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建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法・建築物衛生法)・同法施行令・同法施行規則(e-Gov)、厚生労働省の「建築物環境衛生管理基準について」「特定建築物の定義に関するQ&A」などの解説、e-Statの令和6年度衛生行政報告例、東京都健康安全研究センターの案内は、2026年10月11日に原文を取得して確認しました。管理会社や業者の料金は、この記事では扱っていません。最後に判断するのは所在地の保健所なので、迷うときは図面を持って相談してください。
ビル管法は、正式には「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」といいます。建築物衛生法とも呼ばれます。大きな事務所ビルや商業ビル、ホテルなどで、空気・水・排水・清掃・ねずみ等の防除を、決まった基準と頻度で管理させるための法律です。
「うちのビルは対象なのか」「対象なら何をいつまでにすればいいのか」「やっていないと何が起きるのか」。この3つを、条文と国・東京都の資料の原文で1つずつ確かめながら並べます。あわせて、全国の保健所が実際に調べた結果、どの項目で基準に合わないビルが多いのかも、国の統計から数字で出します。

先に結論

| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 対象になる建物 | 興行場・百貨店・店舗・事務所・学校・旅館などの用途で延べ面積3,000㎡以上(専ら学校教育法1条の学校などは8,000㎡以上)。これを特定建築物という(施行令1条) |
| 最初にすること | 使用開始から1か月以内に、保健所を経由して届出(法5条) |
| 人を置く義務 | 建築物環境衛生管理技術者を、免状を持つ人から特定建築物ごとに選任(法6条・規則5条) |
| 日々の管理 | 建築物環境衛生管理基準に従う。空気環境の測定は2か月以内ごとに1回、排水設備の掃除と大掃除は6か月以内ごとに1回、貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回など(施行規則) |
| 記録 | 帳簿書類を備え、測定・点検の記録は5年間保存(法10条・規則20条) |
| 違反したとき | 届出をしない、技術者を選任しない、帳簿を備えない、立入検査を拒むなどは30万円以下の罰金(法16条)。法人にも罰金刑(法17条) |
| 特定建築物でない建物 | 多数の者が使う建物は、管理基準に従うよう努める努力義務(法4条3項) |
一言でまとめると、ビル管法は「大きなビルの衛生管理を、人と記録と頻度で回させる法律」です。建物の構造や外壁の安全を見る建築基準法12条の定期報告とは別の法律で、所管も保健所です。建築基準法の定期報告は 建築基準法12条の定期報告 にまとめています。
特定建築物に当たるかどうか
ビル管法の義務の多くは「特定建築物」にかかります。法2条は、特定建築物を次のように定めています。
具体的な用途と面積は、政令(施行令1条)が決めています。

用途は4つのグループ
施行令1条が挙げる用途は、1号が興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館又は遊技場、2号が店舗又は事務所、3号が第一条学校等以外の学校(研修所を含む。)、4号が旅館です。これらの用途に使う部分の延べ面積が3,000㎡以上なら特定建築物になります。
学校教育法1条の学校と幼保連携型認定こども園だけで使う建物は、基準が上がって延べ面積8,000㎡以上です。小学校・中学校・高校・大学などがこれに当たります。専門学校や各種学校、企業の研修所は3号の「第一条学校等以外の学校」として3,000㎡が基準になります。
共同住宅・病院・工場・倉庫は政令の用途にない
法2条の条文には「共同住宅」という言葉がありますが、施行令1条の各号を見る限り、共同住宅は用途に入っていません。病院、工場、倉庫も同じです。ただし、たとえばマンションの下層階に店舗や事務所が入っていて、その部分の合計が3,000㎡以上になれば、建物として特定建築物に当たりうる点に注意が要ります。
延べ面積の数え方

面積の数え方は、厚生労働省の「特定建築物の定義に関するQ&A」の問2が具体的です。事務所・店舗の専用部分(A)だけでなく、廊下・階段・洗面所のような共用部分(B)と、百貨店内の倉庫や事務所附属の駐車場のような附属部分(C)も足します。数えないのは、独立した診療所の専用部分のように、特定用途以外の専用部分(D)だけです。
つまり、事務所の床だけを足して3,000㎡に届かなくても、共用部分と附属の駐車場を足すと超える、ということがあります。テナントの面積だけで「うちは対象外」と決めないほうが安全です。
また、問1は、2棟以上が渡り廊下や地下通路でつながっている場合について「特定建築物になるかどうかの判断は、一つの建築物ごとに行います。その個数の決定は、原則として建築基準法の取扱いによって決まります。」としています。
迷いやすい建物

同じQ&Aは、迷いやすい建物の扱いも示しています。倉庫や駐車場は、多数の者の使用・利用という要件を欠くので、単独では特定建築物になりません(問4)。体育館は一般に該当しませんが、興行場などに当たればなり得ます。フィットネスクラブも一般に該当しません。研究所は、自然科学系は一般に除外、人文・社会科学系は事務所に当たりなり得る、という扱いです(問6)。駅や地下街は一般に該当しないものの、店舗・事務所などの面積の合計が要件を満たせば該当する場合があります(問3)。
最後に判断するのは保健所です。用途が混ざった建物や、増築・用途変更をした建物は、図面と用途別の面積表を持って、所在地の保健所に相談するのが近道です。
全国にいくつあるか(48,608施設)

国の統計「衛生行政報告例」(令和6年度)によると、令和6年度末の全国の特定建築物は48,608施設です。用途別に見ると、事務所が19,767と最も多く、店舗10,616、旅館6,892、学校4,475、その他3,841、百貨店1,760、興行場1,257と続きます。事務所ビルが全体の4割ほどを占めています。
建築物環境衛生管理技術者を選任している建築物は48,438です。同じ年度に、都道府県・保健所設置市・特別区は報告の徴収を21,355回、立入検査を6,997回行っています。国や地方公共団体の建物への説明・資料の要求は3,021回でした。一方で、改善命令、使用停止・使用制限、改善の勧告は、いずれも統計上「-」で、件数はありませんでした。
命令まで行くことはまれでも、立入検査そのものは毎年数千回あります。検査で見られるのは、届出の控え、技術者の選任、帳簿書類と、管理基準どおりに測定・点検・清掃をしているかです。
届出 使い始めて1か月以内

届出の義務は法5条にあります。届け出るのは、特定建築物の所有者です。所有者以外に建物全部の管理について権原を持つ人がいるときは、その人が届け出ます。法律はこれを「特定建築物所有者等」と呼んでいます。
届出先は都道府県知事で、保健所を設置する市と特別区では市長・区長です。厚生労働省の案内は、所在場所を管轄する保健所を経由して出すとしています。
新たに当たったときと、変わったとき
新築のときだけではありません。政令の改正、用途の変更、増築による延べ面積の増加などで、使っている建物が新たに特定建築物に当たったときも、その日から1か月以内に届け出ます(5条2項)。届け出た事項が変わったとき、用途の変更などで特定建築物に当たらなくなったときも、1か月以内の届出が要ります(5条3項)。
所有者が変わった、管理技術者を替えた、テナントの入れ替えで用途の面積が変わった、といった場面が「変更」に当たります。ビルの売買や管理会社の切り替えのときに、届出が漏れやすいところです。
届け出る事項
施行規則1条は、届け出る事項を9つ挙げています。名称、所在場所、用途、用途に使う部分の延べ面積、構造設備の概要、維持管理について権原を持つ人の氏名と住所、所有者等の氏名と住所(法人は名称・所在地・代表者)、管理技術者の氏名・住所・免状番号(兼任なら兼任先の名称と所在場所)、そして使用されるに至った年月日です。
東京都の場合

東京都では、届出先が面積で分かれます。東京都健康安全研究センターの「特定建築物の衛生情報」によると、23区の特定建築物は、延べ床面積が10,000㎡を超えるものが東京都、10,000㎡以下がそれぞれの区の所管です。多摩地区(八王子市と町田市を除く)と島しょは、すべて東京都の所管です。
都の様式は、特定建築物届(第1号様式)、変更(廃止)届(第2号様式)、防錆剤の使用開始届(第3号様式)と変更届(第4号様式)です。このほか、毎年、飲料水貯水槽等維持管理状況報告書を出します。立入検査で指導を受けたときは、立入検査指導事項措置報告書で、どう直したかを報告します。
建築物環境衛生管理技術者を選ぶ

特定建築物所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければなりません(法6条1項)。いわゆる「ビル管理技術者」「ビル管」と呼ばれる資格者です。
建物ごとに1人、兼任は確認つき
施行規則5条1項により、技術者は特定建築物ごとに選任します。1人が2つ以上の特定建築物を兼ねるときは、業務の遂行に支障がないことを確かめる必要があります(規則5条2項・3項)。所有者等とは別に維持管理の権原を持つ人がいれば、その人の意見をあらかじめ聴きます(同4項)。この兼任の確認の仕組みは、令和4年4月1日から施行されています。
常駐は必ずしも要らない
厚生労働省の「所有者等の皆様へ」は、「選任する」とは、法律上の関係(例えば委任関係)があれば足り、身分関係を要せず、常駐は必ずしも必要ではない、と説明しています。自社の社員でなくても、管理会社の資格者と委任関係を結ぶ形で選任できる、ということです。
技術者の意見は尊重する
法6条2項は、技術者が、管理基準どおりに維持管理されるよう必要があると認めるときは、権原を持つ人に意見を述べることができ、権原を持つ人はその意見を尊重しなければならない、としています。名前だけ置いて、意見を聞かない、という形は法律の想定と合いません。
免状の取り方と手数料
免状は、講習会の課程を修了するか、試験に合格した人に、厚生労働大臣が交付します(法7条1項)。試験は、2年以上の実務に従事した人でなければ受けられません(法8条5項)。手数料は政令で決まっていて、受験手数料が17,900円、免状の交付が2,300円(電子申請は2,250円)、再交付が1,900円(電子申請は1,800円)です。
技術者がする仕事

東京都健康安全研究センターの「建築物環境衛生管理技術者が行うべき業務」は、仕事を5つに分けています。年間の維持管理計画を立てること、計画どおりに業務を回して帳簿書類を整え、清掃や点検の実施状況を監督すること、空気環境や水質などの測定・検査をして評価すること、見つかった問題を直すこと、そして所有者などに改善の意見を述べることです。
建築物環境衛生管理基準と頻度
特定建築物の維持管理について権原を持つ人は、政令で定める建築物環境衛生管理基準に従って維持管理しなければなりません(法4条1項)。基準の中身は、空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除などです(同2項)。

| 分野 | やること | 頻度(施行規則) |
|---|---|---|
| 空気環境 | 浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・温度・相対湿度・気流の測定 | 2か月以内ごとに1回 |
| 空気環境 | ホルムアルデヒドの測定(新築・増築・大規模の修繕や模様替えの後) | 使用開始後、直近の6月1日から9月30日の間に1回 |
| 空調設備 | 冷却塔・冷却水、加湿装置、排水受けの点検 | 使用開始時と、1か月以内ごとに1回 |
| 空調設備 | 冷却塔・冷却水の水管・加湿装置の清掃 | 1年以内ごとに1回 |
| 飲料水 | 給水栓の遊離残留塩素の検査 | 7日以内ごとに1回 |
| 飲料水 | 水質検査(定期の項目) | 6か月以内ごとに1回 |
| 飲料水 | 水質検査(消毒副生成物など) | 毎年6月1日から9月30日の間に1回 |
| 飲料水 | 貯水槽の清掃 | 1年以内ごとに1回 |
| 雑用水 | pH値・臭気・外観、遊離残留塩素の検査 | 7日以内ごとに1回 |
| 雑用水 | 大腸菌・濁度の検査 | 2か月以内ごとに1回 |
| 排水 | 排水に関する設備の掃除 | 6か月以内ごとに1回 |
| 清掃 | 日常の掃除のほかの大掃除 | 6か月以内ごとに1回 |
| ねずみ等 | 発生・生息場所、侵入経路、被害の状況の統一的な調査 | 6か月以内ごとに1回 |
頻度はすべて「〇か月以内ごとに1回」という書き方です。たとえば2か月以内ごとなら、前回の測定日から2か月を超えないうちに次をやる、という意味になります。年6回と数えて、月をまたいで間が空きすぎると基準を外れます。
空気環境(概要)

空気調和設備がある場合の基準は、施行令2条1号イの表で7項目です。浮遊粉じんの量0.15mg/㎥以下、一酸化炭素6ppm以下、二酸化炭素1000ppm以下、温度18℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下、気流0.5m/秒以下、ホルムアルデヒド0.1mg/㎥以下です。機械換気設備だけの場合は、温度と相対湿度を除いた5項目になります。
令和4年4月1日から、温度の下限が17℃以上から18℃以上へ、一酸化炭素が10ppm以下から6ppm以下へ変わりました。測定は2か月以内ごとに1回、各階ごとに、居室の中央部の床上75cm以上150cm以下で行います。なお、外気を取り入れる機能のない家庭用のルームエアコンは、空気調和設備にも機械換気設備にも当たらないと厚生労働省は説明しています。
給水・雑用水

飲み水は、給水栓で遊離残留塩素を百万分の0.1以上に保ちます(結合残留塩素なら百万分の0.4以上)。汚染のおそれがあるときは、百万分の0.2以上(結合残留塩素なら1.5以上)です。検査は7日以内ごとに1回です(施行規則4条)。
雨水や再生水をトイレの洗浄や散水に使う「雑用水」にも基準があります。散水・修景・清掃用は、pH値5.8以上8.6以下、臭気と外観に異常がないこと、大腸菌が検出されないこと、濁度2度以下です。水洗便所用は濁度を除く4項目です。し尿を含む水を、散水・修景・清掃用の原水に使ってはいけません(施行規則4条の2)。
飲料水の貯水槽の清掃(1年以内ごとに1回)の中身と手順は、貯水槽清掃の記事 で詳しく扱っています。
排水・清掃・ねずみ等
排水に関する設備の掃除は6か月以内ごとに1回です(施行規則4条の3)。排水槽、排水管、厨房のグリース阻集器などがここに入ります。清掃は、日常の掃除のほかに大掃除を6か月以内ごとに1回行います。ねずみ等は、発生場所・生息場所・侵入経路・被害の状況を6か月以内ごとに1回、統一的に調べ、結果にもとづいて必要な措置をとります(施行規則4条の5)。
厚生労働省は、基準に合っていないだけで、すぐに行政処分や罰則の対象になるわけではない、と説明しています。基準違反があり、かつ人の健康を損なうおそれが具体的に予見されるような事態のときに、改善命令などの対象になります。とはいえ、基準を外れた状態を放置してよいという意味ではありません。
保健所の調査で基準に合わなかった割合

衛生行政報告例には、保健所などが調べた件数と、そのうち基準に合わなかった件数が項目ごとに載っています。令和6年度の全国の数字から、不適の件数を調査の件数で割ると、次のとおりです。
| 項目 | 不適/調査 | 割合(約) |
|---|---|---|
| 相対湿度 | 8,355/13,968 | 59.8% |
| 温度 | 5,697/14,250 | 40.0% |
| 二酸化炭素 | 3,196/17,728 | 18.0% |
| 排水受けの点検 | 1,333/9,294 | 14.3% |
| 帳簿書類の備付け | 1,916/15,018 | 12.8% |
| 加湿装置の汚れの点検 | 964/7,856 | 12.3% |
| 排水設備の清掃 | 1,201/13,841 | 8.7% |
| 大掃除 | 1,154/17,229 | 6.7% |
| ねずみ等の防除 | 679/17,784 | 3.8% |
| 水質検査の実施 | 670/19,273 | 3.5% |
| 気流 | 521/16,764 | 3.1% |
| ホルムアルデヒドの量 | 19/947 | 2.0% |
| 浮遊粉じん | 273/17,472 | 1.6% |
| 貯水槽の清掃 | 155/18,841 | 0.8% |
| 一酸化炭素 | 98/17,478 | 0.6% |
いちばん多いのは相対湿度で、調べた建物のおよそ6割で基準の40%以上70%以下に入っていませんでした。次が温度の約40.0%、二酸化炭素の約18.0%です。用途を事務所に絞ると、相対湿度は3,950/6,436で約61.4%、二酸化炭素は2,002/7,358で約27.2%でした。
空気以外では、排水受けの点検が約14.3%、帳簿書類の備付けが約12.8%、加湿装置の汚れの点検が約12.3%と、1割を超えています。どれも「やっていても記録がない」「頻度が足りない」で引っかかりやすい項目です。逆に貯水槽の清掃は約0.8%と、ほとんどの建物でできています。
冬の乾燥で湿度が下がる、外気を多く入れると温度が保てない、という悩みはビルの管理者の多くが抱えています。数字の上でも、そこが最大の課題になっていることがわかります。
帳簿書類 5年間の保存

法10条は、特定建築物所有者等に帳簿書類を備えておくよう求めています。中身は施行規則20条が4つに分けています。
| 号 | 書類 | 保存 |
|---|---|---|
| 1号 | 空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ等の防除の状況(測定・検査の結果、設備の点検・整備の状況を含む) | 5年間 |
| 2号 | 平面図・断面図、維持管理に関する設備の配置と系統を明らかにした図面 | (半)永久(厚生労働省の案内) |
| 3号 | 管理技術者の兼任で、業務に支障がないと確認した結果の書面(聴いた意見の内容を含む) | 兼ねている間(同) |
| 4号 | その他、維持管理に関し環境衛生上必要な事項の書類 | 5年間 |
帳簿書類を備えない、記載しない、うその記載をする、は30万円以下の罰金の対象です(法16条3号)。そして前の章で見たとおり、全国の調査では約12.8%の建物で帳簿書類の備付けが基準に合っていませんでした。測定や清掃を業者に任せていても、報告書を受け取ってとじておかなければ、帳簿としては残りません。
東京都の案内は、設備を更新したときに系統図や機器表も直しておくよう求めています。図面が古いままだと、2号の書類として役に立たなくなります。
立入検査・改善命令・罰則

立入検査(法11条)
都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)は、必要があると認めるとき、特定建築物所有者等に報告をさせ、職員を立ち入らせて設備や帳簿書類、維持管理の状況を検査させ、関係者に質問させることができます。ただし、住居に立ち入るときは、居住者の承諾が要ります。検査に来るのは、環境衛生監視員と呼ばれる職員です(施行規則21条2項)。
改善命令と使用の停止(法12条)
条文のとおり、命令が出るのは「基準に従っていない」と「健康を損なうおそれなどの事態がある」の2つがそろったときです。国や地方公共団体の公用・公共用の特定建築物には、11条と12条は適用されず、代わりに説明・資料の要求や勧告の仕組みがあります(法13条)。
30万円以下の罰金(法16条)と両罰規定(法17条)
| 法16条の号 | 罰金の対象 |
|---|---|
| 1号 | 5条の届出をしない、うその届出をした |
| 2号 | 6条1項に違反した(管理技術者を選任しない) |
| 3号 | 帳簿書類を備えない、記載しない、うその記載をした |
| 4号 | 報告をしない、うその報告をした。立入りを拒む・妨げる・忌避した。質問に正当な理由なく答えない、うその答弁をした |
| 5号 | 12条の命令・処分に違反した |
| 6号 | 12条の7の命令に違反した |
いずれも30万円以下の罰金です。法17条は両罰規定で、法人の代表者や従業者が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑を科します。なお、衛生行政報告例には罰則の適用件数の項目が見当たらず、件数は取得できませんでした。
登録業 8区分と17,842営業所

ビル管法には、ビルの衛生管理を請け負う事業者の登録制度もあります(法12条の2)。清掃、空気環境の測定、空気調和用ダクトの清掃、飲料水の水質検査、飲料水の貯水槽の清掃、排水管の清掃、ねずみ等の防除、環境衛生総合管理の8区分で、営業所ごとに都道府県知事の登録を受けることが「できる」という任意の制度です。登録の有効期間は6年です。
令和6年度末の全国の登録営業所は17,842で、飲料水貯水槽清掃業6,435、清掃業3,904、ねずみ昆虫等防除業2,688、環境衛生総合管理業2,168、排水管清掃業1,169、空気環境測定業872、飲料水水質検査業495、空気調和用ダクト清掃業111です。
登録を受けた営業所は「登録建築物清掃業」などと表示できます(法12条の3)。法12条の10は、登録を受けないで、これと同じか似た表示をしてはならないとしています。業者に頼むときは、この表示と登録の有効期間を確かめるのが1つの目安です。東京都内の登録営業所は、東京都健康安全研究センターの一覧で探せます。業者の選び方と費用の考え方は 法定点検の費用と業者の選び方 にまとめています。
東京都が上乗せで指導していること

東京都は、法令の頻度に上乗せした指導をしています。東京都健康安全研究センターの「特定建築物の衛生管理基準」から、主なものを並べます。
| 項目 | 法令 | 東京都の指導 |
|---|---|---|
| 新築ビルの空気環境測定 | 2か月以内ごとに1回 | 竣工してから1年程度は毎月1回 |
| 飲料水の色・濁り・臭い・味・残留塩素 | 残留塩素は7日以内ごとに1回 | 毎日、給水系統別に末端給水栓で |
| 排水槽の清掃 | 6か月以内ごとに1回 | 原則として4か月以内ごとに1回以上 |
| ねずみ等の点検 | 6か月以内ごとに1回の統一的な調査 | 原則として月に1回以上 |
| 粉じん計 | 較正された機器 | 1年以内に較正を受けたもの |
飲料水の水質検査も、竣工後、給水設備の使用開始前に全52項目を検査し、その後は省略できない11項目などを6か月以内ごとに行うよう示しています。都内のビルでは、法令の頻度だけを守っていても、保健所の立入検査で都の指導に照らして指摘を受けることがあります。
立入検査の前に見ておくこと

東京都健康安全研究センターは、立入検査で指摘の多い視点を公開しています。その中には、外気の二酸化炭素濃度が300ppm以下になっていないか(測定の誤りの疑い)、冬に加湿していないのに相対湿度が40%以上になっていないか、排水受けを1か月以内ごとに点検しているか、貯水槽の清掃報告書に清掃に関わった人全員の検便の記録があるか、設備の更新に合わせて系統図や機器表を直しているか、といった項目があります。
数字が「きれいすぎる」記録も、かえって疑われるということです。測定値はそのまま記録し、基準を外れたときはどう対応したかを書き残しておくほうが、検査では説明しやすくなります。

建築基準法の定期報告との違い
ビルの法定点検には、ビル管法とは別に、建築基準法12条の定期報告があります。こちらは建物の構造・外壁・防火設備や、換気・排煙・非常用照明・給排水などの建築設備が、安全に保たれているかを調べて特定行政庁に報告する制度です。ビル管法が「中にいる人の衛生」を見るのに対し、建築基準法12条は「建物と設備の安全」を見ます。
名前が似ている「特定建築物」も、2つの法律で中身が違います。ビル管法の特定建築物は用途と延べ面積3,000㎡(学校は8,000㎡)で決まり、建築基準法12条の対象は用途と規模で決まり、自治体によっても違います。建築基準法側の調査は 特定建築物定期調査の記事 で扱っています。
よくある質問
ビル管法と建築物衛生法は同じ法律ですか
同じ法律です。正式名は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」で、略してビル管法、ビル管理法、建築物衛生法などと呼ばれます。
延べ面積が3,000㎡未満なら何もしなくてよいですか
特定建築物でない建物でも、多数の者が使用し、又は利用する建物は、管理基準に従って維持管理するよう努めなければなりません(法4条3項)。届出や技術者の選任の義務はかかりませんが、努力義務はあります。
マンションはビル管法の対象ですか
施行令1条の用途に共同住宅は入っていません。ただし、建物の中に店舗や事務所などの部分があり、その延べ面積の合計が3,000㎡以上なら特定建築物に当たりえます。所在地の保健所で確かめてください。
管理技術者は常駐させないといけませんか
厚生労働省は、選任は委任関係などの法律上の関係があれば足り、身分関係を要せず、常駐は必ずしも必要ではないと説明しています。兼任させるときは、業務に支障がないことを確かめ、その書面を帳簿書類として残します。
ビル管法の違反で罰金になることはありますか
届出をしない、管理技術者を選任しない、帳簿書類を備えない、立入検査を拒む、命令に違反する、などは30万円以下の罰金の対象です(法16条)。法人にも罰金刑が科されます(法17条)。
東京23区のビルはどこに届け出ますか
延べ床面積が10,000㎡を超えるものは東京都、10,000㎡以下はそれぞれの区が所管です。都の様式は特定建築物届(第1号様式)です。
この記事の要点

この記事の出典
出典(すべて2026年10月11日に原文を確認)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(e-Gov)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(e-Gov)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(e-Gov)
厚生労働省 建築物衛生のページ
厚生労働省 建築物環境衛生管理基準について
厚生労働省 特定建築物の所有者等の皆様へ
厚生労働省 建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について
厚生労働省 衛生行政報告例(抜粋)
厚生労働省 特定建築物の定義に関するQ&A
e-Stat 令和6年度衛生行政報告例 生活衛生 第1表
e-Stat 令和6年度衛生行政報告例 生活衛生 第4表
東京都健康安全研究センター 特定建築物の衛生情報
東京都健康安全研究センター 特定建築物の衛生管理基準
東京都健康安全研究センター 建築物環境衛生管理技術者が行うべき業務
東京都健康安全研究センター 建築物衛生法に基づく登録営業所の一覧




