2の10第1項で、自衛消防組織の業務について「自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練に関すること。」を消防計画に定めます。自衛消防組織の統括管理者などに必要な講習や、東京都の自衛消防技術試験については 自衛消防技術試験 で書いています。
やらないとどうなるか
立入検査で見られること

消防の立入検査では、訓練の実施状況が確認されます。消防庁の立入検査標準マニュアルは「防火管理者が作成する消防計画又は統括防火管理者が作成する全体についての消防計画に基づく、消火、通報及び避難訓練が必要な回数実施されているか確認する。また、訓練が実施されている場合は、その旨の通報がなされたか、実施した内容は防火対象物の実態に即したものか確認する。」としています。
回数だけでなく、通報(通知)をしたか、内容が建物に合っているかまで見られるということです。船橋市は、立入検査でよくある指摘の1つとして「消防訓練の未実施・未届」をあげ、対応方法として、書類を出したうえで防火管理者を中心に訓練をするよう案内しています。立入検査の流れや、指摘を受けたあとの改修(計画)報告書は 消防の立入検査 にまとめています。
命令と罰則

訓練をしていないことに、いきなり罰金がかかるわけではありません。消防法8条4項は、消防長又は消防署長は、防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が「法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。」としています。命令の相手は防火管理者ではなく管理権原者です。
命令が出ると、8条5項が準用する5条3項により、標識の設置などで命令が出たことが公示されます。そしてこの命令に違反すると、消防法41条1項2号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になり、45条により法人にも罰金刑が科されます。松本広域消防局も「防火管理業務の不履行として刑事責任を問われることがありますので計画どおりに実施しましょう。」と注意しています。
誰が何をするか

所有者やテナントの代表者などの管理権原者は、防火管理者を定め、訓練を行わせる立場です。命令が出るときの相手方もここです。防火管理者は、消防計画に基づいて訓練を計画し、通知を出し、実施して記録を残します。統括防火管理者がいる建物では、建物全体の訓練をまとめます。
管理会社の役割は法令で決まっているものではありませんが、全体訓練の日程調整、テナントへの周知、通知書の取りまとめを任されることが多い部分です。管理委託契約のときに、誰が通知書を出し、誰が記録を保管するかを決めておくと、担当者が替わっても訓練が途切れにくくなります。
今年の訓練の前に確かめること

- 建物全体が別表第一の何項に当たるか。特定用途が一部でも入っていれば(16)項イの可能性がある
- 消防計画に書いた訓練の回数と時期。年2回以上の対象なら、消火訓練と避難訓練の回数が足りているか
- 前回の訓練の日付と、通知の控え
- 管轄の消防署の書類名と出し方(窓口・FAX・電子申請・郵送)
- 119番の実通報、訓練用消火器などの借用、職員の派遣を頼むか。頼むなら早めに消防署へ相談
- 統括防火管理者がいる建物は、全体訓練との日程
- 終わった後の記録(東京都は実施結果記録書を3年間保存)
防災管理者を置く大規模な建物では、火災だけでなく地震などを想定した訓練も消防計画に入ってきます。防災管理の点検については 防災管理点検とは で書いています。
よくある質問
消防訓練は年に何回やればよいですか
飲食店や物販店、ホテル、病院、福祉施設、それらが入る複合ビル、地下街などの特定用途の建物は、消火訓練と避難訓練を年2回以上です(施行規則3条10項)。それ以外の建物は、消防計画で決めた回数です。通報訓練は、どちらの建物でも消防計画で決めた回数です。
消防署への通知は、訓練の何日前までに出せばよいですか
施行規則3条11項は「あらかじめ」としていて、日数は書いていません。期限の目安は本部ごとの案内によります。職員の派遣や資器材の貸出しを頼む場合は日程の調整が要るので、早めに相談するよう船橋市などが案内しています。
消防職員に立ち会ってもらわないといけませんか
立会いは必須ではありません。鎌倉市は「消防職員の立ち合いは基本的には行いません。」とし、松本広域消防局も「消防署の立会いがなくても消防訓練は実施できます。」と書いています。指導を受けたい場合は、事前に消防署へ相談してください。
事務所だけのビルでも通知は要りますか
条文上の通知の義務は特定用途の建物の消火訓練と避難訓練にかかります。ただ、さいたま市は原則として提出を求め、松本広域消防局は非特定用途でも通報訓練なら連絡を求めるなど、本部によって運用が違います。管轄の消防署の案内で確かめてください。
訓練の結果を消防署に報告する必要はありますか
東京消防庁は、実施結果記録書の消防機関への提出は不要とし、訓練の日から3年間の保管を求めています。鎌倉市も実施後の報告は不要としています。一方、松本広域消防局は実施後に報告するよう案内しています。
動画を見るだけで訓練をしたことになりますか
東京消防庁は「ネットで自衛消防訓練」を集合訓練と併用する方法として案内し、視聴後に消防用設備等の場所や避難経路を実際に確かめるよう求めています。神田消防署は、防火管理者が実施状況を確認するよう書いています。動画だけで済ませる扱いになるかは、管轄の消防署に確かめてください。
消防庁の訓練マニュアルはありますか
さいたま市と松本広域消防局は、総務省消防庁が作成した消防訓練マニュアルを紹介しています。消火訓練、通報訓練、避難訓練のPDFがあります。
この記事の要点

この記事の出典
出典(すべて2026年10月11日に原文を確認)
消防法(e-Gov)
消防法施行令(e-Gov)
消防法施行規則(e-Gov)
東京都 火災予防条例(東京都例規集)
東京消防庁 自衛消防訓練~もしもの時に備えて訓練していますか?~
東京消防庁 リーフレット「ネットで自衛消防訓練」(PDF)
東京消防庁 自衛消防訓練通知書(Word)
東京消防庁 自衛消防訓練実施結果記録書
東京消防庁 火災総合訓練の実施要領(PDF)
東京消防庁 神田消防署 自衛消防訓練を実施しましょう
東京消防庁 ネットで自衛消防訓練
東京消防庁 電子申請 自衛消防訓練の通報
さいたま市 防火管理者の皆様へ 消防訓練を実施していますか?
川崎市 消防訓練実施計画報告書
鎌倉市 消防訓練を実施される皆様へ
松本広域消防局 消防訓練
船橋市 消防法令に基づく検査(立入検査)における指摘事項の対応方法
消防庁 立入検査標準マニュアル(PDF)




