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貯水槽(受水槽)の清掃は義務?簡易専用水道の検査・10立方メートルの境目・費用・業者の選び方【2026年版・条文つき】

2026 9/23
改修・交換工事
2026年9月23日2026年9月26日
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貯水槽(受水槽)の清掃は義務?簡易専用水道の検査・10立方メートルの境目・費用・業者の選び方【2026年版・条文つき】

この記事の情報

法令は e-Gov の現行版(水道法・水道法施行令・水道法施行規則・建築物における衛生的環境の確保に関する法律とその施行令・施行規則)で確認し、検査の方法を定めた告示、清掃の技術上の基準を定めた告示、国土交通省の調査資料、東京都水道局と東京都保健医療局の案内、埼玉県と名古屋市の案内、各社が自社サイトで公開している料金表とあわせて2026年9月23日に確認した内容です。水道行政は2024年4月に厚生労働省から国土交通省と環境省へ移っています。そのため自治体の案内には「厚生労働大臣の登録」という移管前の表記が残っているものがあります。この記事は現行の条文を正として書いています。有効容量が10立方メートル以下の貯水槽は、水道法ではなく自治体の条例や要綱で扱いが決まるため、地域によって内容が違います。最終的な確認は、建物の所在地の水道事業者と保健所にお願いします。

マンションやビルを持っていると、管理会社から「今年の貯水槽清掃の見積もりです」という紙が回ってきます。金額は数万円。毎年同じことをやっている気がするけれど、そもそもこれは法律で決まっているのか、やらなかったらどうなるのか、この金額が妥当なのかが分からない。そういう相談がとても多い場所です。

結論から書くと、水道水をいったん受水槽にためてから給水している建物は、受水槽の大きさによって義務の中身が変わります。有効容量の合計が10立方メートルを超えれば水道法の「簡易専用水道」になり、清掃と検査が法律の義務になります(水道法34条の2 e-Gov)。10立方メートル以下なら水道法の義務はかかりませんが、代わりに都道府県や市区町村の条例や要綱で扱いが決まります。ここが最初の分かれ道です。

この記事では、①自分の建物はどちらなのか ②何を、いつ、誰がやるのか ③やらないとどうなるのか ④清掃と検査の中身は何か ⑤誰に頼むのか ⑥費用はどれくらいか、の順に、条文と行政の公表資料の原文を確かめながら整理しました。

貯水槽の清掃と検査の要点。有効容量10立方メートル超は簡易専用水道。清掃は毎年1回以上、検査は毎年1回以上。検査を受けないと100万円以下の罰金
受水槽をもつ建物の義務の要点
目次
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まず自分の建物がどれに当たるかを決める

水道水をためている建物は「貯水槽水道」

水道法は、水道事業者の配水管から水をもらい、それを建物の中の水槽にためてから使う仕組みを貯水槽水道と呼んでいます。定義は水道法14条2項5号にあります。「貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」

東京都水道局は、受水槽が何のためにあるのかをこう説明しています。「配水管の圧力だけでは水が届かないような建物の高層階へ給水するために、配水管からの水道水を一旦受ける水槽のことです。受水槽からポンプを使って高層階へ給水します。」(東京都水道局 貯水槽水道に関するQ&A Q1)

配水管から受水槽へ入り、ポンプで高置水槽へ上げ、各階の蛇口へ配る流れ。分岐部から蛇口までが設置者の財産
受水槽と高置水槽の仕組み

大事なのは、その水槽から先の管理責任が誰にあるかです。東京都水道局のQ2はこう答えています。「配水小管の分岐部から蛇口までの水道施設は、お客さまの財産になります。したがって、貯水槽及びそれ以降の施設の管理は、水質も含めて設置者(所有者や管理組合等)が行うことになります。」(東京都水道局 Q2)

水道局が責任を持つのは配水管までで、そこから先は建物の持ち主の設備です。蛇口の水がおかしくなっても、水道局が調べて直してくれる範囲ではありません。ここが、毎年の清掃と検査が必要になる理由の土台になります。

管理責任の境目。配水小管の分岐部までが水道事業者、そこから蛇口までは設置者の財産で管理責任も設置者
管理責任の境目は配水小管の分岐部

境目は有効容量10立方メートル

水道法3条7項の原文はこうです。「この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く。」

「政令で定める基準」を決めているのが水道法施行令2条です。原文は一文だけです。「法第三条第七項ただし書に規定する政令で定める基準は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が十立方メートルであることとする。」

つまり、有効容量の合計が10立方メートルを超えると簡易専用水道になり、10立方メートル以下なら水道法の簡易専用水道からは外れます。ちょうど10立方メートルは「以下」なので外れる側です。

有効容量の合計が10立方メートルを超えると簡易専用水道。10立方メートル以下は小規模貯水槽水道。ちょうど10立方メートルは以下の側
境目は有効容量の合計10立方メートル(水道法施行令2条)

有効容量の数え方でつまずく人が多い

「うちの受水槽は10立方メートルくらいだと思う」で止まってしまう方が多いところです。東京都のパンフレットは有効容量をこう定義しています。「受水槽の最高水位と最低水位の間に貯留され、適正に利用可能な水量のことです。」(東京都「簡易専用水道の衛生管理」パンフレット)水槽の外寸でもタンクの公称容量でもなく、実際に使える水の量です。

数え方のルールは埼玉県の案内が簡潔です。「受水槽を有効に使用できる部分の容量をいいます。高置水槽の容量は有効容量には含めません。受水槽が複数ある場合は、合算して判断します。」(埼玉県「マンション等の受水槽(タンク)の設置者にはこんな義務があります。」)

東京都のパンフレットにも、受水槽が2つある建物の例が図で載っています。8立方メートルと7立方メートルで合計15立方メートルになり、簡易専用水道に当たるという例です(東京都「簡易専用水道の衛生管理」)。1つずつは10立方メートル以下でも、足して超えれば対象になります。

有効容量は最高水位と最低水位の間の水量。高置水槽は含めない。受水槽が複数なら合算する。8立方メートルと7立方メートルで合計15立方メートル
有効容量の数え方(埼玉県・東京都の説明)
数え方の論点扱い出典
有効容量とは受水槽の最高水位と最低水位の間に貯留され、適正に利用可能な水量東京都パンフレット
高置水槽の容量有効容量には含めない埼玉県
受水槽が複数ある場合合算して判断する埼玉県
ちょうど10立方メートル「10立方メートル以下」に当たるので簡易専用水道から外れる水道法施行令2条

なお、この記事で書いている数え方は、東京都と埼玉県が公表している説明です。自治体によって案内の書き方が違うことがあるので、判断に迷う大きさのときは、所在地の保健所か水道事業者に水槽の図面を見せて確かめるのが確実です。

そもそも対象にならない建物

水槽があっても簡易専用水道に当たらない場合があります。東京都のパンフレットは「ただし、工場に設置しているなど、全く飲み水として使用しない場合は、簡易専用水道には該当しません。」と書いています(東京都「簡易専用水道の衛生管理」)。埼玉県も同じ趣旨で、「まったく飲み水として使用しない場合(工業用水、消防用水などとして利用する)」「地下水(井戸水)を汲んで受水槽に貯めている場合」を対象外として挙げています(埼玉県)。

井戸水や沢水をためている場合は、別の規制が待っています。東京都のパンフレットの原文です。「また、地下水(井戸水)や沢水などを受水槽にためて供給しているものは、簡易専用水道ではありませんが、100人を超える居住者に供給する場合又は一日最大給水量が20立方メートルを超える場合は、水道法で「専用水道」として別の規制を受けます。」

専用水道の基準は水道法施行令1条にあります。他の水道から供給を受ける水だけを水源とする場合の除外基準は「一 口径25ミリメートル以上の導管の全長 1,500メートル 二 水槽の有効容量の合計 100立方メートル」、一日最大給水量の基準は「人の飲用その他の国土交通省令で定める目的のために使用する水量が20立方メートルであること」です。専用水道になると水道技術管理者を置くなど義務が一段重くなります。

簡易専用水道に当たらない場合。飲み水としてまったく使わない場合、井戸水や沢水を水源にしている場合
水槽があっても対象にならない場合
水道の種類。水道事業の水道、専用水道、簡易専用水道、小規模貯水槽水道の4つ。水源と規模で分かれる
水槽をもつ建物は4つのどれかに入る
区分水源規模の条件根拠
専用水道自家用の水道(井戸水なども含む)100人を超える者に居住に必要な水を供給、または一日最大給水量が20立方メートル超。ただし他の水道から供給を受ける水のみを水源とし、口径25ミリメートル以上の導管の全長1,500メートル以下かつ水槽の有効容量の合計100立方メートル以下なら除く水道法3条6項・水道法施行令1条
簡易専用水道水道事業の水道から供給を受ける水のみ水槽の有効容量の合計が10立方メートル超水道法3条7項・水道法施行令2条
小規模貯水槽水道水道事業の水道から供給を受ける水のみ水槽の有効容量の合計が10立方メートル以下水道法上の定義はない。自治体の条例・要綱が定義する
対象外水槽があっても飲用にまったく使わない(工業用水・消防用水など)規模にかかわらない東京都・埼玉県の案内
集合住宅の外観を見上げながらタブレットで確認している点検者
受水槽の大きさと台数を図面で確かめるところから始まる(イメージ)

簡易専用水道(10立方メートル超)の義務は2つ

簡易専用水道に当たると、水道法が設置者に2つの義務を課します。水道法34条の2の全文です。

「簡易専用水道の設置者は、国土交通省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。」「2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、国土交通省令(簡易専用水道により供給される水の水質の検査に関する事項については、環境省令)の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」

1項が「決められた基準どおりに管理すること」、2項が「その管理の状態を第三者に検査してもらうこと」です。この2つはセットで、片方だけでは足りません。

簡易専用水道の義務は2つ。1項の管理基準に従った管理と、2項の定期検査の受検
水道法34条の2が課す2つの義務

義務1 管理基準(水道法施行規則55条)

1項の「国土交通省令で定める基準」が水道法施行規則55条です。4つしかありません。原文をそのまま引きます。

号管理基準の原文
一水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと。
二水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
三給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
四供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。

「貯水槽の清掃は義務か」という問いの答えは、この一号です。条文は「水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと」と書いています。毎年1回以上で、しかも定期に、です。2年に1回では足りませんし、思い出したときにやるのも「定期に」には当たりません。

管理基準は4つ。毎年1回以上の掃除、汚染を防ぐ措置、異常時の水質検査、健康被害のおそれがあるときの給水停止と周知
水道法施行規則55条の管理基準4つ

そして一号が言っているのは水槽であって、受水槽だけではありません。高置水槽も圧力水槽も水槽です。東京都のパンフレットも「受水槽、高置水槽の清掃は、毎年1回以上、定期的に行ってください。」と書いています。見積もりを取るときに受水槽だけの金額を見ていると、高置水槽の分が抜けていることがあります。

二号の「必要な措置」は条文が中身を書いていません。そこで各自治体が指導の形で具体化しています。東京都は「1ヶ月に1回程度の、水槽及びその周囲の点検」「地震・大雨等があった場合の、水槽及びその周囲の点検」「上記点検に際して発見された欠陥等の速やかな改善・整備」を挙げています(東京都保健医療局「簡易専用水道の情報」)。

義務2 毎年1回以上の検査(水道法34条の2第2項・施行規則56条)

回数を決めているのは水道法施行規則56条です。「法第三十四条の二第二項の規定による検査は、毎年一回以上定期に行うものとする。」「2 検査の方法その他必要な事項については、国土交通大臣(簡易専用水道により供給される水の水質の検査に関する事項については、環境大臣)が定めるところによるものとする。」

この検査は、現場で言われている「法定検査」です。清掃とは別物で、清掃業者が清掃したからといって受けたことにはなりません。清掃は自分でやる(またはやってもらう)管理、検査は第三者に見てもらう手続きです。

清掃と法定検査は別。清掃は設置者側の管理、法定検査は登録を受けた第三者による受検
清掃と法定検査は別の手続き

検査をやれるのは、条文が書いているとおり「地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」に限られます(水道法34条の2第2項)。登録を受けた検査機関の一覧は国土交通省が公表しています。

国土交通省の上下水道の「検査機関」のページにある簡易専用水道検査機関登録簿(PDF)は「令和8年7月9日時点」(原文は全角)の表示で全9ページあります。当サイトでこのPDFの行を機械的に数えたところ、掲載されている機関は121でした。登録番号は最大172まで振られていますが欠番があるため、番号の最大と機関数は一致しません。数え方は、行の先頭に登録番号があり同じ行に登録年月日が入っている行を数える、という方法です。

環境省側のページには「水質検査機関(令和8年7月1日現在、193機関)」という記載があり、簡易専用水道検査機関の登録簿については「(国土交通省のHPに移動します)」と案内されています(環境省「検査機関」)。水質検査機関と簡易専用水道検査機関は別の登録なので、混ぜないように注意してください。

検査できるのは地方公共団体の機関か、国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者。登録簿は国土交通省が公表
検査を受けられる相手は法律で限定されている

2024年4月に所管が変わっている

ここで一つ、資料を読むときの注意があります。水道行政は2024年4月に厚生労働省から国土交通省と環境省へ移りました(国土交通省「厚生労働省から移管される水道整備・管理行政に係る事業」)。条文の主語もこれに合わせて変わっていて、いまの水道法34条の2第2項は「国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」です。

ところが、自治体の案内やパンフレットには移管前の「厚生労働大臣の登録を受けた検査機関」という表記が今も残っているものがあります。たとえば東京都水道局のQ3は「①厚生労働大臣の登録を受けた検査機関による検査の受検(年1回)」と書いています(東京都水道局 Q3)。東京都のパンフレットも同じです。

これは登録が無効になったという話ではありません。東京都保健医療局が注記を出しています。「※改正水道法施行前の令和6年3月31日以前に登録を受けた検査機関は厚生労働大臣の登録をされた期間となっていますが、改正水道法内に国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けたとみなす、という規定があります。そのため、登録の有効期限までは厚生労働大臣の登録であっても、国土交通大臣及び環境大臣の登録と同様の扱いとなります。」(東京都保健医療局「簡易専用水道の情報」)

読み方としては、古い表記のページを見つけても慌てる必要はなく、いま新しく探すなら国土交通省の登録簿を見る、と覚えておけば足ります。

水道行政は2024年4月に厚生労働省から国土交通省と環境省へ移管。自治体の案内には旧表記が残っている
所管の移管と、資料に残る旧表記の読み方
項目移管前の表記現行条文の表記
管理基準を定める省令厚生労働省令国土交通省令
検査の登録をする大臣厚生労働大臣国土交通大臣及び環境大臣
水質の検査に関する事項厚生労働省令・厚生労働大臣環境省令・環境大臣
登録簿の掲載先厚生労働省のページ国土交通省のページ(環境省からリンク)

検査では何を見られるのか

検査の中身は、「簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項」(平成15年7月23日厚生労働省告示第262号)が決めています。水道法施行規則56条2項が「大臣が定めるところによる」としている、その大臣が定めたものがこれです。改正の表示は「(平二六厚労告一四八・令六厚労告一七一・一部改正)」で、令和6年の改正の附則は「この告示は、令和六年四月一日から適用する。」となっています。所管の移管に合わせた改正です。

この告示は、検査項目を3つに分けています。原文です。「検査項目は、原則として、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査、給水栓における水質の検査及び書類の整理等に関する検査とする。」

検査項目は3つ。施設と管理の状態に関する検査、給水栓における水質の検査、書類の整理等に関する検査
告示262号が定める検査の3区分
法令の階層。水道法34条の2、水道法施行規則56条、告示262号の順に細かくなる
検査の中身は法律から告示まで3段で決まっている

1つめ 施設と管理の状態(水を抜かずに見る)

告示の第三はこう書いています。「簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態が、当該簡易専用水道の水質に害を及ぼすおそれのあるものであるか否かを検査するものであり、当該簡易専用水道に設置された水槽の水を抜かずに、次に掲げる検査を行うものとする。」

  • 1 水槽その他当該簡易専用水道に係る施設の中に汚水等の衛生上有害なものが混入するおそれの有無についての検査
  • 2 水槽及びその周辺の清潔の保持についての検査
  • 3 水槽内における沈積物、浮遊物質等の異常な物の有無についての検査

「水を抜かずに」と明記されているので、この検査で断水することはありません。断水するのは清掃のほうです。ここを混同して「検査の日は水が止まるのか」と心配される方が多いのですが、止まりません。

具体的に何をどう見るかは別表第一に9項目でまとまっています。判定基準まで書かれているので、そのまま自己点検のチェックリストとして使えます。

番号検査事項判定基準(告示の原文)
一水槽の周囲の状態点検、清掃、修理等に支障のない空間が確保されていること。/清潔であり、ごみ、汚物等が置かれていないこと。/水槽周辺にたまり水、湧水等がないこと。
二水槽本体の状態点検、清掃、修理等に支障のない形状であること。/亀裂し、又は漏水している箇所がないこと。/雨水等が入り込む開口部や接合部のすき間がないこと。/水位電極部、揚水管等の接合部が固定され、防水密閉されていること。
三水槽上部の状態水槽上部は水たまりができない状態であり、ほこりその他衛生上有害なものが堆積していないこと。/水槽のふたの上部には他の設備機器等が置かれていないこと。/水槽の上床盤の上部には水を汚染するおそれのある設備、機器等が置かれていないこと。
四水槽内部の状態汚泥、赤さび等の沈積物、槽内壁又は内部構造物の汚れ、塗装の剥離等が異常に存在しないこと。/掃除が定期的に行われていることが明らかであること。/外壁の塗装の劣化等により光が透過する状態になっていないこと。/当該施設以外の配管設備が設置されていないこと。/流入口と流出口が近接していないこと。/水中及び水面に異常な浮遊物質が認められないこと。
五水槽のマンホールの状態ふたが防水密閉型のものであって、ほこりその他衛生上有害なものが入らないものであり、点検等を行う者以外の者が容易に開閉できないものであること。/マンホール面は、槽上面から衛生上有効に立ち上がっていること。
六水槽のオーバーフロー管の状態管端部からほこりその他衛生上有害なものが入らない状態にあること。/管端部の防虫網が確認でき、正常であること。/管端部と排水管の流入口等とは直接連結されておらず、その間隔は逆流の防止に十分な距離であること。
七水槽の通気管の状態管端部からほこりその他衛生上有害なものが入らない状態にあること。/管端部の防虫網が確認でき、正常であること。/通気管として十分な有効断面積を有するものであること。
八水槽の水抜管の状態管端部と排水管の流入口等とは直接連結されておらず、その間隔は逆流の防止に十分な距離であること。
九給水管等の状態当該施設以外の配管設備と直接連結されていないこと。/水を汚染するおそれのある設備の中を貫通していないこと。

別表第一の備考には、沈積物の目安も書かれています。「四の項の下欄については、水槽の沈積物がおおむね年間3センチメートルを超えない程度にあること。」

外観検査の9項目。水槽の周囲、本体、上部、内部、マンホール、オーバーフロー管、通気管、水抜管、給水管
外観検査で見られる9項目(告示262号 別表第一)

2つめ 給水栓の水質(6項目)

第四の原文です。「給水栓における水質について、次に掲げる検査を行うものとする。1 臭気、味、色及び濁りに関する検査 2 残留塩素に関する検査」判定基準は別表第二に6項目で決まっています。

番号検査事項判定基準(告示の原文)
一臭気異常な臭気が認められないこと。
二味異常な味が認められないこと。
三色異常な色が認められないこと。
四色度5度以下であること。
五濁度2度以下であること。
六残留塩素検出されること。

色の検査のやり方まで備考に書かれています。「三の項に係る検査については、無色透明のガラス製容器(約200ミリリットル入り)に採水し、気泡等が上昇消失した後、肉眼で黒色紙、白色紙等を背景として透視し、沈積物及び浮遊物質の有無を含めて検査すること。」

六の残留塩素の基準が「検出されること」だけになっているのには理由があります。備考の説明です。「六の項に係る検査については、水道水の長期間の滞留、水槽又は管の汚れ、汚水の混入による汚染等により残留塩素が消費されることに着目したものであり、検出されない場合には、その原因の究明に努める」。残留塩素は水が汚れていると消えます。つまり残留塩素は、水槽の中で何か起きていないかを映す鏡として見られています。

給水栓の水質検査6項目。臭気、味、色、色度5度以下、濁度2度以下、残留塩素は検出されること
給水栓の水質検査6項目(告示262号 別表第二)

東京都水道局も、水が水槽に長くとどまると残留塩素が下がると注意しています。「貯水槽の容量が使用水量に比べて著しく大きい場合、水道水が貯水槽に貯留される時間(滞留時間)が長くなります。その結果、水道水に含まれる残留塩素の濃度が下がり、消毒効果が失われることがあります。貯水槽の容量(水位)を適正に保つようにお願い致します。」(東京都水道局 Q4)

入居率が下がって使用水量が減った建物で、この問題が出ます。東京都水道局のQ12も同じ点に触れています。「ただし、設置当初と利用形態が変わり、極端に使用水量が少なくなった場合などは、残留塩素消費量が多くなり、検出されない場合、健康に被害を及ぼす可能性があります。」(東京都水道局 Q12)

残留塩素が下がる流れ。使用水量が減ると滞留時間が延び、残留塩素が消費され、消毒効果が失われる
使用水量が減ると残留塩素が下がる

3つめ 書類の整理と保存

第五の原文です。「次に掲げる書類の整理及び保存の状況について、検査を行うものとする。1 簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面 2 受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図 3 水槽の掃除の記録 4 その他の管理についての記録」

判定基準は別表第三で、「簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面、受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図及び水槽の掃除の記録その他の帳簿書類の適切な整理及び保存がなされていること。」となっています。備考では「水槽の掃除の記録その他の帳簿書類とは、水槽の掃除の記録、水槽の点検の記録及び給水栓における水質検査の記録等の簡易専用水道の管理についての記録をいう。」と説明されています。

書類検査で見られるもの。設備の配置と系統の図面、受水槽の周囲の平面図、水槽の掃除の記録、その他の管理の記録
書類の整理と保存の検査(告示262号 別表第三)

保存の年数は水道法側に定めがありませんが、東京都は指導として期間を示しています。「水槽の清掃記録、点検記録、水質検査記録等の5年間の保存」「施設図面の常時保管」(東京都保健医療局)。名古屋市も「設備や系統の図面、貯水槽周囲の構造物の配置図面については、永久的に保存しましょう。また、貯水槽の掃除、点検などの管理記録は、関係書類とともに5年間保存しましょう。」としています(名古屋市「簡易専用水道の維持管理」)。

記録の保存。清掃記録と点検記録と水質検査記録は5年間、施設の図面は常時保管
記録の保存期間(東京都・名古屋市の指導)

検査当日に用意しておくものは検査機関が公表しています。日本建築衛生管理教育センターの案内では「1 給水施設に関する図面(簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面、水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図)2 水槽の掃除の記録 3 飲料水の外観検査記録、残留塩素測定記録、給水設備の点検記録 4 水槽マンホール、水槽室、フェンス等の鍵(検査過程で解錠を必要とするもの)」とされています。公益財団法人日本建築衛生管理教育センター「簡易専用水道検査」の記載です。

検査当日に用意するもの。給水施設の図面、水槽の掃除の記録、外観検査と残留塩素の測定記録、水槽やフェンスの鍵
検査当日に用意しておくもの

この書類の欠落が、実は最も指摘されやすい項目です。あとで実データを出しますが、指摘を受けた施設のうち書類の整備保存に関する指摘は無視できない割合を占めています。清掃は業者に頼んでいるのに報告書をファイルしていない、という形でつまずきます。

特に衛生上問題があるときは直ちに行政へ報告

告示の第七には、検査で重い問題が見つかったときの扱いが書かれています。検査者は設置者に対し、「直ちに当該簡易専用水道の所在地を管轄する都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長)にその旨を報告するよう助言を行うこと」とされていて、その対象が6つ列挙されています。

特に衛生上問題があるとされる場合(告示の原文)
(一)汚水槽その他排水設備から水槽に汚水若しくは排水が流入し、又はそのおそれがある場合
(二)水槽内に動物等の死骸がある場合
(三)給水栓における水質の検査において、異常が認められる場合
(四)水槽の上部が清潔に保たれず、又はマンホール面が槽上面から衛生上有効に立ち上がっていないため、汚水等が水槽に流入するおそれがある場合
(五)マンホール、通気管等が著しく破損し、又は汚水若しくは雨水が水槽に流入するおそれがある場合
(六)その他検査者が水の供給について特に衛生上問題があると認める場合
特に衛生上問題があるとされる6つの場合。汚水の流入、動物の死骸、水質の異常、水槽上部、マンホールの破損、その他
この6つに当たると直ちに行政へ報告(告示262号 第七)

報告するのは検査機関ではなく設置者です。検査機関はあくまで「報告するよう助言」する立場になっています。東京都水道局も、検査で指摘を受けたときの相談先を「衛生行政担当部局である保健所等へ御相談下さい。」と案内しています(東京都水道局 Q13)。

ビル管法の対象なら書類検査でよい場合がある

告示の第六には例外があります。「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号。以下「建築物衛生法」という。)の適用がある簡易専用水道については、第二の規定にかかわらず、水道法第34条の2第2項の規定に基づく簡易専用水道の管理に係る検査の検査項目は、書類検査とすることができる。」

東京都はこれをもう一歩踏み込んで運用しています。「「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和45年法律第20号)の適用がある簡易専用水道の検査は同法に基づく立入検査又は以下の「飲料水貯水槽等維持管理状況報告書」の提出をもって、実施したとみなします。」(東京都保健医療局)

ビル管法の特定建築物は、もともと同法でもっと細かい管理を求められています。同じことを二重に見る必要がないので、書類で足りるという整理です。自分の建物が特定建築物に当たるかは、このあとの章で判定できます。

やらないとどうなるか

検査を受けないと100万円以下の罰金

罰則は水道法54条にあります。「次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。」の八号が「第三十四条の二第二項の規定に違反した者」です。34条の2第2項は検査の受検義務ですから、検査を受けなければ100万円以下の罰金という構造になっています。

さらに水道法56条に両罰規定があります。「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第五十二条から第五十三条の二まで又は第五十四条から第五十五条の二までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」54条は対象に入っているので、法人が所有する建物なら法人にも罰金刑が及びます。

埼玉県の案内も同じことを書いています。「検査を怠った設置者は、保健所または、権限を移譲された市町村の担当部署の指導を受けるばかりでなく、罰則が適用されることもありますので注意してください。」(埼玉県)

罰則。検査を受けないと100万円以下の罰金。立入検査の拒否や虚偽報告は30万円以下の罰金。給水停止命令違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。法人にも両罰
水道法の罰則
違反の内容根拠法定刑
毎年1回以上の検査を受けない(34条の2第2項違反)水道法54条8号100万円以下の罰金
都道府県知事の報告徴収に応じない、虚偽の報告をする、立入検査を拒む・妨げる・忌避する水道法55条3号30万円以下の罰金
給水停止命令に違反する水道法53条10号1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
法人の従業者等が上の違反をした場合水道法56条行為者のほか法人にも各本条の罰金刑

なお、水道法の刑名は刑法の改正に合わせて「拘禁刑」になっています。自治体のパンフレットには改正前の「懲役」のまま残っているものがあるので、条文を引くときは e-Gov の現行版を見るのが確実です。

罰金の前に、行政の指示と給水停止命令がある

実際には、いきなり罰金になるわけではありません。まず水道法39条3項で、都道府県知事が報告を求めたり立入検査をしたりできます。「都道府県知事は、簡易専用水道の管理の適正を確保するために必要があると認めるときは、簡易専用水道の設置者から簡易専用水道の管理について必要な報告を徴し、又は当該職員をして簡易専用水道の用に供する施設の在る場所若しくは設置者の事務所に立ち入らせ、その施設、水質若しくは必要な帳簿書類を検査させることができる。」

次が水道法36条3項の指示です。「都道府県知事は、簡易専用水道の管理が第三十四条の二第一項の国土交通省令で定める基準に適合していないと認めるときは、当該簡易専用水道の設置者に対して、期間を定めて、当該簡易専用水道の管理に関し、清掃その他の必要な措置を採るべき旨を指示することができる。」条文に「清掃」という言葉がはっきり出てきます。

それでも従わないときが水道法37条の給水停止命令です。「都道府県知事は専用水道又は簡易専用水道の設置者が、前条第一項又は第三項の規定に基づく指示に従わない場合において、給水を継続させることが当該水道の利用者の利益を阻害すると認めるときは、その指示に係る事項を履行するまでの間、当該水道による給水を停止すべきことを命ずることができる。」

行政の流れ。立入検査と報告徴収、期間を定めた指示、給水停止命令、罰則の順に進む
罰則の手前にある行政の段階(水道法39条3項・36条3項・37条)

名古屋市は、この流れを現場の言葉で書いています。「設置者の管理が不適正な場合は、指導票などにより改善の指導を行いますので、速やかに改善してください。改善指導に従わない場合は、貯水槽の清掃その他関係設備の補修などの改善命令を行うことがあります。」(名古屋市)

実際にどれくらい動いているか

国土交通省が公表している「貯水槽水道及び飲用井戸等に係る衛生管理状況について」(PDF)に、行政の動きの実数が載っています。令和4年度の調査結果です。

立入検査件数口頭指導文書指導改善命令
都道府県(下記を除く)16870493
保健所設置市を除く市216160588
保健所設置市2,8996187524
特別区78960
合計3,36185786515

立入検査は年間3,361件、改善命令は15件です。対象施設の数と比べるとごく一部にしか手が回っていません。ただ、これは「見つからないから大丈夫」という話にはなりません。水質の事故が起きたとき、記録が残っていなければ管理していた証明ができないからです。

記録が残っていないと管理していた証明ができない。清掃報告書、点検記録、水質検査記録、検査済みを証する書類
記録は、管理していたことの唯一の証拠になる
令和4年度の行政の動き。立入検査3,361件、口頭指導857件、文書指導865件、改善命令15件
簡易専用水道に対する行政の立入検査と指導(令和4年度)

全国でどれくらい守られているのか

同じ調査に、受検率の実数が出ています(国土交通省の調査資料)。

平成30令和元令和2令和3令和4
検査対象施設数207,368207,020206,461207,498206,856
検査実施施設数162,574162,249161,878161,348161,356
受検率78.4%78.4%78.4%77.8%78.0%

令和4年度で、全国の簡易専用水道は206,856施設。そのうち検査を受けたのが161,356施設で、受検率は78.0%です。逆に言うと、5施設に1施設以上が受けていません。しかも5年間ほとんど動いていません。

令和4年度の簡易専用水道。検査対象206,856施設のうち検査実施161,356施設。受検率78.0%
簡易専用水道の受検率は78.0%(令和4年度)

検査を受けた施設のうち、指摘を受けた割合も出ています。令和4年度の検査指摘施設数は36,102、検査指摘率は22.4%です。項目別の内訳は、検査指摘施設数に対する割合(複数回答あり)で次のようになっています。

指摘された項目令和4年度の割合
受水槽のマンホールの状態20.8%
受水槽本体の状態14.5%
水槽の周囲の状態11.9%
受水槽内部の状態11.8%
高置水槽の通気管の状態12.4%
高置水槽のマンホールの状態11.6%
受水槽の通気管の状態10.4%
受水槽の水抜き管の状態9.6%
受水槽のオーバーフロー管の状態8.0%
受水槽上部の状態7.0%
高置水槽本体の状態7.4%
高置水槽内部の状態6.6%
残留塩素0.6%
書類の整備保存の状況26.6%

いちばん多いのが書類の整備保存の状況で26.6%、設備ではマンホールの状態が20.8%です。水質そのものの指摘は残留塩素の0.6%をはじめとしてどれも1%未満で、問題の大半は設備の状態と書類にあります。

令和4年度の検査指摘率22.4%。内訳の上位は書類の整備保存26.6%、受水槽のマンホール20.8%、受水槽本体14.5%
指摘の中身は設備と書類に偏っている

マンホールが指摘の筆頭に来るのは分かりやすい理由があります。別表第一の五が求めているのは「ふたが防水密閉型のものであって、ほこりその他衛生上有害なものが入らないものであり、点検等を行う者以外の者が容易に開閉できないものであること」と「マンホール面は、槽上面から衛生上有効に立ち上がっていること」です。施錠が外れている、パッキンが劣化している、水槽の上面と同じ高さになっていて雨水が入りうる、といった状態はすぐに見つかります。

マンホールが指摘されやすい理由。防水密閉、容易に開閉できないこと、槽上面から衛生上有効に立ち上がっていること
マンホールで見られている3つのこと

「特に衛生上問題があった」ために報告された施設は、令和4年度で1,268施設、報告率0.8%でした。その内訳(報告施設数に対する割合・複数回答あり)は次のとおりです。

報告された内容令和4年度の割合
マンホール、通気管等が著しく破損し、又は汚水若しくは雨水が水槽に流入するおそれがある場合30.6%
その他検査者が水の供給について特に衛生上問題があると認める場合25.9%
汚水槽その他排水設備から水槽に汚水若しくは排水が流入し、又はそのおそれがある場合12.4%
給水栓における水質の検査において、異常が認められる場合9.5%
水槽内に動物等の死骸がある場合4.4%
水槽の上部が清潔に保たれず、又はマンホール面が槽上面から衛生上有効に立ち上がっていないため、汚水等が水槽に流入するおそれがある場合3.1%

水槽内に動物の死骸があった施設が4.4%あります。毎年の清掃と、毎月の点検が何のためにあるのかが分かる数字です。

特に衛生上問題があったため報告された1,268施設の内訳。マンホールや通気管の破損30.6%、汚水の流入12.4%、動物の死骸4.4%
「特に衛生上問題があった」1,268施設の中身(令和4年度)

10立方メートル以下の建物はどうなるのか

ここからが、この記事でいちばん間違われやすいところです。有効容量が10立方メートル以下の貯水槽は、水道法の簡易専用水道に当たりません。ということは、水道法の清掃義務も検査義務も罰則もかかりません。

ただし、何もしなくてよいという意味ではありません。多くの自治体が、この小さい貯水槽を条例や要綱の対象にしています。しかもその対象の切り方が自治体ごとに違います。

10立方メートルを境に、上は水道法の義務、下は自治体の条例と要綱。根拠になる法令が変わる
10立方メートルを境に、根拠になるルールが変わる

自治体ごとに対象の切り方が違う

国土交通省の調査資料に、小規模貯水槽水道に係る条例・要綱等の制定状況が都道府県別・保健所設置市別・特別区別に一覧でまとまっています。そこから抜き出すと、こういう違いがあります。

自治体種類施行日対象施設(資料の表記のまま)
東京都条例H14.12.25全施設(専ら一戸の住宅に供給するもの等を除く)
宮城県条例S50.7.15<V≦10
福島県条例S54.10.15<V≦10
茨城県条例S56.4.15m3超
千葉県条例S55.3.2950人以上
群馬県要領H23.2.2510m3以下
神奈川県要綱H25.4.1全施設
青森県要領H26.4.15m3超
沖縄県要領S60.7.1510m3以下
埼玉県–––
長野県–––
兵庫県–––

「全施設」と書いてある自治体もあれば、「5立方メートル超」で線を引いている自治体、「50人以上」と人数で切っている自治体、そもそも欄が空欄の自治体もあります。市や区の単位でも違います。

市・区種類施行日対象施設(資料の表記のまま)
横浜市条例H3.12.25全施設(専ら一戸の住宅に供給するものを除く)
川崎市条例H7.10.110m3以下
名古屋市要綱S52.1.1全施設
大阪市要綱S60.4.1全施設
京都市要領H2.10.2910m3以下
仙台市要綱H12.4.15m3以下
福島市条例H24.12.275m3未満
倉敷市要領H13.11.2910m3未満
船橋市条例H15.4.150人以上
柏市条例H20.4.150人以上
八王子市条例H19.4.1全施設
町田市条例H23.4.1全施設(専ら一戸の住宅に供給するものを除く)
千代田区要綱S59.6.1全施設
世田谷区要綱H10.2.1全施設
目黒区要綱H8.7.1延べ面積500m2以上
大田区要綱S52.4.1全施設
江戸川区要綱S52.5.23全施設
小規模貯水槽水道の条例や要綱の対象の切り方。全施設、5立方メートル超、10立方メートル以下、50人以上、延べ面積500平方メートル以上と自治体でばらばら
10立方メートル以下の扱いは自治体ごとに違う

同じ大きさの受水槽を持っていても、東京都の多摩地域なら条例の対象、隣の県なら要綱の指導だけ、別の市なら人数で切られるので対象外、ということが実際に起こります。だから「10立方メートル以下だから何もしなくていい」とは言えませんし、逆に「条例で義務だ」と決めつけることもできません。所在地の保健所か水道事業者に確かめる以外に確定させる方法はありません。

受検率は3.5%

小規模貯水槽水道の側の数字も、同じ資料に出ています。

平成30令和元令和2令和3令和4
検査対象施設数82,011807,200803,115788,501788,542
検査実施施設数27,82228,08127,01928,55527,555
受検率3.4%3.5%3.4%3.6%3.5%

令和4年度で、対象788,542施設のうち検査を実施したのは27,555施設、受検率3.5%です。簡易専用水道の78.0%と比べると桁が違います。施設の数そのものは小規模貯水槽水道のほうが3倍以上多いのに、検査はほとんど行われていません。

なお平成30年度の検査対象施設数82,011は、令和元年度以降の数値と桁が大きく違います。資料の記載をそのまま載せていますが、この記事の本文では令和4年度の数値だけを使っています。

簡易専用水道の受検率78.0%に対し、小規模貯水槽水道は3.5%。施設数は小規模のほうが多い
受検率は78.0%と3.5%。同じ水をためる設備で差が大きい

検査を受けている割合が低い分、指摘される割合は簡易専用水道と変わりません。小規模貯水槽水道の令和4年度の検査指摘率は23.7%で、書類の整備保存の状況が34.4%、受水槽のマンホールの状態が21.2%、受水槽内部の状態が16.1%でした。設備が小さいから汚れないということはありません。

小規模貯水槽水道の令和4年度の指摘率23.7%。書類の整備保存34.4%、受水槽のマンホール21.2%、受水槽内部16.1%
小規模でも指摘率は簡易専用水道と変わらない

東京都の場合 条例で管理と報告が決まっている

東京都は「東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例(平成14年12月25日条例第169号)」と「同施行規則(平成14年12月25日規則第293号)」を置いています(東京都保健医療局 条例のページ)。条文そのものは東京都例規集データベースにあり、こちらから直接取得できなかったため、都が公表している説明の範囲で整理します。

東京都が定義する小規模貯水槽水道は次のとおりです。「水道事業の用に供する水道、法第三条第六項に規定する専用水道及び同条第七項に規定する簡易専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもののうち、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるための水槽を有するものをいう。ただし、建築物における衛生的環境の確保に関する法律第二条第一項に規定する特定建築物に設置されたもの又は専ら一戸の住宅に水を供給するものを除く。」(東京都保健医療局「小規模貯水槽水道・飲用井戸等の情報」)

条例で求められている管理は、都のパンフレット「特定小規模貯水槽水道等の衛生管理」(PDF)に「必要な衛生管理【条例等で定められていること】」として5つ書かれています。

条例等で定められていること(都のパンフレットの原文)
①貯水槽は1年に1回以上、定期的に清掃してください。
②貯水槽やポンプ等の水道施設の管理状況について、1年に1回以上、定期的に検査・点検してください。
③施設の点検記録、水質検査記録等の書類は、作成した日から5年間は保存してください。
④井戸水や沢水を使用している施設は、年1回以上水質検査を実施してください。
⑤水質に異常を認めた場合には、必要な項目について水質検査を実施してください。
東京都の条例で定められている5つ。年1回以上の清掃、年1回以上の検査点検、書類の5年間保存、井戸水等の年1回以上の水質検査、異常時の水質検査
東京都の条例で定められている管理(10立方メートル以下)

見比べてほしいのは、①と②です。年1回以上の清掃と、年1回以上の検査・点検。簡易専用水道とほぼ同じ内容が、東京都では条例で求められています。水道法の外にいるから何もしなくていい、という理解は東京都ではまず通りません。

報告についてはもう一段細かい切り分けがあります。「学校、病院等条例で定める施設、あるいは水槽の有効容量が5立方メートルを超え、10立方メートル以下の施設に対して、条例第12条に基づき清掃・点検結果についての報告を求めています(対象は多摩地区及び島しょ地区です)。」(東京都保健医療局)パンフレットでは「設置者の皆様には、条例により貯水槽施設の点検・管理状況について毎年報告をいただいております(条例第7条及び第12条)。」と説明されています。

東京都の報告。学校や病院等、または有効容量5立方メートル超10立方メートル以下の施設。対象は多摩地区と島しょ地区
東京都で報告を求められる施設(条例7条・12条)

東京都のパンフレットは、点検のチェックポイントも10項目で示しています。「1 飲み水の異常(色・濁り・におい・味に異常はないか)/2 設置場所(水槽の周辺が整理整頓されているか)/3 水槽本体の状態(破損、亀裂及び漏水がないか)/4 水槽の開口部(汚染のおそれのある開口部がないか)/5 水槽上部の状態(ほこりや水たまりその他の衛生上有害なものが堆積していないか)/6 マンホールの状態(防水密閉されているか、施錠してあるか)/7 防虫網の設置(オーバーフロー管、通気管に防虫網が設置されているか)/8 排水口空間の確保(オーバーフロー管、水抜き管の排水口空間が十分確保されているか)/9 水槽内部の状態(水槽内部にさび・異物等がないか、吐水口空間が十分確保されているか)/10 付帯設備の状態(ポンプ等の設備に著しい劣化、漏水等がないか)」

東京都が示す点検の10のチェックポイント。飲み水の異常から付帯設備の状態まで
東京都が示す10のチェックポイント(10立方メートル以下)

水道事業者の側も見に来ている

東京都水道局は、条例とは別に独自の点検調査を続けています。「水道局では平成13年の水道法改正に基づき、貯水槽水道の適正管理を促すとともに、直結給水切替えの促進を図るため、平成16年度から貯水槽水道の点検調査を実施しております。」(東京都水道局「貯水槽水道の適正管理」)実施内容は「貯水槽水道の設置環境、管理状況、簡易水質検査」「管理に不備があった場合、設置者(所有者及び管理組合等)に対し指導・助言」「貯水槽水道方式から直結給水方式への切替えに関するアドバイス」「貯水槽水道を利用されている方への情報提供」です。

Q&A側の説明はこうです。「水道局では、平成13年の水道法改正を受け、平成15年に給水条例を改正し、これに基づき平成16年度から貯水槽水道の点検調査を実施しております。点検調査時には、設置者(所有者や管理組合等)に対して、定期的な清掃や点検のお願い、不備があった際の指導・助言を行っています。」(東京都水道局 Q7)

国土交通省の資料にも、同じような取組み事例が載っています。「②水道事業者による小規模貯水槽の点検・指導の実施 給水区域内にある全ての小規模貯水槽水道を対象に、水道事業者による点検・指導の実施について設置者に案内し、同意を得た上で、立ち会いのもとで点検・指導を実施している。」「④施設設置者への啓発・指導 衛生行政担当部局が作成する貯水槽水道施設台帳と登録検査機関から受検報告を受けて、検査を実施していない施設を抽出し、電話・訪問による指導を実施している。」(国土交通省の調査資料)

受けていない施設を抽出して電話や訪問で指導する仕組みが、すでに動いている自治体があるということです。

ビル管法が重なると義務が一段増える

建物の規模と用途によっては、水道法とは別に建築物における衛生的環境の確保に関する法律、いわゆるビル管法がかかります。かかると、貯水槽の清掃だけでなく水質検査の回数まで決められます。

特定建築物かどうかは延べ面積と用途で決まる

ビル管法施行令1条の原文です。「法第二条第一項の政令で定める建築物は、次に掲げる用途に供される部分の延べ面積(略)が3,000平方メートル以上の建築物及び専ら学校教育法第一条に規定する学校又は(略)幼保連携型認定こども園(第三号において「第一条学校等」という。)の用途に供される建築物で延べ面積が8,000平方メートル以上のものとする。」用途は「一 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館又は遊技場 二 店舗又は事務所 三 第一条学校等以外の学校(研修所を含む。)四 旅館」の4つです。

特定建築物は延べ面積3,000平方メートル以上。学校等は8,000平方メートル以上。用途は興行場や百貨店、店舗や事務所、学校、旅館
ビル管法の特定建築物になる条件

共同住宅は、ビル管法2条1項の条文の例示には「共同住宅等」として登場しますが、施行令1条が列挙する用途には入っていません。ふつうのマンションは、この4つの用途に当たらない限り特定建築物にはなりません。ただしビル管法4条3項の努力義務は別にかかります。「特定建築物以外の建築物で多数の者が使用し、又は利用するものの所有者、占有者その他の者で当該建築物の維持管理について権原を有するものは、建築物環境衛生管理基準に従つて当該建築物の維持管理をするように努めなければならない。」

共同住宅の扱い。施行令1条が列挙する用途に共同住宅は入っていない。ただしビル管法4条3項の努力義務はかかる
ふつうのマンションは特定建築物に当たらないことが多い

特定建築物になると水質検査の回数が決まる

ビル管法施行規則4条1項が、飲料水について具体的な回数を決めています。水道事業の水道から供給を受ける水だけを水源にしている場合の主なものを並べます。

やること頻度根拠
遊離残留塩素の検査7日以内ごとに1回ビル管法施行規則4条1項7号
貯水槽の清掃1年以内ごとに1回ビル管法施行規則4条1項7号
水質検査(水質基準省令の表中一の項、二の項、六の項、九の項、十一の項、三十三の項、三十五の項、三十六の項、三十九の項、四十一の項及び四十七の項から五十二の項までの事項)6月以内ごとに1回ビル管法施行規則4条1項3号イ
水質検査(水質基準省令の表中十の項、二十二の項から三十二の項までの事項)毎年、測定期間中に1回ビル管法施行規則4条1項3号ロ
給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態に異常を認めたときの検査その都度ビル管法施行規則4条1項5号
排水に関する設備の掃除6月以内ごとに1回ビル管法施行規則4条の3第1項

水道法側の管理基準が「掃除は毎年1回以上」「異常を認めたときは検査」だけなのに対して、ビル管法側は残留塩素を7日以内ごとに、水質検査を6月以内ごとに、と回数まで縛っています。同じ建物に両方がかかることがあるので、重い方に合わせることになります。

ビル管法の頻度。残留塩素は7日以内ごとに1回、貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回、水質検査は6月以内ごとに1回
ビル管法がかかると回数まで決まる

残留塩素の濃度の基準も規則4条1項1号にあります。「給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の含有率を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は、0.4mg/L)以上に保持するようにすること。」病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合などは「0.2mg/L(結合残留塩素の場合は、1.5mg/L)以上とすること」とされています。水道法施行規則17条1項3号の、水道事業者に対する基準と同じ数字です。

東京都も、この数字を管理の目安として案内しています。「特に、夏期は気温が高く、水が貯水槽に貯まっている間に消毒用の残留塩素が消失しやすくなります。残留塩素がなくなると水中で微生物が繁殖し、事故の原因となることがあります。普段から残留塩素の濃度を確認し、万が一蛇口から取った水の残留塩素濃度が0.1ミリグラムパーリットル未満であった場合はすぐに対応が必要となります。」(東京都保健医療局「貯水槽を管理している方へ」)

ビル管法の罰則はビル管法16条で、届出をしない・虚偽の届出をする、帳簿書類を備えない・虚偽の記載をする、立入検査を拒む、命令に違反する、といった行為に「30万円以下の罰金」が定められています。

3つの制度の重なり。水道法の簡易専用水道、自治体の条例、ビル管法の特定建築物
同じ建物に複数の制度がかかることがある
水道法(簡易専用水道)自治体の条例・要綱(小規模貯水槽水道)ビル管法(特定建築物)
かかる条件水槽の有効容量の合計が10立方メートル超10立方メートル以下。対象の切り方は自治体ごとに違う延べ面積3,000平方メートル以上(学校等は8,000平方メートル以上)で政令が列挙する用途
清掃毎年1回以上(施行規則55条1号)東京都は年1回以上(条例)。自治体により異なる1年以内ごとに1回(施行規則4条1項7号)
第三者の検査毎年1回以上(法34条の2第2項)法律上の義務はない。自治体の指導による特定建築物なら水道法側の検査を書類検査にできる(告示262号 第六)
水質検査の回数異常を認めたときに実施(施行規則55条3号)自治体の指導による6月以内ごとに1回ほか(施行規則4条1項3号)
残留塩素条文に回数の定めはない東京都は週1回の測定を指導7日以内ごとに1回(施行規則4条1項7号)
罰則100万円以下の罰金(法54条8号)条例による30万円以下の罰金(法16条)

清掃では実際に何をやっているのか

「清掃」と一言でまとめられていますが、中身は国が基準を出しています。「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(平成15年3月25日厚生労働省告示第119号)の第二 一 1が貯水槽の清掃です。

貯水槽の清掃の基準(告示119号の原文)
(一)受水槽の清掃を行った後、高置水槽、圧力水槽等の清掃を行うこと。
(二)貯水槽内の沈でん物質及び浮遊物質並びに壁面等に付着した物質を洗浄等により除去し、洗浄を行った場合は、用いた水を完全に排除するとともに、貯水槽周辺の清掃を行うこと。
(三)貯水槽の清掃終了後、塩素剤を用いて二回以上貯水槽内の消毒を行い、消毒終了後は、消毒に用いた塩素剤を完全に排除するとともに、貯水槽内に立ち入らないこと。
(四)貯水槽の水張り終了後、給水栓及び貯水槽内における水について、次の表の上欄に掲げる事項について検査を行い、当該各号の下欄に掲げる基準を満たしていることを確認すること。基準を満たしていない場合は、その原因を調査し、必要な措置を講ずること。
(五)清掃によって生じた汚泥等の廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、下水道法等の規定に基づき、適切に処理すること。
清掃の順番。受水槽を先に清掃し、次に高置水槽と圧力水槽。除去、排水、2回以上の消毒、水張り、水質の確認
清掃の手順(告示119号)

(一)の順番は、思っている以上に大事です。高置水槽を先に洗っても、そのあと受水槽を洗えば汚れた水が上がってきます。見積もりで受水槽と高置水槽が別項目になっているのは、この順番で両方をやるからです。

(四)の「次の表」が、清掃が終わったかどうかを判定する基準です。

番号検査事項基準(告示119号の原文)
一残留塩素の含有率遊離残留塩素の場合は0.2mg/L以上。結合残留塩素の場合は1.5mg/L以上。
二色度5度以下であること。
三濁度2度以下であること。
四臭気異常でないこと。
五味異常でないこと。
清掃後の確認基準。遊離残留塩素0.2mg/L以上、色度5度以下、濁度2度以下、臭気と味は異常でないこと
清掃が終わったかを判定する基準(告示119号)

清掃の見積もりに「水質検査」という項目が入っているのは、多くの場合この5項目の確認です。簡易専用水道の法定検査で見る水質6項目とは別物なので、両方を同じものだと思って片方を削ると、清掃の完了確認ができなくなります。

消毒のやり方まで決まっている

もっと細かい手順は、「建築物における衛生的環境の維持管理について」(平成20年1月25日健発第0125001号)の建築物環境衛生維持管理要領に書かれています。清掃の現場が実際にやっていることです。

維持管理要領の原文
清掃の日高置水槽又は圧力水槽の清掃は原則として受水槽の清掃と同じ日に行うこと。
作業者の健康作業者は常に健康状態に留意するとともに、おおむね6箇月ごとに、病原体がし尿に排せつされる感染症の罹患の有無(又は病原体の保有の有無)に関して、健康診断を受けること。また、健康状態の不良なものは作業に従事しないこと。
作業衣と器具作業衣及び使用器具は、貯水槽の清掃専用のものとすること。また、作業に当たっては、作業衣及び使用器具の消毒を行い、作業が衛生的に行われるようにすること。
消毒薬消毒薬は有効塩素50〜100mg/Lの濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液またはこれと同等以上の消毒能力を有する塩素剤を用いること。
消毒の方法消毒は、貯水槽内の天井の下面、壁面及び床面について、消毒薬を高圧洗浄機等を利用して噴霧により吹き付けるか、ブラシ等を利用して行うこと。
回数と時間前記の方法により2回以上消毒を行い、消毒後は30分以上時間をおくこと。
水張り消毒作業が終了した後、洗浄し、洗浄水を排水した後、貯水槽内への水張りを行うこと。/水張りを行う際、水道引込管内等の停滞水や管内のもらいさび等が貯水槽内に流入しないようにすること。
消毒の要領。有効塩素50から100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム溶液、2回以上、消毒後30分以上
消毒のやり方(建築物環境衛生維持管理要領)
屋上に置かれたステンレス製の水槽を、作業着の点検者が記録を取りながら確認している様子
清掃も検査も、屋上や地下の水槽まで人が行って現物を見る作業になる(イメージ)

「おおむね6箇月ごとに健康診断を受けること」という一行があるのは、作業者が水槽の中に入るからです。検便を求められる仕事だという話が出てくるのはここに由来します。

清掃が終わってすぐ水が使えるわけではないことも、この手順から分かります。除去して、排水して、2回以上消毒して、30分以上置いて、洗って、排水して、水張りして、水質を確認する。作業時間が半日程度になるのはこのためです。

断水の目安を公開している業者もあります。アクアケアは料金表の注記で「清掃中は断水となります(半日目安)」と書いています(株式会社アクアケア)。実際の時間は槽の大きさと形で変わるので、見積もりのときに断水の時間帯を確認しておくと入居者への案内がしやすくなります。

清掃の日は断水し、検査の日は断水しない。検査は水槽の水を抜かずに行うと告示に明記されている
断水するのは清掃の日だけ

点検で見るべき数字

維持管理要領には、点検のときに確かめる具体的な数字も出ています。「水抜管及びオーバーフロー管の排水口空間が管径の2倍以上(ただし、最小は150mm)あることを確認すること。」(建築物環境衛生維持管理要領 第2 3)

排水口空間というのは、水抜管やオーバーフロー管の先と、排水を受ける側の間にあけておく隙間のことです。ここがつながっていると、排水側から水槽へ逆流する経路ができてしまいます。告示262号の別表第一も、六と八で「管端部と排水管の流入口等とは直接連結されておらず、その間隔は逆流の防止に十分な距離であること」と書いています。

残留塩素が出ないときの扱いも決まっています。「給水栓において残留塩素が検出されない場合若しくは残留塩素量の変動が著しい場合はクロスコネクション等の疑いがあるので、速やかに原因を解明し、適切な措置を講じること。また、その措置が講じられるまでの間毎日、残留塩素の測定を行うこと。なお、人の健康を害する恐れのある場合は、直ちに給水を停止すること。」(建築物環境衛生維持管理要領 第2 4)

排水口空間は管径の2倍以上、最小150mm。直接連結していると逆流の経路になる
排水口空間の目安

誰に頼むのか

水道局は清掃も水質検査もやらない

最初に押さえておくと無駄がないのが、水道局の守備範囲です。東京都水道局のQ&Aは、はっきり書いています。

質問東京都水道局の回答(原文)
Q14 受水タンク(貯水槽)の水質検査を水道局に依頼できますか。水道局では、設置者(所有者や管理組合等)に対する水質検査は行っておりません。保健所又は民間の水質検査会社に検査を依頼して下さい。
Q15 受水タンク(貯水槽)の清掃を水道局に依頼できますか。水道局では清掃は行っておりません。
Q11 飲食店を開店するに当たって(略)検査は水道局で受けられるのですか。水道局では、そのような場合の水質検査は実施しておりません。別途、保健所又は民間の水質検査会社に検査を依頼して下さい。
Q16 受水タンク(貯水槽)が故障したのですが、どこに相談すればいいのですか。受水槽本体やポンプの故障の場合は、メンテナンス会社や貯水槽メーカー、水道工事店に点検・修理を御依頼下さい。

清掃も水質検査も故障の修理も、設置者が自分で手配します。水道局がやってくれるのは、蛇口の水に異変があるときの簡易検査までです。「しかし、蛇口からの水道水に異変がある場合、水道局で簡易検査に伺います。」「この場合、直結栓の水の確認をして頂くと、貯水槽水道以下に原因があるのか、判断しやすくなります。」(東京都水道局 Q6)

水道局がやること、やらないこと。清掃はやらない。設置者への水質検査はやらない。蛇口の異変があるときの簡易検査はある
水道局の守備範囲(東京都水道局のQ&Aより)

この構造は、消防設備点検のときと同じです。東京消防庁も「消防署では特定の業者を教えることができません」「消防署から具体的な金額を提示することはできません」と案内しています。詳しくは消防設備点検の費用と業者の探し方にまとめています。行政は基準を示しますが、業者選びと金額の判断は建物の持ち主に委ねられます。

清掃 登録建築物飲料水貯水槽清掃業という目安がある

貯水槽の清掃そのものには、これを持っていなければできないという国家資格はありません。ただし、ビル管法12条の2第1項に都道府県知事の登録制度があります。原文です。「次の各号に掲げる事業を営んでいる者は、当該各号に掲げる事業の区分に従い、その営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けることができる。」その五号が「建築物の飲料水の貯水槽の清掃を行う事業」です。

「受けることができる」と書かれているとおり、これは任意の登録です。登録した事業者はビル管法12条の3により「登録建築物飲料水貯水槽清掃業」と表示できます。登録の有効期間は6年です(法12条の2第4項)。

登録の基準はビル管法施行規則28条が決めていて、機械器具から人の資格まで具体的に並んでいます。

登録基準(施行規則28条の原文)
一次の機械器具を有すること。イ 揚水ポンプ ロ 高圧洗浄機 ハ 残水処理機 ニ 換気ファン ホ 防水型照明器具 ヘ 色度計、濁度計及び残留塩素測定器
二前号の機械器具を適切に保管することのできる専用の保管庫を有すること。
三第一号の機械器具は、飲料水の貯水槽の清掃に専用のものであること。
四飲料水の貯水槽の清掃作業の監督を行う者が次のいずれかに該当するものであること。イ 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う貯水槽の清掃作業の監督を行う者のための講習の課程を修了し、修了した日から6年を経過しない者 ロ イの講習の課程を修了した者であつて、再講習の課程を修了し、修了した日から6年を経過しないもの ハ イ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者
五飲料水の貯水槽の清掃作業に従事する者が次の要件に該当する研修を修了したものであること。(内容は)貯水槽の清掃方法、塗装方法及び消毒方法並びに貯水槽の清掃作業の安全及び衛生に関するものであること。
六飲料水の貯水槽の清掃作業及び飲料水の貯水槽の清掃作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理の方法が、厚生労働大臣が別に定める基準に適合していること。
登録建築物飲料水貯水槽清掃業の基準。6種類の機械器具、専用の保管庫、専用であること、監督者、従事者の研修、作業方法の基準
登録の基準(ビル管法施行規則28条)

一号の器具の並びを見ると、この登録が何を担保しているかが分かります。色度計、濁度計、残留塩素測定器が入っているのは、告示119号が求める清掃後の確認をその場でやるためです。三号の「清掃に専用のものであること」は、他の作業に使った器具を持ち込ませないという趣旨です。

四号の監督者になるための講習は、ビル管法施行規則28条の2が科目と時間数まで決めています。「(1)建築物環境衛生制度 2時間以上(2)給水衛生概論 7時間以上(3)建築設備概論 5時間以上(4)作業の安全管理 2時間以上(5)貯水槽清掃各論 12時間以上」で、足すと28時間以上になります(規則の原文に合計の記載はありません)。再講習は「総時間数は10時間以上」です。

貯水槽清掃作業監督者の講習。建築物環境衛生制度2時間以上、給水衛生概論7時間以上、建築設備概論5時間以上、作業の安全管理2時間以上、貯水槽清掃各論12時間以上
監督者の講習の科目と時間数

埼玉県の案内も、清掃を誰にやってもらうかについて触れています。「掃除は、専門的な知識、技能を有する者に行わせるのが望ましいとされています。」(埼玉県)名古屋市は「専門の業者に依頼することをお勧めします。」と書いたうえで、「名古屋市小規模貯水槽衛生対策事業協力業者名簿(令和8年6月現在)」を公表しています(名古屋市)。自治体が名簿を出している地域なら、そこから当たるのが早道です。

検査 登録を受けた機関でなければならない

清掃と違い、法定検査のほうは相手が法律で限定されています。「地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」以外に依頼しても、義務を果たしたことになりません。国土交通省の簡易専用水道検査機関登録簿には、機関ごとに「簡易専用水道の管理の検査を行う区域」が書かれています。全国どこでも受けられるわけではなく、機関ごとに業務区域が決まっています。

登録には番号が振られていて、各社も自分の番号を出しています。たとえば江東微生物研究所は「水道法第34条の2第2項国土交通大臣及び環境大臣登録機関 第112号」、東京顕微鏡院は「水道法に基づく国土交通大臣・環境大臣登録 簡易専用水道検査機関 (登録番号第80号)」と表示しています。依頼する前に、登録簿で番号と業務区域を照合しておくと確実です。

小さい水槽でも検査を受けたい場合の受け皿もあります。日本建築衛生管理教育センターは「当教育センターにおいては水道法の対象外となる小規模貯水槽水道についても、水道法34条の2に準ずる検査を行っています。」と案内しています(公益財団法人日本建築衛生管理教育センター)。義務ではなくても、記録を残す手段として使う選択肢があるということです。

誰に頼むか。清掃は登録建築物飲料水貯水槽清掃業が目安。検査は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた機関に限られる
清掃と検査で頼む相手が違う

費用はどれくらいかかるのか

費用について先にお断り

貯水槽の清掃にも簡易専用水道の検査にも、公定価格や標準料金はありません。この記事では相場や平均値を作らず、各社が自社サイトで公開している料金表を、社名とURLと取得日を添えてそのまま並べます。いずれも2026年9月23日に取得した、その会社の価格です。地域・槽の大きさ・形・設置場所・作業時間帯によって変わりますし、公開していない会社も多くあります。金額の判断材料としてではなく、料金の決まり方を知るための材料としてご覧ください。

料金の決まり方には型がある

公開されている料金表を並べると、金額そのものより決め方に型があることが見えてきます。

料金の型決め方この型で公開している例
トン数の階段型受水槽の容量を1トン刻み、または数トン刻みで並べ、容量が上がるごとに一定額を足す光栄テクノサービス/日日化学サービス/たてものサービス/グローブス/新栄水槽サービス
容量帯のまとめ型「〜10t」「〜20t」のように帯でまとめるアクアケア/常陸興業
受水槽と高置水槽の別立て受水槽と高置水槽を別の表にし、両方やると合算になる光栄テクノサービス/日日化学サービス/たてものサービス/新栄水槽サービス/群馬県貯水槽管理協会
水質検査の別建て清掃料金に水質検査を含めず、項目数で別に加算する光栄テクノサービス/日日化学サービス/群馬県貯水槽管理協会/アクアケア
諸経費の別建て出張諸経費や諸経費率を別に足すたてものサービス(出張諸経費)/常陸興業(諸経費10%〜25%)
戸数型マンションの戸数で単価を変えるグローブス
料金の型。トン数の階段型、容量帯のまとめ型、受水槽と高置水槽の別立て、水質検査の別建て、諸経費の別建て、戸数型
公開されている料金表に見られる決め方の型

各社が公開している清掃料金

光栄テクノサービス「貯水槽清掃・ポンプ点検」(2026年9月23日取得)

受水槽洗浄料金高架水槽料金
〜3トン30,000円〜3トン8,000円
4トン32,000円4トン10,000円
5トン34,000円5トン12,000円
6トン36,000円6トン14,000円
7トン38,000円7トン16,000円
8トン40,000円8トン18,000円
9トン42,000円9トン20,000円
10トン44,000円10トン22,000円
15トン54,000円15トン32,000円
20トン64,000円20トン42,000円
以後1トン当たり2,000円加算以後1トン当たり2,000円加算

同社は水質検査を10項目8,000円として別に掲げ、組み合わせの例も示しています。受水槽洗浄34,000円と水質検査8,000円で合計42,000円、受水槽洗浄44,000円と高架水槽8,000円と水質検査8,000円で合計60,000円、という形です。

日日化学サービス「貯水槽清掃」(2026年9月23日取得)

受水槽料金高架水槽料金
〜5トン28,000円〜3トン15,000円
6トン29,500円4トン16,200円
7トン31,000円5トン17,400円
8トン32,500円6トン18,600円
9トン34,000円7トン19,800円
10トン35,500円8トン21,000円
12トン37,900円9トン22,200円
15トン41,500円10トン23,400円
20トン47,500円15トン28,400円
36トン66,700円20トン33,400円
以後1トン当たり1,200円加算以後1トン当たり1,000円加算

同社も水質検査(10トン以上)11項目10,000円を別建てにし、例として受水槽洗浄35,500円と2槽式追加費用5,000円と高架水槽15,000円と水質検査10,000円で合計65,500円を示しています。

たてものサービス「貯水槽・受水槽清掃の料金表」(2026年9月23日取得)

槽容量貯水槽・受水槽洗浄料金高置水槽洗浄料金
〜3トン40,000円16,000円
4トン41,000円18,000円
5トン42,000円20,000円
6トン43,000円22,000円
7トン44,000円24,000円
8トン45,000円26,000円
9トン46,000円28,000円
10トン47,000円30,000円
11トン49,000円別途見積もり
15トン57,000円別途見積もり
17トン61,000円別途見積もり

同社は出張諸経費6,500円を別に足す形で、貯水槽・受水槽洗浄40,000円と出張諸経費6,500円で合計(税抜き)46,500円、貯水槽・受水槽洗浄42,000円と高置水槽洗浄16,000円と出張諸経費6,500円で合計(税抜き)64,500円という例を出しています。

アクアケア「貯水槽清掃(受水槽清掃)水質検査」(2026年9月23日取得)

形式貯水槽(総容量)目安料金
圧力式(受水槽のみ)1t未満27,500円
1t〜3t33,000円
〜10t44,000円
〜20t55,000円
〜35t66,000円
〜50t77,000円
〜100t132,000円
高架水槽式10t以下66,000円
〜20t82,500円
〜35t99,000円
〜50t115,500円
〜100t198,000円

同社は注記で「ご依頼内容・現地状況により料金が異なりますので目安としてご利用ください」「清掃中は断水となります(半日目安)」と書き、別表で水質分析検査表(11項目)10,000円、2槽分割式 50%増、基本作業時間 8時30分〜17時00分、上記時間外作業 30%増、県外・遠方 割増し料金有(半径30km以上)と条件を公開しています。

常陸興業「貯水槽清掃」(2026年9月23日取得)

受水槽容量標準料金(税別)
〜3t35,000円
〜5t45,000円
〜10t55,000円
〜15t65,000円
〜20t75,000円
〜30t95,000円
〜40t110,000円
〜50t130,000円
50t〜1,500円加算/t

同社の注記は「上記の料金に加えて10%〜25%の諸経費がかかります。」「関連機器の点検、補修、機能調整、槽の再塗装は除く。」「5項目の水質検査(残留塩素測定・色度・濁度・臭気・味)含む。」「簡易専用水道10項目の水質検査が必要な場合は、水質検査料金10,000円(税別)が別途必要となります。」です。清掃後の確認に当たる5項目は含み、法定検査に必要な水質検査は別、という切り分けが明示されています。

群馬県貯水槽管理協会(2026年9月23日取得)。同協会は受水槽と高架水槽を並べた表を「程度」という表記で公開しています。

容量受水槽高架水槽
1m³35,000円程度40,000円程度
3m³37,500円程度42,500円程度
5m³42,500円程度47,500円程度
10m³55,000円程度60,000円程度
20m³80,000円程度85,000円程度
30m³100,000円程度105,000円程度
50m³131,000円程度131,000円程度
70m³161,000円程度161,000円程度
100m³197,000円程度197,000円程度

同協会は水質検査(1検体)も公開していて、省略不可能項目試験(9項目)15,000円、11項目試験20,000円となっています。

新栄水槽サービス「貯水槽清掃と料金」(2026年9月23日取得)は、受水槽1〜4t 30,000円から12t 46,000円まで、高架水槽1〜4t 18,000円から12t 34,000円までを「セット料金」として公開しています。グローブス「料金表&単価表」(2026年9月23日取得)は貯水槽サイズ〜3トン 28,000円(税込30,800円)から10トン 42,000円(税込46,200円)までを示し、別に「12戸以下 1戸当たり3,800円(税込4,180円)」「20戸以下 1戸当たり3,500円(税込3,850円)」「21戸以上 1戸当たり3,000円(税込3,300円)」という戸数単価の表も出しています。

8社が公開している受水槽10トンの清掃料金の並び。35,500円から55,000円まで。税や諸経費や水質検査の扱いが会社ごとに違う
受水槽10トンの清掃料金を各社の公開値で並べたもの

並べて分かるのは、金額そのものよりも何が含まれていて何が別なのかが会社ごとに違うということです。水質検査が込みの会社と別の会社、諸経費が込みの会社と率で足す会社、税込表示と税別表示。見積もりを比べるときは、総額ではなく内訳をそろえてから比べないと意味がありません。

見積もりで内訳をそろえる。受水槽と高置水槽、水質検査、諸経費や出張費、税の表示、2槽式の加算、時間外の加算
総額ではなく内訳をそろえて比べる

法定検査の料金

検査のほうは、料金を公開している機関が多くありません。公表しているものを挙げます。公益財団法人鳥取県保健事業団「簡易専用水道検査(料金改定)について」(2026年9月23日取得)

種別令和7年3月31日迄令和7年4月1日から
現場検査17,050円(税込)19,250円(税込)
書類検査2,200円(税込)2,750円(税込)

現場検査と書類検査の差が大きいのが分かります。ビル管法の特定建築物が書類検査を選べるのは、告示262号の第六に根拠があります。一方、日本建築衛生管理教育センターは検査料金を「施設検査 お問い合わせください。」「書類検査 お問い合わせください。」としており、金額は公表されていません。東京顕微鏡院も料金改定の案内はページにありますが、本文に金額の記載はありませんでした(2026年9月23日時点で取得できず)。

法定検査の料金の例。現場検査19,250円税込、書類検査2,750円税込。公表していない機関も多い
法定検査の料金を公表している例

見積もりの取り方そのものは、消防設備点検のときと考え方が同じです。同じ条件を書いた依頼書を複数社に渡し、内訳をそろえて比べる。その手順は消防設備点検の費用と業者の探し方に詳しくまとめています。

毎年の1回だけでは足りない。日常の管理がある

法律が求めているのは年1回の清掃と年1回の検査ですが、行政が案内している管理はもっと細かい周期です。東京都の指導内容を整理すると次のようになります。

周期やること出典
毎日給水栓の水の色、濁り、におい、味を確認する(官能検査による水質の確認)東京都保健医療局「簡易専用水道の情報」
毎週1回以上残留塩素濃度を測る東京都保健医療局
1か月に1回程度水槽及びその周囲の点検東京都保健医療局
地震・大雨等があったとき水槽及びその周囲の点検。発見された欠陥等の速やかな改善・整備東京都保健医療局
毎年1回以上水質検査(一般細菌、大腸菌、塩化物イオン、有機物(全有機炭素(TOC)の量)、pH値、味、臭気、色度、濁度)東京都保健医療局
毎年1回以上水槽の掃除水道法施行規則55条1号
毎年1回以上登録を受けた者による検査水道法34条の2第2項・施行規則56条
5年間水槽の清掃記録、点検記録、水質検査記録等の保存東京都保健医療局(指導)
常時施設図面の保管東京都保健医療局(指導)
日常の管理の周期。毎日は色濁りにおい味、毎週は残留塩素、毎月は水槽と周囲の点検、毎年は清掃と検査と水質検査
東京都が案内している管理の周期

ここで注意したいのは、この周期は自治体によって違うということです。名古屋市は要綱で別の周期を案内しています。「週1回以上、給水栓における水の色、濁り、臭い、味に異常がないかを調べるとともに、遊離残留塩素が0.1mg/L以上であることを確認しましょう。年に2回以上定期的に、pH値、一般細菌、大腸菌、鉄及びその化合物、亜鉛及びその化合物の5項目について水質検査を実施しましょう。」(名古屋市)

東京都は年1回以上で9項目、名古屋市は年2回以上で5項目です。どちらも水道法の管理基準そのものではなく、自治体が指導として示している内容なので違いが出ます。自分の建物にどちらが当てはまるかは、所在地の保健所の案内を見るしかありません。

水質検査の指導内容の違い。東京都は年1回以上で9項目、名古屋市は年2回以上で5項目
同じ日本でも指導内容は自治体で違う

10立方メートル以下の建物についても、東京都は条例で定めている内容のほかに「望ましい管理」として指導を出しています。「有害物、汚水等に汚染されるのを防ぐために、水槽等の点検を月に1回は行いましょう。」「水の色・濁り・におい・味を毎日チェックしましょう。」「残留塩素を週1回給水栓の末端でチェックしましょう。」「水道水を使用している施設も、年1回水質検査を実施しましょう。」「施設の図面は常に保存し、事故発生時など必要なときに速やかに確認できるようにしましょう。」(東京都「特定小規模貯水槽水道等の衛生管理」)

ほかの法定点検との関係

建物を持っていると、根拠の違う点検がいくつも並行して走ります。貯水槽の清掃と検査は水道法の話で、消防の点検とも建築基準法の定期報告とも別の制度です。混ざりやすいので、一度整理しておきます。

貯水槽の清掃・簡易専用水道の検査消防設備点検防火対象物点検建築基準法12条の定期報告
根拠水道法34条の2消防法17条の3の3消防法8条の2の2建築基準法12条1項・3項
やること水槽の清掃と、管理の状態の検査消防用設備等の点検と報告防火管理の状況の点検と報告建築物の調査と建築設備等の検査、報告
相手先地方公共団体の機関または国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者消防長または消防署長へ報告消防長または消防署長へ報告特定行政庁へ報告
周期清掃は毎年1回以上、検査は毎年1回以上機器点検と総合点検。報告の周期は対象で異なる対象により異なる用途・規模により毎年または3年ごと
くわしくはこの記事消防設備点検とは(義務・頻度・報告・費用)防火対象物点検とは(消防設備点検との違い)建築基準法12条点検(定期報告)とは
他の法定点検との関係。水道法の貯水槽、消防法の消防設備点検と防火対象物点検、建築基準法12条の定期報告
根拠の違う点検が並行して走っている

マンションの場合は、消防点検のときに各戸へ立ち入る話が必ず出ます。そちらはマンションの消防点検(部屋に入る理由・費用の負担)にまとめました。点検の費用と業者の探し方の考え方は消防設備点検の費用と業者の探し方、建築基準法側の定期報告は建築基準法12条点検(定期報告)とはをご覧ください。

よくある質問

貯水槽の清掃は本当に義務ですか。

有効容量の合計が10立方メートルを超える場合は、水道法施行規則55条1号が「水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと。」と定めているので義務です。10立方メートル以下の場合は水道法の義務ではありませんが、東京都のように条例で年1回以上の清掃を求めている自治体があります。対象の切り方は自治体ごとに違うので、所在地の保健所か水道事業者に確認してください。

清掃をしなかったら、すぐ罰金になりますか。

清掃をしなかったこと自体に直接の罰金規定はありません。水道法54条8号の100万円以下の罰金は、34条の2第2項の検査を受けないことに対するものです。清掃をしていない状態については、水道法36条3項で都道府県知事が期間を定めて清掃その他の必要な措置を指示でき、その指示に従わないと37条の給水停止命令に進み、その命令に違反すると53条10号の対象になる、という順序です。

清掃の日は断水しますか。検査の日はどうですか。

清掃は水槽の水を抜いて行うので断水します。アクアケアは自社の料金表の注記で「清掃中は断水となります(半日目安)」と書いています。実際の時間は槽の大きさと形で変わります。一方、検査は告示262号が「水槽の水を抜かずに」と明記しているので断水しません。

清掃をやってもらえば、法定検査は受けなくてよいのですか。

別々の義務なので、両方必要です。清掃は水道法施行規則55条1号の管理基準、検査は水道法34条の2第2項の受検義務です。しかも検査で見られる3つのうち1つは「書類の整理等に関する検査」で、ここでは水槽の掃除の記録が保存されているかを見られます。清掃をしても記録を残していないと、検査で指摘を受けます。

検査は誰に頼めばよいですか。

水道法34条の2第2項が「地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」と限定しています。登録を受けた機関は国土交通省の簡易専用水道検査機関登録簿に掲載されています。機関ごとに検査を行う区域が決まっているので、建物の所在地が区域に入っているかを確かめてください。

高置水槽も清掃しなければいけませんか。

水道法施行規則55条1号は「水槽の掃除」と書いていて、受水槽に限っていません。東京都のパンフレットも「受水槽、高置水槽の清掃は、毎年1回以上、定期的に行ってください。」と案内しています。清掃の順番も決まっていて、告示119号は「受水槽の清掃を行った後、高置水槽、圧力水槽等の清掃を行うこと。」としています。

受水槽が2つあるのですが、それぞれ6立方メートルなら対象外ですか。

合算します。埼玉県の案内は「受水槽が複数ある場合は、合算して判断します。」と明記しています(埼玉県)。6立方メートルが2つなら合計12立方メートルで、10立方メートルを超えるため簡易専用水道に当たります。

高置水槽の容量も足して数えるのですか。

埼玉県の案内では「高置水槽の容量は有効容量には含めません。」とされています(埼玉県)。判定に使うのは受水槽側の有効容量の合計です。ただし、判定に使わないだけで、清掃の対象からは外れません。

水道局に清掃や水質検査を頼めますか。

東京都水道局の回答は「水道局では清掃は行っておりません。」「水道局では、設置者(所有者や管理組合等)に対する水質検査は行っておりません。保健所又は民間の水質検査会社に検査を依頼して下さい。」です(東京都水道局 Q14・Q15)。ただし蛇口の水に異変があるときは「水道局で簡易検査に伺います」とされています。

清掃には資格が必要ですか。

清掃作業そのものを無資格で行うことを禁じる規定は確認できませんでした。一方でビル管法12条の2第1項5号に「建築物の飲料水の貯水槽の清掃を行う事業」の都道府県知事登録があり、登録した事業者は「登録建築物飲料水貯水槽清掃業」と表示できます。登録には施行規則28条が定める機械器具と、講習を修了した監督者、従事者の研修が必要です。業者を選ぶときの目安になります。

清掃の作業員は検便を受けているのですか。

建築物環境衛生維持管理要領に「作業者は常に健康状態に留意するとともに、おおむね6箇月ごとに、病原体がし尿に排せつされる感染症の罹患の有無(又は病原体の保有の有無)に関して、健康診断を受けること。」と書かれています。水槽の中に入る仕事なので、健康診断が前提になっています。

残留塩素が出ないと言われました。どうすればよいですか。

建築物環境衛生維持管理要領は「給水栓において残留塩素が検出されない場合若しくは残留塩素量の変動が著しい場合はクロスコネクション等の疑いがあるので、速やかに原因を解明し、適切な措置を講じること。また、その措置が講じられるまでの間毎日、残留塩素の測定を行うこと。なお、人の健康を害する恐れのある場合は、直ちに給水を停止すること。」としています。東京都は「蛇口から取った水の残留塩素濃度が0.1ミリグラムパーリットル未満であった場合はすぐに対応が必要となります。」と案内しています。

空室が増えたら水が悪くなると聞きました。

東京都水道局は「貯水槽の容量が使用水量に比べて著しく大きい場合、水道水が貯水槽に貯留される時間(滞留時間)が長くなります。その結果、水道水に含まれる残留塩素の濃度が下がり、消毒効果が失われることがあります。貯水槽の容量(水位)を適正に保つようにお願い致します。」と案内しています(東京都水道局 Q4)。使用量が大きく変わったときは、水位の設定を見直す余地があります。

受水槽をやめて直結給水にできますか。

東京都水道局は「以下の直結給水が認められない施設以外は直結給水化が可能です。」として、一時に多量の水を使用する施設や、危険な化学薬品を扱う工場などを例外に挙げています(東京都水道局 Q9)。受水槽をなくせば清掃も法定検査も不要になりますが、断水時や災害時の水の確保ができなくなる点はQ10にメリットとデメリットとして整理されています。切り替えの可否は水道事業者に相談してください。

マンションの管理組合と区分所有者のどちらが義務を負いますか。

水道法34条の2は「簡易専用水道の設置者」と書いていて、誰が設置者かの定義は置いていません。東京都水道局は管理責任の所在を「設置者(所有者や管理組合等)」と表現しています(東京都水道局 Q2)。分譲マンションでは管理組合が実務を担っている例が多いのですが、規約や契約の内容によって変わりうるため、管理規約と管理委託契約の記載を確認することをおすすめします。

ビル管法の特定建築物だと検査が軽くなると聞きました。

告示262号の第六が「建築物衛生法の適用がある簡易専用水道については(略)検査項目は、書類検査とすることができる。」としています。東京都はさらに「同法に基づく立入検査又は(略)「飲料水貯水槽等維持管理状況報告書」の提出をもって、実施したとみなします。」としています(東京都保健医療局)。ただしビル管法側で残留塩素の7日以内ごとの検査や6月以内ごとの水質検査が課されるので、全体としては軽くなりません。

検査を受けたら、行政に報告する必要はありますか。

自治体によります。東京都は「簡易専用水道の設置者には、「水道法施行細則」第23条及び第24条に基づく報告義務があります。」としています(東京都保健医療局)。東京都のパンフレットにも「設置者は、検査結果を速やかに保健所に報告してください」と書かれています。所在地の保健所の案内を確認してください。

10立方メートル以下でも検査を受けられますか。

受けられる機関があります。日本建築衛生管理教育センターは「水道法の対象外となる小規模貯水槽水道についても、水道法34条の2に準ずる検査を行っています。」と案内しています。義務でなくても、管理の記録を第三者の目で残す手段として使えます。

確認の手順

最後に、今日から確かめられる順番にまとめます。

やること見るもの
1受水槽の有効容量と台数を図面で確認する。複数あれば合算する設備の配置図・系統図
2合計が10立方メートルを超えるかどうかを判定する水道法施行令2条
3建物の延べ面積と用途から、ビル管法の特定建築物に当たるかを判定するビル管法施行令1条
4所在地の保健所と水道事業者の案内を見て、条例や要綱の対象かを確かめる自治体の案内ページ
5直近の清掃報告書と法定検査の結果書類がファイルされているかを確かめる水槽の掃除の記録・検査済みを証する書類
6施設の図面と点検記録、水質検査記録の保存状況を確かめる告示262号 別表第三
7マンホールの施錠とパッキン、防虫網、排水口空間を自分の目で見る告示262号 別表第一
8清掃と検査それぞれについて、同じ条件で複数社から見積もりを取る受水槽と高置水槽の容量、台数、設置場所
確認の手順。有効容量の確認、10立方メートルの判定、ビル管法の判定、自治体の確認、書類の確認、現物の確認、見積もり
今日から確かめられる順番

自分の目で見るところは、実はそれほど多くありません。マンホールに鍵がかかっているか。ふたのパッキンが切れていないか。オーバーフロー管と通気管の先に防虫網があるか。水抜管やオーバーフロー管の先が排水口に直接つながっていないか。この4つは、検査で最も指摘が多い場所と重なっています。

自分で見る4か所。マンホールの施錠、ふたのパッキン、防虫網、排水口空間
自分で見ておきたい4か所

最後にもう一度だけ書いておきます。10立方メートル以下の扱いと、日常の管理で求められる回数は、自治体によって違います。この記事は東京都と埼玉県と名古屋市の案内、それに国土交通省が全国の状況をまとめた資料をもとに書いていますが、最終的に何をどこまでやるかは、建物の所在地の水道事業者と保健所の案内が基準になります。判断に迷うところがあれば、水槽の図面を手元に置いて問い合わせてみてください。

この記事で使った一次情報

水道法(e-Gov)/水道法施行令(e-Gov)/水道法施行規則(e-Gov)/建築物における衛生的環境の確保に関する法律(e-Gov)/同施行令(e-Gov)/同施行規則(e-Gov)/簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項(告示262号)/空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準(告示119号)/建築物環境衛生維持管理要領(PDF)/国土交通省 水道整備・管理行政の移管/国土交通省 検査機関/簡易専用水道検査機関登録簿(PDF)/国土交通省 貯水槽水道及び飲用井戸等に係る衛生管理状況について(PDF)/環境省 検査機関/東京都水道局 貯水槽水道に関するQ&A/東京都水道局 貯水槽水道の適正管理/東京都保健医療局 簡易専用水道の情報/東京都保健医療局 小規模貯水槽水道・飲用井戸等の情報/東京都 小規模貯水槽水道等の条例のページ/東京都保健医療局 貯水槽を管理している方へ/東京都 特定小規模貯水槽水道等の衛生管理(PDF)/東京都 簡易専用水道の衛生管理(PDF)/埼玉県 マンション等の受水槽の設置者にはこんな義務があります/名古屋市 簡易専用水道の維持管理。いずれも2026年9月23日に確認しました。費用の表は各社が自社サイトで公開している自社の価格で、公的な相場ではありません。

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